1話
大学1年も終わりに差し掛かろうとする冬。
その日は朝からついていなかった。
天気予報が見事に外れ、家を出て10分ほどで雨は降るし、講義で使う予定の資料を家の机に置いてきた。4限目の授業が15分も押した上に電車も遅れた。
そして今、遅れに遅れてバイト先に土下座する勢いで突入してみれば珍しく店長がおり神妙な顔をしている。
これはまた何かあるんだろうなぁ。
そう思ってみれば
「米山さん遅かったね。その、大変言いにくいことなんだけど。このコンビニあと1ヶ月で潰れることになっちゃった。」
唐突に、客があまり来なくて、働くみんながのんびり出来て、時給はそれなりの神バイトが潰れてしまった。
「給料は残りの1ヶ月分は何とか出すけど、経営状況的に厳しいからいつもよりは下がってしまいます。本当に急で申し訳ないので経済的に厳しい人は僕の伝手で良ければバイト先をご紹介します。」
この危機的状況で唯一良かった事は店長が(コンビニ潰れる情報出すのは遅すぎだけど)それなりに良い人であったことだろう。
「店長、私遊びに散財しすぎたんで次のバイト先紹介してください!」
ついてない事だらけでおかしなくらいテンション高く聞く私に店長は若干引きながらもバイト先を紹介してくれた。
-cafe Snow fall- (カフェ スノーフォール)
とても落ち着いてどこか大人の雰囲気漂う、美味しいコーヒーとだし巻き卵にこだわりを持つカフェだった。
そこには店長含め6人の店員がいた。
中でも180cm近い身長の青年はその背丈ゆえなのか一際私の目を引いた。