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第48話 惨劇のビギニア

全部の碑文を集め、いよいよクライマックス!


 最後の碑文に書かれた内容。それによると、この地で崇められてるルファドこそが先代を葬った元凶であるという。

 ルファドの部下であるシエルはそれを真っ向から否定した事により、半信半疑の俺たち。


 そんな中、巨大樹がかすかに揺れる。俺は猛烈に『いやな予感』を感じ取った。受信アンテナMAXの5G回線で。


「あ、おい! どこ行くんだよ天宮!」

「めっちゃ嫌な予感がするんだ! とにかく外へ出ないと!」


 俺は居ても立っても居られず外を目指した。幸いここは巨大樹の上の方。樹海の先まで見渡せられるだろう。

 みんな、突然駆け出した俺を不審に思いつつも付いてきてくれる。こんな仲間を持てて、俺は幸せ者だ。


 建造物を突破し、巨大樹の組み入った枝を伝って外へ出よう。枝が途切れている場合は、ジャンプで枝を乗り換えて進む。段々枝が細くなってきたけど、さすが巨大樹と言うべきか、外が見える所にある枝はまだ太かった。

 予想通り、エルツォーンの火山からハロデヌィがある雪山、果てはコートクランの海岸線まで見れる。ここからならグラージュもばっちり見えそうだ。


 そんなグラージュ方面では、黒い煙が幾つも立ち昇っていた。


「どこか襲われてるッスか!?」

「こうしている間にも動くだなんて、まったくうかうかしていられないわね……!」

「なぁおい……あそこって方角的にビギニアじゃねぇか?」

「城壁っぽいのが丸見えだな……マジかよ」

「どうしよう……どうすればいいんだろう……先生たち無事かな……」

「確認。損害大の模様」

「あれも、ルファドの仕業だって言うの……? 私たち、あんなのと戦わなきゃいけないなんて……」

「有り得ませんよ……だからこれは悪い夢なんです。きっと寝てまた起きれば、平和な景色が待ってるんです……」

「涌谷一刀流剣術の使い手として、使命を果たす時が来たか……」


 単なる事実確認が、より恐怖を持ってきて来る。困惑して立ち尽くすどころか、現実逃避を始める者も。

 涌谷さんの顔つきがかなり険しいものになっているのだから、かなり重大な事態だと実感せざるを得ない。


「とにかくビギニアへ急ごう。話はそれからで。ファル、かなり大人数だけど……いける?」

[――やってみせよう]


 心強い返事だ。ファルの並々ならぬ想いが汲みとれる。

 俺たちは乗れるギリギリまでホバーバイクに乗り、王都ビギニアへ発つ。強行スケジュールだが、碑文の事実とビギニア襲撃が衝撃過ぎて、俺たちから『のんびり』という概念は失われた。


 待ってろ。俺が到着するまで、ちゃんと生きてるんだぞ……!


「みんな、しっかり掴まっててね!!」


 ここからかなり飛ばすぜ!


* * *


 やっと着いたビギニアは、ガレキが地面に散らばっており、思わず目を覆いたくなるようなありさまだった。

 騒ぎの元凶は、沢山の死面徒とビリー共。王都を我が物顔で歩いている。


「……奇想転身ッ!!」

「アイシー、ユナイトだ」

「了解。『ユナイト』」


 死面徒には精霊の力を使わないと敵わない。それを知っている俺と涌谷さんがそれぞれ変身し、涌谷さんは死面徒を切り捨て、俺はビリーを処理する。


───────{3}───────


 ちっ。

 取り敢えずその辺のビリーに当てて必殺発動状態を解除し、再び必殺技で蹴散らしを図る。もっと強い攻撃ちょうだい。


───────{2}───────


 下がってどうすんだよ。

 まぁ、この状態でもビリー程度なら1回切れば倒せるんだけど、やっぱり数が多いから範囲攻撃が欲しいのよ。


───────{7}───────


 強いんだけど範囲攻撃じゃない!

