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第47話 放蕩娘は次期族長!?

私事ですがバイト始めました。


 衝撃の事実が俺らを襲った。

 今までいっしょにいたミロアさんは、なんと花茎族族長であるデンドロスの娘さんだったのだ。


「特に断りもなく国を抜け出したと思えばのこのこと帰って来よって!」


 デンドロスさんの話によれば、ミロアさんは昔から碌に家業を継ごうとせず、ジザニオンの外で遊び歩こうとしていたらしい。そしてとうとう抜け出しに成功し、死面徒に襲われた所を俺に助けられ今に至る、と。


 ミロアさんはお説教を続けるデンドロスさんの目の前で正座をし、申し訳なさを前面に出して俯いている。

 今思えば頻りにジザニオンを避けていた理由は、このお説教を避けたいって気持ちがあったのかもしれない。


「いつまで続くんでしょうか……」

「おじいちゃんの話って長いからねぇ……」

「止めときなさいって。気付かれたら私たちまで非難の的よ」


 シエルちゃんの漏らした疑問に続いて御嶽くんが愚痴をこぼし、2人まとめて高橋さんに釘を刺される。

 俺も理不尽に怒られるのは嫌だから、聞いてますオーラを出しておこう。


「そもそもお前には次期族長としての心構えがなっとらん。未来の花茎族の行く末を先導する立場である事を常に念頭に置きうんたらかんたら…………」


 ……マジで長ぇな。俺だって途中から聞いて無いもん。実際に説教を受けているミロアさんは、単調な受け答えなんて許されないだろうからな。精神的ダメージはかなりの物だと察せられる。


「俺長いチュートリアルって苦手……」

「最近のゲームは説明書が付属しないからなぁ……」

「ハルさんハルさん、自分そろそろ町の人と話したいッス」

「でもミロアさんが居なきゃ迷っちゃうんじゃない? 迷わない自信あるの?」

「そこはイインチョさんやセラさんにでも頼んでみるッス。……セラさん、どうして動かないッスか?」

「瞑想。話しかけないで」


 待ちきれなくなったサヴァちゃんが涌谷さんを頼りにするけど、ピクリともしない。代わりにアイシーちゃんが、この時間を利用して瞑想をしていたと伝えてくれた。こういうスキマ時間の使い方で、差が付くんだなぁ。委員長は何してるんだろう。


「委員長、やっぱり俺らもここに居座るべきかな?」

「目的地はあの大樹だし、あのようなランドマークは文化的な意味で大事にされがちだからなぁ。下手に無断で踏み入っていざこざを招くよりは、ここで待ってた方がいいんじゃない」

「なるほどぉ」


 確かに俺らもでっかい岩や山に神様を見い出しがちだもんね。あの大樹が花茎族にとって重要な意味を持っていてもおかしくはないか……。そこに気づくなんて、やっぱり委員長って賢いなぁ。


「ミロア!聞け!ミロア!自覚を持て!ミロア!未来を担うのだ!ミロア!分かっているのか!ミロア!身を弁えろ!」


 デンドロスさんのお説教は正午を回ってもまだ終わらない。俺ももう飽きてきた。

 かといって口出ししたら俺まで口撃されそうだからなぁ。サヴァちゃんもシエルちゃんもクラスのみんなも、デンドロスさんから離れた場所に移っている。


「なぁ……本当にいつまで続くんだコレ」

「最悪の場合、日付を跨ぎそうだね」

「えー!? それまで待てないッス!」


 御嶽くんが呆れ混じりに言った言葉で委員長が推測したけど、サヴァちゃんはもう我慢の限界のようだ。

 俺もハラペコだし、さっさと終わってほしい。昼食は現地調達の予定だったのに……。


 落ち込んだところで、俺は花茎族の種族的事情を思い出した。花茎族には確か味覚が無くて、水さえ飲んで光を浴びてりゃ生きていける種族。ならば俺たちのような食事は採らないんじゃないか、という事情。

