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第46話 最後の碑文へ


「…………な……さい……」


 う~ん、あと5分くらい寝かせて。


「……なさい……ってば!」


 も~、そんな揺すらなくてもいいのに。


「起きなさいっつってんのよこのアンポンタン!!!」


 頬を思いっきりシバかれた。そこまでされたら、目を覚まさない訳にはいかないなぁ。


「ようやくお目覚めか、天宮。気分はどうだ?」

「う~ん、最高!」

「……ったく、手間かけさせないでよね!」


 涌谷さんもメイちゃんも無事だ。良かった。

 メイちゃんは文句言いつつも、探してくれたんだな。感謝感謝だ。


 で、ここはどこだ?

 ゲロ吐きながらハンドル手放したところまでは覚えてるんだが……。


 こんな時は周囲の風景が判断材料だ。お、草が生えてる。それに風も暖かい。


「ここってもしかして……グラージュとの国境に近い?」

「近いというか、もうグラージュよ」

「はえーそこまで転がってきたんすねぇ」


 後ろを見れば、俺たちが登った雪山がそびえている。変身してなきゃ死んでたな、俺。

 俺を守ってくれた光の魔法に感謝しつつ、俺は変身を解く。……しばらく風呂入ってないからちょっと臭うな。


[よくやったじゃないかハル! これでキミの目標はあとひとつだ!]

「おー、ファルも無事だったか!」

[あぁ! キミより少し早く目が覚めてね。ヤタと情報共有していた所なんだ]

[殿を引き受けてくれて感謝しとるで、ハル!]

「ちょっと、ヤタまでアイツに絆されないでよ。バカが移るでしょ」

「俺だって手洗いうがいはしっかりやってるし、必要な時は手の消毒とかしてるもん」


 まったく、失礼しちゃうよ。


「では、皆の所へ帰るか」

「おー! ……お土産ないけど許してくれっかな?」


 俺はそんな不安を抱えつつ、ビギニアにいるクラスメイトとミロアさんサヴァちゃんに『帰ってきた』と報告する為歩き出す。ここからは地図にもはっきり描かれているし、楽勝だぜ。ゴタゴタで地図を無くしていない限りはな!


* * *


 さっきの言葉、フラグでした。

 俺がリュックから取り出した地図は、もう皺だらけのぐちゃぐちゃで見れたもんじゃなかったのだ。


 それでも何とかビギニアへ到着し、喫茶セイヴァーズの裏口から「ただいま」と言いつつ中に入る。到着できた方法? 知恵と根性。


「お帰りッスハルさん! 自分、肩でも腰でも揉むッスよ!?」

「おー、ありがたいねサヴァちゃん。じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。風呂上がったらよろしくね」

「分かったッス! 自分にお任せッス!」


 風呂入ってサッパリしたら、サヴァちゃんが敷いてくれたマットへダイブ。うつ伏せに寝そべり、サヴァちゃんの揉み解しを受ける。あ゛ぁ゛^~生き返るわ゛ァ^~。

 俺の次にはメイちゃんが風呂へ入っていった。その次は涌谷さんだ。


「天宮、そんな体勢になってる時に頼むのもアレだけど、今まで集めた遺跡の碑文ってどんな内容なんだ?」

「確か、このメモに書いてるはず……! こんな渡し方でごめん」


 そう言って俺は内田くんに持っていたメモ帳を投げ渡す。


「……なあ天宮、これって何の順番で並んでるんだ?」

「んあー……確か見つけた順のはず」

「それだと文法おかしくならないか?」


 内田くんの指摘を受けて、俺はメモに書いた碑文の内容を思い出す。


 『それでも、彼はまぎれもなく英雄だった』

 『やがて大地は災禍に相次いで見舞われ、大勢の人が命を落とした』

 『6人の少女が災厄に立ち向かうも、打倒は叶わず力尽きた』

 『ある所に混沌の時代を切り拓いた英雄がおりました』

 『しかし英雄の成した事は、次第に人々の記憶から無くなりゆく』


 ……確かにちぐはぐだな。

 そもそもどの碑文がいちばん上に来るんだ? 全部の碑文を見ればいずれ分かるだろうと思って、順番考えるのを後回しにしてきたツケか。


「おー、丁度いい所に! 委員長、この文の順番考えるの手伝ってくれない?」

「これは……天宮が集めてた碑文? そうだねぇ……セオリーに沿えば『ある所に……』が始めに来ると思うよ」


 クラスきっての頭脳派な2人が考えてくれている。本来なら俺が自分で考えなきゃな問題なのに、少し申し訳ないな。

 その後も2人と俺の推理は続いて、『ある所に……』と『しかし英雄の……』、『やがて大地は……』と『6人の少女が……』はそれぞれ前後関係にあるという事まで突きとめる事ができた。

 けれどグラージュで見つけた碑文がどこに来るのかが未だ分からない。最後のカギとなる碑文はジザニオンにある、と。結局ジザニオンに行く他ない。


「ミロアさーん! 次の目的地ジザニオンだけど、いいよねー!?」


 俺が声をかけると、ミロアさんはぎこちなくだけど振り向いてくれる。その口角は不自然につり上がっていた。気持ちが隠れてなさすぎる。


「そ、そうよね……いよいよ最後の国なんだから! 私も腹くくらないと……!」

「ミロアさーん、すっごい険しい顔つきだけど大丈夫?」

「え、えぇ! 見ての通り、万事問題ナシよ!」


 本当に大丈夫?