 俺がもたついてる間にも、死面徒は涌谷さんによって倒されていく。


───────{1}───────


「いでっ!!」


 ちくしょーめぇ!!


「遅いぞ、天宮」

『報告。もう片付いた』


 残るビリーは既に死面徒を倒し終えた涌谷さんの手に掛かったようで、俺にそんな言葉を投げてくる。

 うるせぇ。俺の運が悪いのとおたくらが強すぎる所為なんだよ。


 しかしこうなると、喫茶店にいたクラスのみんなが心配だ。俺たちはすぐさま記憶を頼りに、喫茶店がある場所へダッシュで向かう。長い事走ったが息切れはしてない。グレン団長から受けた訓練の成果が出ている。そこで待っていた光景に、俺たちは言葉を失う事になる。


 喫茶店は周囲の建物と同様に、ガレキの山となっていた。


「そんな……嘘だろ……」

「うっ……みんな……!」


 悲痛な面持ちとなるみんなだけど、俺はまだ希望を捨てずにはいられない。ガレキの山を掘り起こせば、まだ生きてる人が居るかも知れないからだ。


 無我夢中でガレキを掘ってると、いつの間にか無言で御嶽くんも手伝いに来てくれた。それからは、みんながガレキの掘り起こしに協力してくれる。俺の気持ちが伝わったのだろうか。

 そして俺は、ガレキに埋もれたメモを見つけるのだった。


『王城に避難しています by2年1組』


 クラスメイトの無事を知らせる物の発見に、俺たちは大いに歓喜する。失くした希望が、燃え上がるようだった。俺たちはすぐに王城へ向かう。


 その道中、見覚えのある格好をした人が、道端で力なく倒れていた。

 メイちゃんだ。


 まさか、死んじゃったの?


 俺はたまらず駆け寄って座り込む。


「メイちゃん!なんで倒れてるんだよ?!あぁ俺が置き去りにしたせいか!ゴメンよメイちゃん!メイちゃんメイちゃんメイちゃん!!!」

「……るっさいわね……聞こえてるわよ……」


 ああよかった生きてた!


[ヤタともやり取りが付かない……相当大きなダメージを負ったようだね]

「そんな……! いつものメイちゃんなら、死面徒なんて敵じゃないのに!」

「アンタのせいよ……! アイツらが死ねば、アンタの笑顔が曇る……それが嫌で嫌でたまらなかったの!!」


 メイちゃんが心の奥にしまっていたものを吐き出した。それは、俺に対する怒りや憎しみ……愛しさや親しみも全部ひっくるめたものだった。

 今までの人生でこんなクソデカ感情ぶつけられた事なんてないから、俺はもうどうすればいいのか分からない。


 なので、以下セリフのみの回想。


『急げ! でも落ち着いて! 王城は近いぞ!』

『うわっ!?』

『大丈夫か渡部!?』

『マズいマズいマズい――』

『ハアッ!!』

『フカミさん……! あの、助けてくれてありがとうございます!』

『礼はいいから早く行きなさい! このままじゃ持たない……!』

『で、でもそれじゃあフカミさんが!』

『いいのよ! 私はこれで……!』


 そんな感じで、死面徒の襲撃からクラスメイトを避難完了するまで守りながら戦ってたという。


「これで借りは全部返したわ……」


 そう言ってまた目を閉じ眠りに就くメイちゃん。今まで俺に助けられた事を、そんな風に感じてたなんて思わなかった。

 さっきまでは俺がどうしたいかなんてわからなかったけど、居間ならはっきりと『こうしたい』ってのが見える。


 俺はメイちゃんを背負い、立ち上がる。おんぶってやつだ。


「ちょっと……何やってんのよ……」

「俺はっ、知り合いを見捨てて平気で笑ってられる人間じゃないんだって……!」


 結構重いけど、鍛えた俺の体なら耐えられる!

 これなら王城まで運べそうだ!


