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第3話 始めての実技授業

 次の日から授業があった。 座学は陰陽道の基礎知識の復習のようなものだった。 巽先生が教壇に立つと、



「皆知っていることだが、まず、基本的な|《陰陽道》『おんみょうどう》の説明だ。 陰陽道は|《陰陽五行説》《いんようごぎょうせつ》を基にした術で、陰陽とは|《陰》《いん》、|《陽》《よう》光と影、日と月を指す。 五行とは|《木》《もく》、|《火》《か》、|《土》《ど》、|《金》《ごん》、|《水》《すい》、この世界を構成するものを五つに分類したものだ。 術式じゅつしきとは霊力をこの五行に変換して使うことを言う」



「この陰陽道を使い様々な術式を使う術士を、|《陰陽師》《おんみょうじ》と呼ぶ。 君達はこれから世に仇なす妖、怨霊、魔物を排する力を得る為にこの学園で自らを研鑽(けんさん)することになる」



 巽先生からそう一通りの説明を受けて座学は終わり、実技の授業になった。



 実技の授業は外で、校舎の裏の森の前、(はかま)姿の眼帯の女性が待っていた。 女性は厳しい目で僕達を睨むと、



「実技は、私 虎堂こどう 風音かざねが受け持つ。 今日は一日かけて、貴様らの実力を見せてもらうぞ、一人ずつ私が使う式神しきがみと戦えばいい、簡単だろう」



 と口元に笑みを浮かべると、懐からふだを取り出し術式を唱えると、投げた符から一匹の巨大な虎が産み出された。



「さあ、誰から行く」



 皆がしり込みするなか、雅と灰、そして、もう一人の男子が手を上げた。



(あれは、確か......金形代 鍊君か......)



「ほう、ではまず犬境から見せてもらおうか」



 はい! というと雅は前に出て虎と対峙すると、飛びかかってきた虎の爪を素早くかわし、霊力を高めると、術式を唱える。



「土行! 牙礫弾がれきだん!」



 そう言うと地面から牙のような石礫(いしつぶて)が空中に浮き、降り注ぐと虎は破れた紙へ戻った。 生徒達からおおおと驚きの声が上がる。



「さすがは犬境家の者というべきか.....では次! 鬼灯!」    



 おう! と言うと灰が前に出た。 術式を唱えた。



「火行、灰珠陣かいじゅじん!」



 大量の灰が虎を包み灰を見失っていた。 その間に炎の腕でなぐりつけ虎は紙となって燃えた。



「力押しタイプかと思ったが、絡め手も使えるか......よし次、金形代!」



「金行、鉄身甲てっしんこう



 金形代君はそう術式を唱えると、左手に着けた鎖が変化して籠手のようになり、虎の牙を受けると更に術式を唱え、



「金行、鋼牙刀こうがとう



 右手の鎖を刃物のように変え虎を斬りさいた。



「金形代家の者なら、この程度余裕というわけか、次」



 それから次々と生徒達が虎に挑むが、噛まれて負傷したり、逃げたり

して、クリアできたのは少数だった。



「よし! 最後、土光薙 神無」



 僕が呼ばれた。 目立つの嫌だからと程々で逃げようかと思っていたら、



「......もし、全力でやらず手を抜いたら、貴様を退学にするからな」



 と、見透かされたのか、物凄い目で虎堂先生が睨んできた。 先生は符を複数枚投げ、今までより数倍大きな虎を作った。



「さあ、手を抜けないようにしてやったぞ感謝しろ」


 

 先生は冷たい笑みを浮かべこちらを見た。



 そして、虎が僕の方に突進してくると、雅と灰が叫んだ。



「神無様!」


「神無!」 



 僕は危険を感じ高めた霊力を虎に向かって放出すると、虎は一瞬で蒸発した。



「なんだ! 今のは!」



 虎堂先生が驚いて、生徒たちも皆、唖然としている。



(まずい、目立った!)



「さすが! 神無様!」 



 と、一人雅が拍手している。 こそこそと帰ると灰が、



「おいおい、まじかよ......なんだよあれ」



「う、うん、まあ、あとで話すよ」



「ふん、力をを見せつける為にしたのなら悪趣味なことだな」



 金形代君はそう言ってきた。



「そう言うわけじゃ......」



「あの程度、五行家の者なら可能だからな、この程度でびびると思うなよ」



 そう言うと去っていった。 その日の授業が終わり、灰と寮に帰る途中、



「おい、神無、あの虎ぶっ飛ばしたあれなんだ、何かの術式か、教えてくれ」



「いやあれは......実は......僕は術式を使えないんだ......」



「どういうことだ? あんなにすごい術を使っただろ」



「いや、あれは術じゃなくて、ただ、霊力を放出しただけなんだ」



 僕は本当のことを答えた。 灰は驚いた顔で、



「え? 霊力を放出? 嘘だろ、あんな量と威力、規格外すぎる......」



「でも本来は、霊力を術式に変換するんだろ。 僕はそれができないから、霊力そのものを出すしかないんだ」



「マジか......」



 灰はあり得ないといった表情で話を聞いている。



「本当なんだ、最初は僕も能力を期待されて、土光薙家に引き取られんだけど、僕が術式を使えないと知るや、一気に手のひら返しさ」



「それで、冷遇されてたのか......霊力から術式変換は基礎中の基礎だからな、むしろ純粋な霊力の放出の方が難しいけどな、どんな霊力量なんだよ」



「それがよくはわからなくて......練習はしたんだけど、上手く術式には変えられないんだ」



「そもそも、直接霊力攻撃すると威力も弱いから術式に変えて威力をあげるのに......だが、上手く術式に変換できたらすごい術が使えるってことだよな」



「本当はこの霊力を無くしたいから、あくまで襲われた時、自分の周りを守れる力さえあればいいんだけど......」



「あははは、お前は能力といい変な奴だな」



 灰は僕の背中をバンバン叩いて笑った。



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