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第8話 磨術祭《まじゅつさい》①開催

「お帰りなさい、神無君。 泥だらけなので先にお風呂に入って、それから食事にしましょう」



「すみません、こんなにかかってしまって......」



 そう僕が申し訳なさそうに言うと、ふふふっとよみさんは微笑み、



「いいえ、一日か二日かかると思ってたから、食事を持って行こうと思ってたのよ」



「そうだったんですか、麟ちゃ......麟にコツを教えてもらって、体の動かす部位に霊力を集めるとなんとか、歩けるようになったんです」



「そう、麟が......」 



 意外そうに隣にいる、麟を見るよみさんに、



「な、なんだよ、あんまり、不恰好なんで思ったことを言っただけだ!」


 

 そう言うと、麟はお膳の食事をぱくぱく食べ始めた。



 僕はお風呂にはいり、食事を取るとすぐ寝てしまった。 





 それから12日、僕は大分体を自由に動かせるようになっていた。



「かなり動かせるようになったわね」   



 それを見ていた、よみさんが言う。



「これ、このまま生活できるんじゃ、あれから妖、魔物も怨霊の存在も感じないし」



 そう僕が言うと、よみさんは首を振り、



「今まで動かす部位だけに流してた霊力を、全身に巡らせてみなさい」



 僕は言われた通り、漏れでている霊力を体の隅々まで均一にして流してみた。 すると体に張り付いてた紋様が弾けとび、体が浮かぶほど軽くなった。



「これは、術が解けた......」


 

「そう......漏れている以外の霊力は君の体に残っていて、何もしなくてもいずれ抑えられず封印は解けてしまうの。 無理に何度も封印すると、君の中の霊力は行き場をなくして暴発し君は死んでしまう。 だから封印は無理なのよ」



「やっぱりそうか......」



「まあ、諦めることだな」



 麟が手をひらひらさせて言った。



「それは残念だろうけど、今君は霊力をかなりコントロール出来るようになってるはず、自分を感知しながらコントロールしてみて」


 

 よみさんに言われて、僕は自分の霊力を感知してみると、僕の体からほとばしるように霊力が出ているのがわかる。 ゆっくりと出ている霊力を抑えていくと、



「ほとんど霊力は消えたわね。 今度は霊力を限りなく薄く、でも均等に感知範囲を拡げて私達を感知してみなさい」



 言われたように霊力を拡げていくと、よみさんと麟の霊力を感じた。



「感じられました!」



「これで微細な霊力コントロールが可能になったわね。 これで霊力を抑えていても感知はできるわ」



「でも......これは」



 困惑する僕に、



「ええ......君には話しておきましょう。 いいわね麟」



「ああ......」



 そう言って麟は静かに頷いた。




 

 それから数日後、僕は学園に麟と来ていた。



「あっ! 神無様! ......!?」



 雅が凄い勢いで走ってきた。 そして麟を見て、



「か、か、神無様! こ、この子誰ですか!? 誰なんですか!!」



「先にそっちから名乗るのが礼儀だろ。 お前が誰だ」



「わ、私は犬境雅! 神無様付きの者ですが! あなたは!」



「私は麟だ、神無に付いてきた、二週間前から一緒にいる」



「に、二週間前から一緒に......!」 



 雅は何か言葉を発しようとしてるが、言葉にならない。



「よお! 神無! お前も修行してきたようだな! だが、今日はオレが勝つぜ」



「灰! 僕も負ける気はないよ」



「そうか、ん? 何だこのガキ、生徒じゃないな」



 そう灰が麟に言うと、麟に思いっきり蹴りあげられた。



「ぐわああああ!」



「ふん! 誰がこのガキだ! 失礼な奴め!」



「て、てめえ! 何しやがる!」



「待って! 待ってよ灰! 止めるんだ麟! 雅! 二人を止めてよ」



「ふ、ふ、ふ、いいですね鬼灯さん、私も手を貸しましょう......」



「なんで!?」

 


 灰と雅が構えた時、巽先生が現れた。



「どうやら、よみの所で修行できたようだな」



「ええ、先生が進めてくれたんですね。 ありがとうございました」



 僕が頭を下げると、巽先生は、



「かまわない。 それより磨術祭が始まる早く校舎に行くんだ」



 そう言って去っていった。 僕達も校内の会場に向かった。





 僕達が出場者として会場に入ると、武道大会のように中央に四つの舞台があり、それを観客席のように四方囲んで生徒達がざわざわしながら見ていた。 その中にどうみても生徒会ではない人間がいた。



「あれは......誰」



「スカウトだろ、陰陽師も人手不足、青田買いってやつだ。 優秀な卵を見つけて、自分の所に集めるのさ、名家以外は数を集めて勢力を増やすんだよ」



 めんどくさそうに灰が答えた。 そこに雅が割り込んできた。



「それより神無様! あの娘どこにいったんですか! というか誰なんですか!」



「ああ......麟は、よみさんの所で......」



「よみさん......誰ですかそれは」



「僕の師匠だよ」



「よみ......神無、それ黄龍家の現当主か!」



 灰が驚いて聞いてきた。 



「うん、そうだよ。 僕に色々教えてくれたんだ」



「世捨て人になったって聞いたけど、すげえな。 麟とか言うあいつも黄龍家かよ」



「いや......麟は......」



「聞いたことがあります......黄龍家の若き女当主......」



 雅がぶつぶつと呟いている。



「貴様ら静かにしろ。 水瀞みとろ理事長から話がある」



 中央の壇上に立った虎堂先生がマイクで言うと、かなり高齢の老人が壇上に上がった。



「あれがこの陰陽学園の理事長、五行家のひとつ水瀞家、現当主の水瀞法海みとろほうかい理事長です」



 雅が僕にこっそりと言う、水瀞理事長は、



「今日は高等部一年から三年の五組までの各クラス四名の60名、大学部、一年から四年のまで68名の選ばれし出場者、計128名による個人トーナメント戦。 それが磨術祭じゃ、皆心してかかるように」

 


 そう言うと、観客席から歓声がとんだ。



「では、まず一回戦を始める。 選ばれた八名、舞台に上がるがよい」



 そうして磨術会が始まった。 



 この時まだ僕は、このトーナメントに仕組まれた罠に気づいてはいなかった......



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