第8話 空を駆ける
ファンタジー作品の主人公空飛びがち
やっほー☆
私、天宮晴! 日本で平和に暮らしてたけど、ある日突然異世界に召喚されちゃったの! それに、ひょんなことから光の魔法少女にまで選ばれちゃった!
それからはこの世界を旅しながら、みんなを困らせる悪い死面徒と戦う事になったの!
[待つんだハル! 昨日までとキャラが違いすぎないか?]
「ファル、どういう事? 私は元から私だよ☆」
「私が揶揄いすぎたからこうなったのよね……どう詫びれば許してもらえるかしら」
どよんとした空気を醸し出しながら座り込むミロア。何かあったのかな、あったからこうなってるんだろうな。
「ミロア、何か悩んでるの?」
「っ…………うん」
「じゃあ、何か話してみたらどう? 私が相手でいいなら、いくらでも相談に乗るよ!」
「……今はその光が眩しすぎて辛いわ」
光? 確かに外は明るいけど、ここは室内だよ。そんなに強い照明は使ってないってば。
「これってどういう事なのかしら……巷で噂の二重人格ってやつ? 気になるわぁ」
[ミロア、ハルは混乱して倒れたようだ。だからもう一度強い衝撃を与えたら、元に戻るかもしれない]
「そう……なら、やってみるしかないわね」
??????
ミロアが鋭い瞳でこちらを見つめている。その手を見ると、手刀の形でこちらに構えていた。
「痛いと思うから、我慢する事ね!」
そうして手刀が振り下ろされる!
「ェアッフン!」
綺麗に『入った』のか、意識が急に遠退く。起きたばかりなのに、もう、おやすみ……。
…………はっ!
俺は今まで何をしてたんだ。さっきまでの記憶が全くない。それに何故だか頭が痛む。こう、何かで直接叩かれたような痛みだ。
[手は尽くしてみたが、これで元に戻ったかどうか……]
「元に戻った? 何の事だよ」
「こっちの話よ。それよりもハル、自己紹介してもらえないかしら」
「えー……なんで今更」
「休みの日とか、何やってるかまだ聞けてないし丁度いいじゃない」
「そういう事なら」
ミロアさんのフリに応えるべく、俺は起き掛けの頭で原稿を練り上げる。ああすればもっと良くなるかもな。よし、そうしよう。
発表用の原稿が組み上がったので、俺は咳払いをして喉の調子を確かめる。うん、順調順調。
さて始めるか。
「俺は天宮晴。11月7日生まれの16歳。休みの日は寝てるか勉強かゲームしてて、座右の銘は『睡眠時間8時間で週休3日』だ」
[ああ、いつものハルだ]
「ねえねえ、ところで『げーむ』って何かしら? 外の世界での遊び?」
そこには瞳をキラキラさせて俺を見つめるミロアさんが。
遊び……確かにそうだな。
「今やってるのは『switch』のやつ。色んなキャラが大乱闘したり、無人島開拓だったり、士官学校で教え子と血の同窓会だったり、星の同盟を組むピンク玉とか、あとは赤くてMのヒゲ親父」
「…………『すいっち』?」
「あー。テレビに繋いで遊ぶんだよ。本体だけでも遊べるけど」
「……『てれび』?」
うぅむ。どうも文化間ギャップが激しい。俺の伝え方が悪いのかもしれないけど。とにかく、ミロアさんには実物を触ってもらおう。ここにもswitch、あるかなぁ……。
ここまで娯楽文化が違ってくると、王都のみんなも大変なんじゃないかな。
俺が心配をしていると、抗いようのない空腹感に見舞われた。昨日の夜に軽く食べたっきりだったからか、腹の虫が強く訴えている。
時間も都合がいいし、朝市にでも繰り出して飯食うか。
* * *
パラデイオーの朝市には獲れたての魚が多く並ぶ。その為活気があるし、人も多い。
そんな中俺は、並んで歩くミロアさんに疑問をぶつけた。
「あのミロアさん、それだけで足りるんですか」
