キオク
少し胸糞悪く書いてあります。
初めて小説を書きました。
こいつ基礎もできてねぇとお思いになられるかもしれませんが、書き上げる事を重視しました。
よろしければ最後まで読んで感想聞かせてください。
私には前世の記憶がある。
と言っても今となってはうろ覚えだ。
幼少の頃は両親曰く、余りにもハッキリ語るのでとても怖ったと言っていた。
その両親も母親の方は私が13歳の頃、栄養失調で亡くなった。
耳鳴りが鳴りやまなかったらしく、常に頭を抱えていた。
食事を取るのも辛かったらしい…
医者はストレスからくるものと言っていたが、
ストレスだけでこんなにもなる訳がないと私は子供ながら医者疑っていた。
みるみるやせ細ってミイラみたいになっていく母親を見るのは
まだ子供でいたい13歳の私にはとても辛かった。
まだ母に甘えていたかった。
父親の方も母を失ってショックから立ち直れず、3か月後に自殺した。
母の事を溺愛していたので、今となっては父の気持ちもわからないでもない。
こうして私は、大人と子供の狭間の大事な時期に、両親を失ったことになる。
先月誕生日を迎え19歳になった私は
前世の記憶がある事などすっかり忘れ就職活動に勤しんでいた。
両親を亡くして行くところがなかった私を引き取ってくれたのは母の姉だった。
独身の母姉はとても美人で優しく料理も上手で何も不満はなかったが、ただ一つ貧乏であった。
男運がなかったのかダメ男が好みだったのかわからないが、付き合う男はつくづく酷いもので、
中には私に手を出そうとする男もいたが…
いや、あまり思い出したくないので語るのはよそう。
そう、特別不自由はなかったが貧乏で学もなかった私は大学には行けずに、高校を卒業してすぐ就活活動をしなければならなかったのだ。
とある日の事。特別に何事もない普通の日、強いて言うなら曇りで今にも雨が降ってきそうなつまらない日だった。
テレビを見ながらうまくいかない就活に、ボーと自分自身への言い訳を考えていた時
「んー、なんかここ見覚えがある…」
テレビには大きなお屋敷の老舗のお茶屋さんが映っていた。
抹茶を使った大福が評判を呼んでいるという特集であった。
「この廊下の奥にトイレがあって、右に曲がるとキッチンがなかったっけ」
トイレの所在はわからなかったがテレビの画面が進むにつれキッチンがあらわになった。
私は見覚えのあるキッチンに強く寒気がした。
「ここに行ったことがある…」
無論貧乏の私は旅行など行った事はなく、テレビに映っている家から300キロは離れているであろう場所にはおもむいた事があるはずなんてなかった。
「お茶とそぼろ弁当ください」
新幹線の中の私はいたって冷静だった。
なんなら初めての1人旅に浮足立っていた。
うまくいかない就活でイライラしている私があの映像を見てジッとしていられる訳がなかった。
スッキリさせないと落ち着いて就活なんてしていられない!そう思ったのだ。
これがただのデジャブなら私も新幹線なんか乗っていないであろう。
あの時感じた強い悪寒と、19年もの間あやふやだった前世の記憶に蹴りがつくかもしれないと思ったら、いてもたってもいられなかったのだ。
就活に支障が出ない範囲でやっていたアルバイト代をこんな風に使うとは思ってもみなかったが、
お弁当を食べつつ私は前世の事を思い出していた。
私が覚えているのは三つ
①何らかの職人だった事
包丁を扱っていたのは覚えているのでおそらく料理人だったのであろう
②仲の良い兄弟がいた事
お互い笑いながら共に仕事をしていたので仲が良かったのだと勝手に思っている
③背中を切られて絶命したという事
場所はキッチンだった…悪寒の原因はこれによるものが大きい
お弁当を残さず食べると、まだ到着までに二時間ある事を知り少し目を瞑ることにした。
…私の前世は和菓子職人だったのか?…
あのテレビの映像が瞼の裏によみがえる。
弟か兄かわからないが兄弟と共に働いてたキッチン…
若くはなく白髪交じりでほうれい線もくっきりしていたので50歳前後かと思う
おそらく前世の私の記憶も50歳前後であろう
最後の絶命の際の事は背中が自分の血で暖かかった事まで覚えている
そう、あまりいい記憶ではないのだ。誰かに殺された可能性が高く、
こんな事を幼少の頃にはっきりと語るものなら、両親が怖がったのは明白であろう…
