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第1話 陰陽学園入学《いんようがくえんにゅうがく》

神無かみなさま! 神無さま! 早く起きてくださいー! もう朝ご飯食べないと、学校に遅刻しますよー!」 



 小屋の外からのかん高い声に僕は起きた。 というよりは起きなければ耳元で大声を出すことは用意に想像できたから、起きるしかなかった。 僕はあくびをしながら、制服を着て外に出た。



 そこには腰に手を当てながら、むくれる制服姿の少女が立っていた。   



「神無さま! 今日は入学初日なんですよ! 遅刻なんて土光薙家の恥になります! 早く朝ご飯を食べてください!」



「わかったよ、みやび、でも、その制服似合ってる可愛いね」



「そ、そ、そんな、可愛いだなんて......」



 顔を真っ赤にして照れる雅を見て微笑ましく見ながら、母屋の方に行き食事を取る。 食事中、周りに世話をする侍女たちがいるが、皆、無表情で会話もしない。



(まあ、さすがに毒は入ってないか......でもこの沈黙は息が詰まる。 この人達にとって、僕はただの飾りなんだろうな......)



 僕は、土光薙つちみつち 神無かみな15才。 母方の家がこの日本屈指の陰陽師、土光薙家の者だった。 母が二十歳の時、父親と駆け落ちし母はこの家から縁を切られた、というか縁を切ったらしい。



 だが十年前両親が死にこの家に預けられた。 だが、土光薙家の前当主、母の父つまり僕の祖父、継器けいきが死ぬと状況が変わった。 直系で家を継ぐものがいなくなったため、新たな当主が決まるまで仮に僕が担ぎ出されというわけだ。



 そして僕は、この土光薙家の32代当主となった。



 ふと雅を見ると、なにも言わず無表情で食事を取っている。



 犬境いぬざかい みやび

 土光薙家の分家である犬境家の娘15才、ここに来たときから、僕づきの世話係として側にいてくれる。 この家で唯一信頼できる女の子だ。 



「ごちそうさま......」



 食事を取って歯磨きを自分の小屋ですると、雅と学校に登校する。



「ねえ、雅、こっちに来てから学校にも行ってないんだけど、入るのは普通の学校じゃないんでしょ」



 僕が聞くと雅は、



「はい、陰陽学園いんようがくえんは私達、陰陽師おんみょうじの学園です。 術士を育てる学園で、卒業者は政界、財界、この国のあらゆる所に存在し、影響力を持ってる独立した機関です」 



 目をつぶり人差し指をたてながら諭すように雅は答えた。

 

 

「ふーん」



「ふーんって! ここでの成績が陰陽師としての格をきめるのですよ! 神無様はこの国の五行家ごぎょうけといわれる名家の筆頭、土光薙家の当主! 必ず結果を出さねばなりません! 今までも土光薙家の者は素晴らしい成績を残しているのです」



 そう早口でまくし立てる雅を見て、僕はため息が出た。



(別に陰陽師になりたくないし、そもそもこの能力も要らないしな......)



 僕は物心つく子供の頃から人と違う物が見えていた。 それは、精霊やあやかし、鬼、魔物といった異形の存在、それらは融和的な者も多いが、時に敵対的で僕の命を狙う邪悪で危険な存在もいた。 この土光薙家当主の話を受けたのも、それから逃がれる(すべ)を見つけたかったからだが、まさかこの家がこんなに面倒だとは思わなかった。



 歩いていくと見えてきたのは幾つかの学校が連なる都市のような巨大な学校だ。



「あれが私達が暮らす陰陽学園です。」



「暮らす? あれ家には戻らないの?」



「話したじゃないですか! 学園寮に入寮するって!」



「いやあ、そうだったっけ?」



 はぁと雅はため息をつくと、諭すように、



「いいですか神無様、私達は真の術士となるため、全寮制の学園で過ごすのですよ、お分かりになりましたか」



「わかったよ」



(まあいいか、あの家は窮屈で息が詰まる、よく考えると渡りに船だな)



「じゃあ、行きましょう」



 僕と雅は陰陽学園に着いた。 見た目は普通の学校と変わらないが、確かにかなり高い霊力を持つ者達が多くいるようだ。 



「私達は高等部なので、こちらの校舎となります」



「入学式とかはないの?」



「この学校は、実践的な術士としての能力や知識を得るための学校ですので、座学はありますが、普通の学校のような、入学式だけでなく部活や文化祭や体育祭など行事はありません。 特殊なものはありますが......」



 まあ、面倒だから、そういうのは無くてちょうどいいかな、そう思いながら校舎の中にはいっていった。 



「私達は同じクラスです。 あっ、あったここですね。 一の三組、この教室です。 入りましょう」



 教室のドアを開け、中にはいると、先に来ていた20人程の生徒達がこちらを見た。 僕達は一番後ろの名札のある席に歩いていくと、



「あれ、噂の土光薙家の......」



「そうだ、新しい当主だ......」



「それにあの娘、犬境家の......」



「うん......」



 と僕と雅のことで生徒達がざわざわしている。



(ずいぶん有名なんだな......目立ちたくないないのに......僕はこの術士の世界の事はあまり知らないから、こんなことになるとは思いもよらなかった)



 ふうとため息をつくと、教室に男の先生が入ってきた。



「皆、静かに、私がこのクラスを受け持つ、たつみ 雷火らいかだ。 皆よろしく頼む」



 そう挨拶すると、巽先生は皆に、順番に前で挨拶をするよう促した。


 

 次々挨拶すると、僕の左隣の少年の番が回ってきた。 短めの髪の彼はこちらをいちべつするとふんっと鼻を鳴らして前に進み出た。



(なんか嫌われてる?)



「俺は、鬼灯ほおずき かい、夢はこのくだらない術士の序列を壊すこと、以上!」 



 皆がざわつく中、そう言うとすたすたと戻ってきて、ドカッと席に座った。 右隣の男子がチッと舌打ちをした。



 その後も挨拶は続いて、僕の番になった前に出ると、皆がこっちを見ている何か緊張してるようだ。



(こっちだよ緊張してるのは......)



「えーと、僕は土光薙 神無です。 陰陽師のことはよく知りませんが、皆さん仲良くしてください」



 と、頭を下げると皆が驚いてる顔をしている。 席に戻ると右隣の金髪の男子が、



「五行家筆頭の土光薙家も堕ちたものだ。 こんな雑魚共と馴れ合おうとはな」



 そう言うと、ズボンのポケットに、じゃらじゃらと金色の鎖をつけた手を突っ込みながら前に出ていき、



「俺は、金形代かなかたしろ れん知っているよな。 さっき序列を壊すとか言ってた馬鹿がいたが、序列の上の者が力を持つのは有史以来絶対の不文律だ、変わることなどない。 永遠にその差が埋まることなんてない、無駄な夢をみず、分相応の夢を見ろよ」



 そう言うと皆は静まり返った。 帰ってきた金形代君に、鬼灯君は、



「誰が馬鹿だ、てめえ」



「貴様は頭だけじゃなく耳も悪いようだな」


 

 鬼灯君にそう言うとニヤリと笑った。 直ぐに立ち上がった鬼灯君を僕が止めようとすると、



「そこ何してる! 話を聞け!」



 巽先生がそういい、渋々鬼灯君は席に座った。



「では、今日は顔見せだったから、一度皆寮に行き、届いた荷物を整理するために帰りなさい」



 そう先生に言われて僕達は解散した。 


まあ、読めたな、次も読んでみるか、という方は、


☆☆☆☆☆に評価を頂ければ、うれしいです。



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