ミロアさんが口にしているのは、ボトル一本分くらいの水だけ。成人の食事とはとても思えない。
「ええ。私達花茎族はね、十分な水と日光さえあったら生きていけるのよ。元が植物だから。ね!」
霞食って生きてるみたいなものか。寿命も長いし、まるで仙人だ。
さておき、俺が目を付けたのは、ガイドブックの隅に書かれていたお店。朝一番に獲れた魚を選んだらお店の人がその場で魚を捌き、衣をつけて油で揚げてバーガーとして食べる事ができるのだという。
いいねぇ。こちらに来てからというもの、脂っこいものはあまり口にしてこなかったからね。久しぶりに、恋しくなったという訳だ。
まずは魚を選ぶ。お店の人が言うには、白身と赤身で左右に分けられているのだが
「いっぱいあって迷うなぁ」
これがなかなか決まらない。
白身魚か赤身魚か。フライといえば白身魚なんだけど、アジフライとか、あと最近はマグロカツなんかもあるし。
よし! ここは白身魚だ。揚げ物は白身の方がいい。おばあちゃんもそう言っていた。
白身魚のコーナーには、様々な魚が並べられている。平べったいものや、ヒゲがある魚まで。
ここは俺の直感に委ねよう。なるべく新鮮で脂がのってる魚は…………これだ!
「これでお願いします!」
選ぶとお店の人が慣れた手つきで魚を捌き、あっという間に切り身にする。おほ、テカってて美味しそ。切り身は小麦粉をまぶされると卵液をくぐり、パン粉で覆われる。そしてアツアツの油から上がれば、衣はこんがりきつね色。ツボに入ったソースに浸かり、キャベツの上に乗せられてバンズに挟まれる。これでバーガーの完成だ。
立ちっぱなしで食べるのは行儀が悪い。なので広場のベンチに腰かけて頂こう。
さてさて、では出来立てのバーガーを一口。
噛んだ瞬間、魚の油が口の中でジュワッと弾ける! 美味しいソースもバンズに程よく染みてておほ^~堪らねえ。こりゃ自然と頬っぺたが緩みまくりです。
「そんなに美味しいの?」
「気になるんなら一口食べてみます?」
俺が差し出したバーガーを、ミロアさんは直接小さな一口。これって間接キスとやらでは……まあいいか!
「どうです?」
「サクサクとフワフワで、いいと思うわ」
「ソースもいい味でしょう?」
「その味ってのが、私にはよく分からないの」
何それ初耳。
味が分からないって、どういう事だ? まさか、でも普通に喋れてるからベロはあるみたいだし……。
「水さえあれば生きていけるから、人間でいう味を感じる器官が発達しなかったのかもしれないわ。私達にとっては、栄養の取りすぎも好ましいものではないしね」
確かに自力で栄養を生み出せるのだから、あまり食べなくてもいいのかもしれないな。
気を取り直して俺はバーガーを味わう。味を感じない人の隣で美味しそうに振舞うのはちょっと申し訳ない気もするけど、やっぱり味がいいから綻んでしまう。美味しいに罪は無いんです。
そんなこんなで俺はバーガーと、付け合わせのフライドポテトを食べ終えた。ポテトも丁度良い塩気で指が止まらないくらい美味しかったです。
食べ終えたら後片付けの時間。バーガーの包み紙をクシャっと丸める。ゴミ箱は……あそこか。この距離なら、投げても問題なさそうだな。
…………惜しい。ゴミ箱のフチに弾かれちゃった。仕方ない。拾って捨てよう。
俺が丸めた包み紙を拾い上げようとした瞬間、突風が吹き抜け包み紙は俺から離れてしまう。
「あっ! 待って!」
包み紙は俺の言う事を知らんぷり。風に流されて道をどんどん転がってゆく。
「もー、待ってってばー!」
俺は人波を掻き分けながら、包み紙を追いかける。包み紙はどんどん転がる。
転がり続けたバーガーの包み紙は、誰かの脚にぶつかってようやく止まった。ありがたいのでお礼を言おう。