 すっかり頭から抜け落ちていた。なので昼食は抜きに等しい。こんな失敗が無いように、次からはチャートにちゃーんと書き込んでおきましょう。


「ねぇねぇ委員長、狩猟許可って必要かな?」

「え? あ、うん。この集落では森と共に暮らしてそうだから特に、ね」

「だったらデンドロスさんのお説教が終わらないとダメかぁ……」

「イベントスキップできないとかクソゲーだろ……」


 内田くんに同じ。長い演出はカッコいい時もあるけど頻発されるとだれてくるのよね。


 てなわけでお説教が終わるまでカット。


 すっかりしおしお状態になってしまったミロアさんを傍に、俺たちは委員長を前に出してデンドロスさんと向かい合う。ここまで長かったなぁ……。


「さて、時間をかけさせてしまったな」

「本当だよ……」


 ぼそりと小声で、聞こえないようにツッコミを入れる。


「して、君らは何を望む?」

「あれ、意外とあっさりですね」

「人間とそれに準ずる種族が態々こんな地まで出向いてきたのだ。只事とは到底思えん」


 思っていたよりも聞き分けが良さそうだ。けどハロデヌィでの件みたいな事もある。油断せずにいかないと。と、委員長に小声で伝えておく。


「実はかくかくしかじかという訳でして……」


 委員長が俺たちの事情と共に、大樹への立ち入りと食料調達を許して欲しい事を伝える。

 緊張の瞬間。俺の心臓が鳴り止まない。


「……時が満ちたか。であれば此方も死なれるのは困る。よろしい、お主らにこの森での狩猟と巨大樹への立ち入りを許そう……」


 厳しい人物像だしお叱りの1つや2つ覚悟していたら、帰ってきたのはひとり呟くような言葉。


「案外あっさり……」

「長い時を生きていれば、自然と耳に入って来よる。そなた、光の魔法を受け継いだ者だろう?」

「え、あ、はい」


 だとするとめっちゃ長生きなアオスブルフ姉弟も、先代の戦いを知っていたのかな。もっと早く先代について知れてたら、色々話が聞けたかも。


「巨大樹に眠る碑文が、最後のひとつだ。行って、真相を確かめるのだぞ」


 それを最後にデンドロスさんは喋らなくなった。死んだ……訳じゃなさそうだな。ミロアさんに反応が無いし。


 って訳で、無事に族長からいろんな許可を得られた俺たちは、早速世界樹に向けて出発……はせずに、腹ごしらえ。お腹が空いてちゃあ何もできないのだ。


「準備には私の家を使うといいわ! 外の道具も揃えてるわよ!」


 マジか。助かるぜ。

 そんな訳で、内田くんと涌谷さんとアイシーちゃんは森で狩猟、高橋さんと御嶽くんとシエルちゃんは川で釣り、ついでにファルとミロアさんとサヴァちゃんはその辺で草や木の実の採取という風に班分けがされた。いざ飯へ向かって全速前進。


[ワタシは見ての通りの体だからね……力になれなくてすまない]

「いいのいいの! 見つけてくれたら、俺が代わりに行って採ればいいんだしさ」

[ありがとう……ワタシはキミに救われてばかりだ]

「俺もファルの力抜きじゃ、今頃生きてないだろうし、お相子って事で」

「あ! そこの木の実美味しいわよ!」

「……本当ッスかね」

「えーマジ!? どこどこ!」

「そこ! そこの枝よ!」


 俺の真上を見ると、そこにはつやつやしてて美味しそうな木の実が実っていた。あれが食卓に加われば、華やかになる事間違いなしだ。何が何でも手に入れたくなった。

 必死にジャンプするが、届かない。こうなったら、アレの出番だ。


「奇想転身! からの『ジェイルアンカー』! これを枝に巻き付けて……よし採れた!」

[メイに見つかったらきっと怒られるよ……]

「ちょっとだけだし平気平気! はい変身解除」


 うーん、上出来!


