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N.G0397年 ラフィン戦争

N.G397年一月

 セントラルボーデン東側国境で些細な争いが起きる。

 国境を挟み対峙していたセントラルボーデン国家とラフィン共和国だったがラフィン側の国境警備兵の帽子が風に煽られセントラルボーデン側に落ちたのだ。飛ばされた帽子を拾ってほしいと頼むラフィン兵に対してセントラルボーデン兵は「必要ない」として応じなかった。これにラフィン兵もならば仕方ないとばかりに持っていた銃を伸ばし棒代わりに帽子を取ろうとする。

 この行為に対してセントラルボーデン兵が過剰に反応した。


「それ以上国境を越えてみろ。侵略行為とみなすぞ」


「何が侵略行為だ。お前らが帽子取ってくれりゃ済む話なのによ」


 構わず銃を伸ばし帽子を取ろうとするラフィン兵だったが、次の瞬間無慈悲な銃声が辺りに響き渡る。

 ラフィン兵が受けた銃弾は実に二十発以上。この明らかにやり過ぎな行為にラフィン共和国国内は一気に燃え上がった。

『ここまでされる理由なんか無い!!』

『相手は明らかに我々を見下している!』

 国民から様々な声が上がる中、時の首相も声を上げた。

「約四百年前、世界連合が超常戦争を終わらせた事は確かに素晴らしい。だがその結果今の世界連合は増長し世界を我が物顔で動かそうとしている。この世界は世界連合だけの物ではない! 連合に属さない我々もこの世界で生きているのだ!! その事を世界連合に我々がわからせなければならないのだ!」

 

 この事件を皮切りに両国は遂に戦争状態へと突入して行く事となる。


 圧倒的物量で押し切ろうとするセントラルボーデンに対してラフィン共和国は独自に開発したバトルスーツを投入する。それまでソルジャーは高い身体能力を活かして銃や剣で切り込んで行っていたが、バトルスーツの補助を受ける事が出来るラフィン共和国のソルジャー達の能力は更に向上し、加えて防御力も格段に上がっていた。このバトルスーツのおかげで開戦当初はラフィン共和国が優位に立つ。


 N.G0397年三月

 そんな中、前線近くの補給基地でザクスは自ら開発に取り組んでいる新型バトルスーツの実験を繰り返していた。


「う~ん、計算上はもっと結果が出ると思ったんだが稼働時間が短すぎる。使用者への負担が問題かな? それとも使用者の方に問題があるのか?」


 自信作のバトルスーツを手入れしながらザクスは不満気な表情を浮かべている。

 今回ザクスが開発しようとしているバトルスーツは使用者の動きの補助や防御力向上だけではなく脳波を読み取る事でよりスムーズに次の行動に移れるようになる事を目指した物であったのだが、思うような結果が出ていなかったのだ。


「そんなに不満なら自分で試せばいいだろ? 俺達はあんたらのモルモットじゃないんだ」


 不満気な表情を浮かべながらぶつぶつと独り言を口にしていたザクスに向かって一人の兵が叫んでいた。

 元々前線にあった一つの部隊にザクスが合流し、『今日からザクス・グルーバー中佐の新型バトルスーツ開発に協力するように』と軍から命令された部隊とザクスの関係はそれ程良い物ではなかった。


『前線で活躍する屈強なソルジャータイプの兵なら自分の試作型も使いこなしてくれるに違いない』

 そう思い前線に赴いたザクスの思惑は呆気なく外れ途方に暮れていた。

 しかしそれでもザクスは一人調整を進める。『自分達の技術で一人でも多くの兵を守る』という自分の信念の為にも。


 そんなある日、緊急の通信が入る。

「こちら独立機動隊のヴェルザード大尉。敵から総攻撃を受け退避中! 至急応援をよこしてくれ! 頼むこのままじゃもたない!!」

 即警報を鳴らすと基地内にも緊張が走った。次々と部隊が緊急発進して行く中、ザクスは自ら開発したバトルスーツを纏い準備を整えると発進しようとしていた車両に飛び乗る。


「おい、乗せてくれ」

「だ、誰だ? その格好まさかモルモット隊か?」


 本来バトルスーツは首から下に装着し『着る』という表現が最も適切な物だがザクスが今開発中の物は脳波を読み取る為、頭の部分や顔までも覆われているのだ。その物々しさはバトルスーツを装着し重装備をしているソルジャー部隊の中にあっても異質であった。


「モルモット隊か。中々の言われようだな。俺はザクス・グルーバー中佐。訳あって自ら参戦する事にした。よろしくな」


「……!!失礼しました。技術士官である貴方が戦場に出るとは思ってなくて」


「いや、生の声が聞けて良かったよ。気にしないでくれ」


 まさか本人が目の前にいるとは思わず失言をしてしまったと焦る兵に、笑ってフォローしたザクスだったがその笑顔は顔まで覆ってるバトルスーツのせいで伝わる事はなかった。


『これ表情が見えないからある程度の仲じゃないとコミュニケーション取るのも辛いな。それがわかったのも一つ収穫だな』

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