俺が顔を上げると、そこにあったのはデカい鼻。いや違う。普通に体があって、頭部全体が鼻になっている。
一度見たらそう簡単には頭から離れてくれないこのデザイン。俺の恩人はハナメガネ面徒だった。
「ど、ども。昨日ぶり」
まさかの展開に何もかもがぎこちなくなってしまう。俺の動きを傍から見てると、錆びたブリキのおもちゃみたいになってるんじゃないかな。
「ワシとキサマ、どこかで会った事があるのか?」
でも、ハナメガネ面徒は俺に気づいてる様子はない。あ、そっか。変身してから顔を合わせたから、俺の変身前と変身後がいまいち結びついてないのかも。これはチャンス。
「あぁいや、その眼鏡が知り合いの持ってるのと似てて間違えちゃいました。ごめんなさい」
「まあよかろう。次からは気を付けるのだぞ」
何とか切り抜けた。あとは、包み紙を拾えばミッションコンプリートだ。俺もこんな街中で荒事を起こしたくはないし。
しかしここで想定外の事が起こった。
バーガーの包み紙がヤツの鼻息に吸い上げられ、大きな鼻の穴にスッポリ収まってしまったのだ。しかもジャストサイズだぁ。
「ンフッ」
あっヤベ。
絵面がツボに入ってつい吹き出してしまった。さすがにまずいと思って口を押えたけど、時すでにお寿司。
「キサマ、今笑ったな?」
「わ、笑ってないですよ?」
「嘘つけ絶対笑っておったぞ」
わーお完璧に怒ってらっしゃる。ここで『はい』って答えたらどんな目に遭うか。選択肢を間違えてはいけない。
「んんんんー、よくもワシを笑い者にしよったなー! 許さーん!」
選択肢ないじゃないですかヤダー!
「それに思い出したぞその匂い! キサマが噂の魔法少女だったか! カモン、ビリー!」
ハナメガネ面徒はビリーを呼び出して俺に差し向ける。仕方ない、ファル……ってアレ? ファルどこ? 今朝ホテルを出た時は確かに一緒だったのに。
* * *
その頃のミロア。
湾岸が一望できる公園のベンチに座り、ハルを待っていた。
「ハル、遅いわね~」
[そうだな。どこかで寄り道をしているのかもしれない。
「そういえばずっと気になってたんだけど、貴方ってどうやって喋ってるの?」
[え。いやそれは、どうしてだろうな! アーハハハ!]
「そうやってすぐ笑って誤魔化すんだから」
* * *
ヤバい。ファルがいないと変身できないじゃん! それでもビリーはお構いなしにこっちに向かってくる!
それに奴らが握っているナックルからは、バスケットボールくらいの光弾が撃ちだされる。あれ遠距離攻撃も出来るのかよ。
ちょ、ちょちょちょっと待ってください! 待って! 助けて! 待ってくださいお願いします! ウァアアアアアアアアアアアア!!!
俺は一心不乱に逃げ隠れる。水路への階段を飛び降り、階段の陰に身を潜めた。……いいぞいいぞ。ビリーは俺を見失っている。このまま気づかれずに、ファルと合流すれば……。
「痛ァ!」
何という事だ。ビリーに気を取られすぎて桟橋に頭をぶつけてしまった。しかもまずいことに、声が出て気付かれてしまった。
こうなったら変身しなくても立ち向かうしかない!
どこかに武器になりそうなものは……お、ちょっとオール借りるよー!
ビリーが放った球を先の広い部分で打ち返す。思い付きだけど何とかなってよかった。
では棒の部分で攻撃。足元ォ! からの股間!
へへん、どうだ参ったか!
「よっしゃ! ……ってうおわっ!」
なんて得意げになってる所、俺の足元に着弾。俺は爆風で吹き飛ばされ、オールも俺の手を離れてしまう。
[ここに居たのか!]
「おっファル! 今までどこに居たんだよ」
[ミロアと共にあった。だが死面徒の気配を感じたからな。けれどキミを探すのに手間取ってしまった。申し訳ない]
「来てくれりゃそれだけでいーんだよ! それより行くぞ!」
奇想転身!