 ジザニオン出身のミロアさんが居れば、心強いと思ったんだけど、この調子じゃあまり頼れないかな……。


「じゃあ質問。ジザニオンの首都からグラージュとの国境までどれくらいかかる?」

「3日よ。地理に詳しい人が居れば、の話だけれどね」


 つまりミロアさんが居ないともっと日程がかかるし、最悪遭難もあり得る……という訳か。

 ビギニアからジザニオンの国境まで4日っていう話を聞いたし、1週間くらいかかるのか。マッサージが終わったら準備しないと。


「ジザニオンに行くんだよね? 僕らもいっしょに行っていいかな?」

「いいけど……依頼は大丈夫なの?」

「それが最近、ビギニア周辺ではあまり被害が出なくなったの。みんなでどうしようか……ってなってた時にあんたが帰ってきたのよ」

「それに、碑文を集める旅も最後だってのを思い出したからな。『せっかくなら乗って行っちゃおう!』の精神で決まったな」


 はえ―、そうだったのか。教えてくれてありがとな、高橋さんと御嶽くん。

 そっちが問題ないなら俺は構わないよ。


 委員長の後ろに立つ涌谷さんの肩をよく見ると、ちっちゃいグレイシャさんが乗っていた。


「グレイシャさん? 裏切ったはずじゃ……」

「実は連れ去られる前、グレイシャに【精霊の核】を渡されてな。自分の身に何かあった時にこれを使え、と」

「精霊の核って……グレイシャさんは氷でできたお人形のはずじゃあ……」

「そうであったが、私と精霊装を行ったあの瞬間だけは、精霊になれたという事ではないか?」

「なるほどぉ……」


 つまりグレイシャさんはグレイシャさんなりに、俺たちに絆を感じていたという事なのか……。ありがとうございます。


「いざ作ってみたはいいが……私の技量ではここまでだった」

「なるほどぉ。それじゃあよろしくね、ちびグレイシャさん」

「訂正。名前はアイシー」

「あ、ごめん。アイシー、よろしく」


 ちっちゃくなってもその口調や表情の変化しなさっぷりは変わらないのね。


 委員長らバトルチームも加えるとなると、過去最大の10人での旅路になる。準備が大変そうだけど、やってやろうじゃねーか!


「なら私は残るわ。誰が死面徒の相手をしなきゃならないのって気づいたから」


 湯上りで髪がしっとりしているメイちゃんがそう知らせてきた。確かに死面徒の対処も大事だけど、ひとりで大丈夫かな。現れる死面徒も手強くなってるし……。


「そんな目で見つめてこないで。私に死ぬ気は無いわ。私だって、強くなってるんだから!」

「お、おう。頑張ってね。俺も碑文探し頑張るからさ」

「そうよ! アンタも碑文探し終わったら、すぐにでも死面徒の相手してくれなきゃ!」


 ……なる早で帰ってきます。


* * *


「あ、そこ右よ」


 俺たちはミロアさんの先導でジザニオンの樹海を進んで行く。どれだけ歩いても全く変わり映えしない景色だし、空が木の枝に覆われていて、遭難したら詰みだ。実際に道中で遭難者らしき白骨も見ちゃったし……ガバは起こしたくない。フリじゃないよ?


 ミロアさん以外の並びは前からサヴァちゃん、シエルちゃん、俺、御嶽くん、内田くん、委員長、涌谷さん、高橋さんという順だ。誰が決めたとかではなく、自然とこうなった。そういう意味では、結構チームワークが良さそうじゃないか。遺跡に何が居ても対応できそうだ。


「地面がデコボコしてて……歩きづらいよ……」

「慣れてなきゃ迷うのも納得。浮いてるアイシーが羨ましいな」

「みんな、根っこに躓かないようにね!」

「そうだね! 十分気をつけるよ、高橋さん」

「木の影から原生生物が飛び出てくるかもしんねーからな……」

「了解ッス! 気をつけて進むッス!」


 ……なんて身構えてたけど、結果的に原生生物とのエンカウントはせず、樹海を抜ける事ができた。


「ここが! 私たちの首都、『ドリューモポリス』よ!」


 樹海を抜けた先に待っていたのは、開けた空と木々が立ち並ぶ光景。というか『森そのもの』って感じだ。マイナスイオンが満ち満ちていて心地よい。

 そして向こうに見える超でっかい樹が、最後の碑文があると思わしき遺跡か。気合入ってきた!


「何コレ!? チョー気持ちいい!」

「深呼吸したくなってきたな……やるか」


 我も我もと参加し、この場に居る2年1組全員で深呼吸を行う。鼻から吸って、口から吐く。あー、気持ちいい。心がリフレッシュする。


「気に入ってもらえて何よりだわ。さ、花茎族の族長の所へ行きましょ」


 ミロアさんにとってはホームグラウンドだからか、その足取りは早い。俺たちもはぐれないように、ミロアさんの後に続いて行った。


 そうして辿り着いたのは、でっかい木の下。よく見ると木の幹が人の顔に見えてちょっと怖い。


「彼が花茎族族長。名前はデンドロスよ」


 はえー、こんなデカいのも花茎族なのか。

 そしてデンドロスさんは、ミロアさんを目に入れるなり吠えた。


「今まで何処をほっつき歩いていたのだ! こんの馬鹿娘がぁ!!」


 木の幹に映る表情から怒りが窺える。そしてミロアさんはというと、震えて縮こまっていた。


 ていうか、ミロアさんって族長の娘だったんですか!?

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