他に大切な事を忘れている気がするが、
ラップ越しに見ているような感じで霞がかかっていてよくわからない。
ハッキリしているのはこの三つだけだ。
そんな事を考えつつ、とても美味しかったお弁当の余韻を味わいつつ私は眠りについた…
「キレイ…」
新幹線からローカル線に乗り換え、
テレビで見た老舗お菓子屋の最寄り駅に降りた私の第一声は綺麗だった。
そこには50年前にタイムスリップしてきたような景色が広がっていた。
残念ながら街の景色に見覚えは無かったが、今と昔をうまく調和した世界がそこにはあった。
駅前で出来立てと書いてある暖かい饅頭を頬張りつつ、
何かを思い出すように老舗お菓子屋の方へと足を運んだ。
商店街をゆっくりと進み、金物屋角を曲がるとそこには古びれた大きなお屋敷があった。
「ここだ…」
ここだと思ったのは前世の記憶からくるものか、
テレビを見たからかわからなかったが間違いいなくここだという自信が私にはあった。
まるで私を拒むかのようにお屋敷の方から風吹いてくる。
風の中に小豆を煮た香りが混じっている。
この香りに右手がピクリと反応した。
一瞬にして脈が速くなる…
緊張が走る…
耳からどこかでなっている鼓動の音がする…
私は1度目を瞑り、落ち着くはずがない心に踏ん切りをつけると、
またゆっくりとお屋敷に向かい歩き始めた…
蒼い暖簾を手で押し、お店の中に入ると若い女将さんが忙しそうに迎えてくれた
「いらっしゃいませぇ!」
お店はテレビの取材の効果かカメラを持った若い方から着物を着たご婦人まで大いに賑わっている。
奥からは小豆の香りが先ほどより濃く漂ってくる。
無理やり落ちつけたハズの私の鼓動はさらに早くなっていく。
「あんたちょっと手伝ってぇや」
若い女将さんが店の奥に向けてそう言い放つと旦那らしき20代位の男が険しい顔で出てきた。
その男の顔見た時に私は、顔の血が一気に引いていく音を聞いた。
そして私はその場に崩れるように座り込んでしまった。
「お客さん!どうしましたお客さん…」
女将さんの声が少しずつ遠のいて行く…
「だっ大丈夫です…大丈夫です…」と言いながらも私はゆっくりと意識を失っていった…
薄れゆく意識の中に前世の記憶の兄弟にそっくりな旦那らしき男の顔を重ねていた…
どこかの戸が閉まる音と畳の匂いで目が覚めた。
おそるおそる目を開けるとそこにはまるで天守閣のように豪華な天井が広がっていた。
「気が付きなさったかいな」
先ほど忙しそうにしていた若い女将さん笑顔でこっちを見ている。
私はどれほど寝ていたんだろう…
お店の方は一段落ついたように見える。
「貧血かいな?大丈夫大丈夫言うてはったから店の若いもんに頼んで
こちらに運ばせてもらったんよぉ」
「今お茶持ってくるさかいねぇ」
そう言うと若い女将さんは席を立った。
私はすっかりと日が暮れた外の庭を見つめ今の状況と唾を飲み込んだ。
お茶と和菓子を持って帰ってきた若い女将さんに、焦る気持ちを押させきれず、
私はなぜここまで来たのかというのを事細かに説明した。
「そんな事ホンマにあるんかねぇ…不思議な話やねぇ」
少し躊躇ったようにみえたが、女将さんはこう続けた…
「それは先代の叔父さんたちの事やわ…」
話によると旦那さんの父親が店主の時の事件らしい…
兄弟はとても仲が良かったが弟が兄のお嫁さんと逢引きしている所を目撃してしまい
カッとなった兄がそばにあった包丁でお嫁さんと弟の背中を切りつけたとの事
旦那さんは兄さんの子供で事件の時はまだ赤子だったとも
事件の後兄は刑務所ですぐに病気で他界
事件のせいで一度店をたたんだともおっしゃていた…
そして私の前世は弟さんだったという事になる。
「やっとあの時の事も薄れてきたんです!他の人に言わんといてくださいね!」
そう言うと女将さんはばつが悪いのか席を立ち部屋から出ていった。
私は綺麗に手入れしてある庭をまたも見ながら、
19年のしがらみからスッキリしたはずの感情と、
悲しい事件の真相を聞き何とも言えない気持ちになっていた。
処理が追い付かない複雑な気持ちから逃げたくて、出して貰ったお茶をいただく。
苦労して作ったであろう名物の抹茶の大福を頬張るとそこには小さな石が入っていた…
不快になられたらごめんなさい。。。