ポーズを取ったりするのも、なんかすっかり慣れてきたな。いつかはこんなフリフリの服にも慣れる時が来るのだろうか……。
俺は手に握ったヴィブジョーソードで、向かってくるビリーを次から次に斬りつけてゆく。それに腕の盾は、回転を加えて投げるとブーメランのように戻ってくる。これでだいぶビリーの数も減った。
地に伏したビリーはもれなく爆散。でもこんな近い距離で爆発しないで欲しいな。ちょっと怖い。
「ぐむむ……こうもあっさりとは」
「残るはハナメガネ面徒、お前だけだ!」
「かくなる上は……こうだっ!」
ハナメガネ面徒は自分から伸びた鼻毛をワイヤーロープめいて扱い、屋根から屋根へ飛び移る。
さながら鼻毛のスパイダーマンか。気持ち悪っ。
「逃がすかっ!」
俺も後を追うべく屋根へ飛び移ろうとした。けど、俺のジャンプじゃ届かなかった。
[こんな時は、飛翔魔法だ]
「おお、何かようやく魔法っぽいのが」
[ではいくぞ。ルートベ・タラリア!]
ファルが呪文を唱えると、俺の踵に翼が付いた。そして俺の足は地面を離れ浮き始める。今のやつすっごく魔法っぽいよコレ。
「お……おおお……お?」
これはなかなか……バランスを取るのが……難しいな。あっ
「ファル、この体制のまま飛ぶのはキツイで」
バランスを崩してしまい、俺は見事に空中で逆さ吊り。景色が逆さまに見えて酔いそう。
その後魔法は解除されて俺は地面に落っこちた。
[この方法では駄目か。割とオーソドックスな手段だったが]
「魔法の人たちってあれがデフォなの? 飛んでる最中にお股裂けたりしない?」
[聞いた事がないな]
マジかよ魔法の人たちってすごい。
それはともかく、このままもたついてはいられない。何とかしてハナメガネ面徒を追いかける方法を探さないと。
俺は上手に飛べなかった。なら、俺以外が飛んだら上手くいきそうな気がする。
目の前には、相変わらずふよふよと浮いているファルの姿。待てよ、これならいけるか……?
「なあファル、さっきの魔法を俺じゃなくてお前にかける事はできるのか?」
[……初めての試みだが、やってみよう]
俺の思い付きにファルは乗ってくれた。どうなるか分からないというのに。
[ほう、こうなるのか]
何とかなったー! しかも反重力バイクだー! すっげー!
[ハル、使い方は分かるのかい]
「ばっちり! ゲーセンでこういうのはよく遊んでた!」
[そこはかとなく不安だ……]
バイクに跨りエンジンをかけると、それはふわりと宙に浮く。高度は……ウィリーすれば上げられるか。
そういう訳でいざ発進。
うっひょー! 速い速い、速すぎるぜ! 俺は今、パラデイオーを吹き抜ける風になっているッ!
これならハナメガネ面徒にもすぐに追いつけそうだ! と思っていたらもう背中が見えている。相変わらず鼻毛でスパイダーマンごっこをしていた。
「まさかここまで追ってくるとは……!」
ハナメガネ面徒も俺に気づいたらしい。複雑なルートで俺の追走を巻こうとしている。
あっ、狭い路地に隠れちゃった。でも負けるもんか。ギリギリまで減速して侵入してやるもんね。
「これで堕ちろォ! ハナクソ弾発射ぁ!!」
鼻の穴からハナクソ型誘導グレネードがこちらに迫る。これを全部避けるとなると、少々荒っぽい運転になってしまうが!
