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動き出した運命⑤

「それでは皆さんお忙しいでしょうから早速本題に入りますかな」


 ルーシェル元帥が鎮座し机の上に置いた手を組みながら穏やかな口調で問い掛けると、二人は静かに視線を向けた。


「実は帰国する前にルカニード国王と非公式で会談しておりましてな、内容は世界連合への加盟だったのですが、まぁ拒否されましてね」


「ふん、中立国を自負するルカニード王国が世界連合に加盟する訳なかろう。まさかそんな報告の為に我々を集めた訳ではありませんよな?」


 笑いながら語るルーシェル元帥を見て、リチャード国家元首が釘を刺すように睨みを利かせる。


「いやぁしかし、中立国と言いながら隣国がどんどん力を付けて行くのは我々てしても脅威なのだよ。ターパフォーカスもギアノも離れているからのんびりと構えていられるかもしれないがセントラルボーデンとしてはなんとかしたくてね、だから最後通告のつもりで迫ってみたんだが駄目だった。だから我々は次の手段として軍事力を行使しようかと思ってお二人を呼んだ次第なんですがね」


「何? ルカニードに軍事力の行使? 正気ですか? 再び戦火を灯すおつもりで?」


「いくら脅威だからといってこちらから仕掛けるなど正気の沙汰とは思えん」


 さらりと世界を揺るがす様な事を言い放つルーシェル元帥に対して、ケリー代表もリチャード国家元首も怪訝な表情を浮かべ否定的な言葉を並べる。


「ラフィン共和国の例もあるので我々としては早めに脅威の芽は摘んでおきたいのですよ。だからお二人には承認していただこうかと思いましてな。ルカニードは共通の敵だと」


「ラフィン共和国の時とは状況が違うでしょう。ラフィンは自分達から世界連合に対してふっかけて来た。だから世界連合として対処したがルカニード王国はそうじゃない。そんなに戦争がしたければセントラルボーデンだけでやってくれ。我々ターパフォーカス帝国は関与するつもりは無い」


「我々ギアノ王国としてはなんとも言えませんな。何よりこれ程の事を私の一存で決める訳にはいきません。まずは帰って女王陛下に報告をせねばなりませんし」


 承認を得たいルーシェル元帥に対して、二人は簡単に首を縦に振る事はなかった。それもそのはず、もしこれを認めれば世界連合対非世界連合の世界を巻き込んだ戦争になりかねないからだ。

 しかし強く否定して来なかったケリー代表を見てルーシェル元帥から笑みがこぼれた。


「ではケリー代表、ユリア女王陛下が良しとしてくれればギアノ王国は承認して下さるのですな?」


「まぁ我々は女王陛下に従うのみですからな」


 ケリー代表の言葉からもわかる様にギアノ王国はユリア女王が国を治めており、ケリー代表はあくまでもユリア女王の代わりに内政を執り行っている。最終的な決定権はユリア女王にあるのだ。


「ではユリア女王陛下からの承認が得られれば過半数はとれたも同然。その時は世界連合として動きますがよろしいですなリチャード国家元首?」


「ふん、その時はそうしていただいて結構。ただしそうなっても我々ターパフォーカスから兵を派遣するつもりはないからな」


 ニヤリと笑って穏やかな口調で語り掛けるルーシェル元帥に対してリチャード国家元首は毅然とした態度で挑んでいた。少し重たい空気が流れるがルーシェル元帥は気にする事なく更に続けた。


「ターパフォーカスが誇る鉄壁の兵団『アイゼンシルト騎士団』是非お目にかかりたかったのですがね、残念です」


「アイゼンシルト騎士団を簡単に派遣出来る訳なかろう。我々には重大な使命がある事を忘れてもらっては困るな」


「まぁ確かにそうですな。しかしそれこそそちらがいざとなったら世界は一枚岩であるべきだと思うのですよ。世界連合の結束力と戦力強化はやはり必須だと思いませんか?」


「ふん、物は言いようだな。とりあえずターパフォーカスは北の番人としての責務を果たす。ルカニード王国については賛成はしない。あとは勝手にやってくれ。あまり長く国を空けたくないんでそろそろ失礼させてもらう」


 最後までリチャード国家元首は毅然とした態度のまま部屋を後にした。部屋に残された二人に静かな間が僅かに訪れる。


「……リチャード国家元首は普段から何も言わないが北の連中は大人しくしているのだろうか?」


「さぁな。この四百年、向こうからのコンタクトはほぼ無いような物だしな。最早向こう側は別世界と思った方がいいのかもしれん」


 リチャード国家元首の言うターパフォーカス帝国の使命。それは四百年前に北の大地に敗走して行ったシャリア軍の監視だった。北の大地から再びこちら側にシャリア軍残党が来ないようにターパフォーカス帝国が睨みを効かせ唯一のルートを防衛していたのだ。その為ターパフォーカス帝国は防御力に特化しており、城塞国家とも呼ばれていた。その防御力はシャリア軍さえも跳ね返すとさえ言われている。


「まぁあっちはリチャード国家元首に任せるとして、我々は世界連合の脅威を取り込むか、排除するか議論を進めましょうか」


 ルーシェル元帥がニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ケリー代表もニヤリと笑って見せた。その後、一時間程会談した後ケリー代表も帰国の途に就く。

 そして一週間後、『我々ギアノ王国はセントラルボーデン国家の決定を支持する』と書かれた親書がルーシェル元帥の元へと届けられた。

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