「みんな、待たせてゴメン! けどもう大丈夫!」

「あぁ……。なんか天宮、俺らが見ない間にすげー成長したな」

「いや、元から『こう』であったのだろうな」

「だからファルさんは力を託した、と」


 そんな訳でメイちゃんを回収した俺たちは、時折やって来るビリーを追い払いつつ王城へ向かう。


 体感時間で25分したら、王城の前までやって来た。ここまで来たら、あともうひと踏ん張りだ!


 王城は深い堀で囲まれていて、橋を上げればそう簡単には侵入できない造りになっている。城壁も角度が付いてるもんで、鎖を上手いこと引っかけるのにだいぶ苦労した。

 そして鎖を巻き上げる要領で俺たちを引っ張る。堀と城壁を越えれば、皆の居場所はすぐそこだ。かなり重いけど、鎖は持ちこたえてくれた。


 しばらく歩いて王城の中庭。そこにみんなは居た。


「おっ! あいつら帰ってきたぞ!」


 俺たちの帰還に沸き立つクラスメイト。明確な戦力の取得は、確かに心に安らぎを与えるものだ。よかったよかった。


「おーい!」


 俺がにこやかに手を振ると、みんなが駆け寄ってくる。

 それからはいつものように、賑やかしの時間。


「ヒャッホホホヒャッホイ!」

「帰って来るのが10年遅いんだよ!」

「今まで不安だったよおおおおおおおおおおおおおお!」

「だよな。不安で夜しか寝れんかった」

「最大戦力の涌谷さんも帰ってきたし、もう安心だな」

「勝ったな風呂食ってくる」

「逝ったかと思ったよ」

「とんでもねぇ。待ってたんだ」


 あぁ~、こんな賑やかな空間に居ると落ち着けるね。もちろん、静かな森でも同じような感想になるんだけど。それとはまた違った安らぎを感じるのだ。


「じゃあ点呼取りますか! 委員長よろしく」


 災害時の点呼は基本だからね。訓練が活きている。

 そうして点呼が終わり、委員長が先生に報告する。


「2年1組全32名とほか3名、欠員無しです!」


 こんな状況になっても、誰ひとりかけてない事が本当にうれしい。

 しみじみと噛みしめていたら、空から何かが降りてきた。


「ルファドさま!」


 へぇ、あれが英雄と崇められてるルファドか。俺リサーチでは推定黒幕なんだが、シエルちゃんはそんな事ちっとも思ってないらしい。まぁ、上司が犯罪者ですって言われてどれだけ納得できるかって事なんだろうけど。

 俺が勝手に疑いの目を向けたルファドが口を開く。


「この度の争乱。私としても非常に不本意かつ心が痛むもの。故に私自らの手で鎮めよう」


 それはひょっとして自作自演ってやつなのかい?


「……その者。何か不満があるようだな」

「あっ俺?」


 やっべバレてた。


「いやその……俺は正直ルファドが信用できないっていうか……神様だったらこんな事になる前に何とかしてくれたらよかったのにっていうか……」

「ふむ。確かにそなたの言う通りだ。シエルからの報告が無ければ、気付かなかったかもしれない。私の怠慢をここに詫びよう」

「さすがルファドさま……!」


 反省できるしごめんなさいも言えてる……もしかして悪い奴じゃないのか?


 シエルちゃんが歓喜に震え俺が考えを改めようとする中、動き出そうとしたルファドが背後から剣で胸を貫かれた。


「ルファドさま!! 貴様よくも……!」

「そいつが『英雄』だぁ……? 冗談にしては質が悪すぎる!!」


 ルファドは命を落とす。

 シエルちゃんは怒りを燃やしてるけど、俺は何が起こっているのかもわからず、その場で立ち尽くしているだけ。


 コロコロと状況が変わっていった王城の中庭で、ルファドを葬った元凶が吠えた。


「『英雄』はただ一人、この僕だッ!!」

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