急上昇と急降下、急ブレーキに急ターンを交えて俺は爆風を掻い潜る。そうしたらハナメガネ面徒へ一直線だ。
ヤツは焦って鼻毛を伸ばすけど、俺の方が僅かに早い。俺はヤツの鼻毛をファルから変化した車体に巻きつけ、俺ごとローリングしてハナメガネ面徒を地面へ叩きつける。これでヤツもしばらくはロクに動けないだろう。
俺はちゃんとバイクを路肩に停め、必殺技を発動。ここからが長いんだ。
───────{10}───────
斬った対象の時間をある程度止める攻撃。尚この間は必殺技が使えなくなる。俺はヤツが止まってる隙に何度も斬りつけた。もうそろそろタイムリミットだろうかという時に、盾で強く殴りつける。
この感じだと、あの方向へ吹っ飛ばされるんだろうな。待ち構え、もう一度技を繰り出す。
───────{8}───────
飛んできたハナメガネ面徒は俺の前で凍る。これは、追撃しない方がよさそう。氷にヒビが入ったのを見て、俺はまた必殺技を出す。
───────{7}───────
体力奪取。落ちた時の痛みやらが引いてゆく。
力を奪われたハナメガネ面徒がダウンしそうになった所を、盾の強打で上空へカチ上げる。これで落ちてくるまで運ゲし放題だ。
───────{11}───────
───────{8}───────
───────{10}───────
───────{6}───────
───────{4}───────
───────{8}───────
───────{3}───────
「ぐふっ!」
まずい。空中では仕留めきれなかった。けど諦めない。なぜなら1は避け続けているから。
───────{9}───────
初めて見る目。ヴィブジョーソードが風を纏う。ひとたび振るえば、剣からかまいたちが飛びハナメガネ面徒を切り裂いた。遠距離攻撃も出来るんだな、コレ。まあ運次第だけど。
───────{10}───────
……まだ時間かかりそうですね。まあこれは次の運ゲに繋げられるから十分か。
───────{6}───────
───────{3}───────
こういう時はなるべく隙を残さない動きで立ち回りつつ、相手の隙を伺って運ゲ。
今だ!
───────{1}───────
げえ!
ここにきて最悪の目を引くのかよ。俺の頭に落ちてくる、回避不能の金ダライ。これが中々痛いんだ。
次こそは!
───────{8}───────
───────{4}───────
───────{11}───────
───────{7}───────
───────{4}───────
───────{11}───────
───────{4}───────
───────{10}───────
───────{3}───────
───────{6}───────
───────{8}───────
───────{9}───────
運ゲ12連敗。何度か防がれたり外したりした攻撃も多いし、もう二度とやりたくないぜ。集中力が途切れた間に攻撃を叩き込まれたし、精魂尽きかけてくたくただ。
「どうやら勝負あったようだな! では、おさらば!」
「っ! まっ、待て!」
シンプルなマントを翻し、俺に背を向けて逃走を図るハナメガネ面徒。俺はすぐに追いかけようとしたけど、足元に躓いて転びそうになる。だが、俺は崩れた体勢で剣をハナメガネ面徒へ向け放り投げた。俺の攻撃、届けーッ!
───────{12}───────
「ぐぎゃあああああああ!!!」
当たった。しかも大当たりだ。やったぜ。
しかし、ハナメガネ面徒が戦うではなく真っ先に逃走を選択した理由。これが気になるな。もしかして、俺の強さが知れ渡ったからなのか!? だとしたら晴くん困っちゃうなー、えへへ。
「俺の武勇伝が語り継がれる日も近い、か……」
[キミは何を言っているんだ]
フフ、俺には見えるぞ。果てしなき栄光へのロードが!
[それだと永遠に辿り着かないのでは……?]
「こういうのは雰囲気だから、別にいいんだよ」
包み紙もハナメガネ面徒と一緒に燃え尽きたし、これで良しとしよう。じゃ、帰るか。
* * *
ハナメガネ面徒の脅威が去り、平穏な時間を取り戻したパラデイオー。
メイは未熟と断じた晴の動きが気になり、密かに一部始終を観察していた。晴がファルとはぐれた際に肝を冷やし、なかなか決着が付かない事に苛立っていたが、今はすっかり平静を取り戻している。
「ヤタ。ヤタもヤタ自身に飛行魔法をかけたらああなるのかな」
[急にどうしたんや]
「私が空を飛ぶのも勿論気持ちいいけど、ああいう乗り物で空を飛ぶのも、ちょっとカッコいいなぁって……ダメ?」
割とそうでもなさそうだ。
運ゲでかなり苦戦しました。次の戦闘から、こんな出目の時は容赦なく負けさせていきます。