 そうして日は傾き、内田くんたちがそこそこ大きい鹿、御嶽くんたちがバケツたっぷりの川魚を土産に戻ってきた。

 川魚は内臓を取り除いて串にさし直火焼き。みんな肝を味わうほどオトナじゃないのだ。

 そして鹿は、高橋さんが砂押くんから直々に教わったジビエ料理へと変貌を遂げる。量もまだあるし、香草を使って燻製にしたので保存も効く。世界樹を上る時のランチにでも。


 腹が満たされたので何だか眠くなった。今すぐにでも巨大樹へ旅立てるが、もう眠いし、行くのは明日で。

 

 明日できることは明日やろう。それが俺のモットー。


* * *


 翌日。俺たちはあの巨大樹へ向け、ドリューモポリスを発った。そして今は、巨大樹の根元にいる。根元にある割れ目から中へ入っていくのだ。


 ミロアさんに案内された割れ目で俺たちが見たのは、光の筋が走っている人工物。触るとひんやりしてて気持ちがいい。

 でも入口らしき部分は全然見つからない。ザ・壁って感じだ。


「ここから中に入るのか?」

「えぇ。カードをそこに翳すと開くのよ」


 ミロアさんの言う通りにクラスカードを壁にタッチしてみると、壁がSF作品でよく見るような変形をして入り口になった。


「おいおい……今までファンタジー世界観だと思ってたのに急にSFっぽくなって……ゼノ2かよ……」

「相変わらず特定の人にしか伝わらない比喩するわね……」

「まぁ、伝わってればいいんじゃない?」

「こういう技術はまだ現代科学の範囲だと思うな」


 内田くん高橋さん御嶽くん委員長がそんな会話を交わした所でいざ突入。

 内部は床に白いタイルが敷き詰められ、ビルのエントランス的な雰囲気だ。横にボタンがあるあの扉なんて露骨にエレベーターだし。とりあえずあれに乗って登れるとこまで登りましょうかね。内装が所々ボロっちくて廃墟みたいだし、動くかはわからんけど。


「これ、本当に動くのかしら?」

「物は試し、駄目で元々人生はギャンブルだよ!」

「博打。成功するの?」

「どうだろうな……詳しい人もこの場にはおらぬし」


 俺の運を信じてボタンをポチッとな!

 ボタンが点灯し、駆動音が聞こえてくる。動いた! やったー! 嬉しい!

 さっそく乗り込み行けるとこまで。

 9人乗っても重量オーバーのブザーは鳴らなかったけど、さすがにケーブルも劣化してるだろうし心配だ。アイシーちゃんは宙に浮いているので問題ないと予想。


「巨大樹がかつて天を衝く摩天楼だったという説は本当だったのね!」


 エレベーターで上昇していく中、ミロアさんがこんな事を言い出した。


 俺が心配していた事案もなく、エレベーターで行ける最上階まで着いた。ここからは階段を上る事になる。


 それからは特に番人らしき存在もなく、思った以上にあっさりと碑文のある場所へ着いた。


 碑文にはこうある。


 『忘れ去られてゆく事に耐え切れなくなった英雄は、世界に己の存在を打ちつけるべく厄災を起こした』


 ……なんだって?

 持ってるメモに書いた碑文と照らし合わせて委員長と内田くんといっしょに推理すると、こんな並びではないかという結果になった。


 『ある所に混沌の時代を切り拓いた英雄がおりました』

 『しかし英雄の成した事は、次第に人々の記憶から無くなりゆく』

 『忘れ去られてゆく事に耐え切れなくなった英雄は、世界に己の存在を打ちつけるべく厄災を起こした』

 『やがて大地は災禍に相次いで見舞われ、大勢の人が命を落とした』

 『6人の少女が災厄に立ち向かうも、打倒は叶わず力尽きた』

 『それでも、彼はまぎれもなく英雄だった』


 英雄と魔法少女の間にこんな因縁があったなんてなぁ。


「英雄って……まさかルファドの事じゃあ……」

「そんな! ルファドさまがそんな事するなんてありえません!!」


 委員長に噛みついてきたのは、そのルファドの使いであるシエルちゃん。親を疑われるようなもんだから、その怒りは分からんでもない。


 じゃあ、俺が今まで戦ってた死面徒っていったい何なんだ!? 先代が戦っていた『理不尽な存在のしもべ』と同じなのか!?

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