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第41話 三色団子でお花見会!

ゼンリョクゼンカイ


 ファルとヤタの案内で、俺たちは死面徒の出現場所へ駆け付けた。


 ハロデヌィの首都ザミルシッチ。国民は精霊族と獣人族で占められており、人間は滅多に足を踏み入れない場所だとか。

 そして水晶のようにきらめく宮殿が特徴の、これまた雪と氷に覆われた都だ。


 そんな美しいはずの都に、異変が起こっていた。


 あるはずのない桜がそこかしこで咲き乱れ、その下でザミルシッチの住人の全てが宴会を開いてるのである。桜の木の下にレジャーシートを敷き重箱を囲んで談笑する様は、俺にも見覚えがあった。


 桜と言えば、俺たちがこっちに来る前は桜が咲く季節だったなぁ。あれから、どれだけの月日が経ったのだろう。羽衣母さん、元気にしてるといいけど……。


 っと、いかん。ノルスタジーに浸ってる場合じゃない。こんな異常事態、明らかに死面徒の仕業だ。


 現場に向かうと、シンプルな丸い頭部に歌舞伎の悪役じみた目つきが張り付いている死面徒を見つけた。それも3体。それぞれピンク、緑、白色をしている。

 くそっ、シンプル過ぎて逆にモチーフが分かり辛ぇ。


 こうなったら、直接聞いてみるのも手段の内だ。


「これほどの天変地異、さぞかし名のある死面徒とお見受けした! ぜひとも名をお尋ねしたい!」


「俺様はサクラダンゴ面徒!」

「私はユキダンゴ面徒」

「そして僕ちんがクサダンゴ面徒だい!」

「3人合わせて――」

「「「サンショクダンゴ面徒!!」」」


 最初に相手の実力を認める作戦は大成功。褒められてよく思わない人っていないんだね。

 それにしても、三色団子かぁ。あの桜の下で俺たちもお花見といきたいところだが、死面徒の手によるものだと倒したら消えてしまう。残念だ。


「勿体ぶって出てきたけど、そこら中に綺麗な花を咲かすだけの能力じゃない。アイツはともかく、私の敵じゃないわね」

「僕ちんたちの力を見くびるんじゃないぞ! 三色団子パワー解放!」


 サンショクダンゴ面徒が揃って眩い光を放つ。

 俺が次に目を開けると、そこかしこで乱闘が起こっていた。中には割れた瓶を振りかぶっている人も見られる。早く止めないと!


「何してるんですか! 暴力反対!」

「あア? 黙れッ!」

「おわっ危なっ!!」


 割れた瓶を振り抜いてきたので、咄嗟に飛び退いた。戦ってきた経験が無かったら易々と当たっていただろう。


「これが私らの能力です。花見にかこつけて他人を泥酔させ、正常な判断力を奪う!」

「べろんべろんになった人たちだけど、もう戻すのは叶わないぞ!」

「貴様ら光と闇の魔法少女を葬るべく、俺様たちは送り込まれてきたのだからな!」


 なるほど。つまりは単純に数で打ち勝とうという訳か。1人増えた程度で俺たちのコンビネーションが崩せるとは思えないけど。もともと無いようなものだし。


 ていうか、三色団子だからって周囲全域を春にするのは無理が無いか?


「何ぼけっとつっ立てるのよ。行くよヤタ、チェンジ・ダークネス!」

「おっといけない。奇想転身ッ!」


 変身を完了させた俺たちは、それぞれの武器を手に同時にサンショクダンゴ面徒へ切りかかる。

 結果、手に帰って来るのはお団子特有のモチモチとした手応えだけ。


「それなりの衝撃なら吸収できるって訳かい!」

「ご名答だな、光の魔法少女」

「お団子ってこんなにモチモチだったかしら……」


 そういえばメイちゃんの故郷のお団子はパサパサだったね。カルチャーギャップ。


 と、ここで久々の運ゲタイム! 状況突破は運ゲに限るぜ!


───────{12}───────


「ぐわあああああああ!!!!」

「あ、兄貴ィーーーッ!!」


 草。


 サクラダンゴ面徒が早くも退場した。あの桜とも、早いお別れだ。


 しみじみとなる俺だったが桜が消えたと思ったら、瞬く間に復活していた。


「助かったぞ弟たちよ!」

「これくらいどうという事はありませんよ」

「そうだそうだ! 兄貴の為ならこれくらい!」


 何故生きている!?


「そうか、倒されても残りの死面徒が復活させてるんだわ……! アンタ、アイツら縛っときなさい!」

「え? お、おい。『ジェイルアンカー』!」


 光の鎖で3体の死面徒をまとめてぐるぐる巻きにする。これで身動き取れまい。


「アビサルガタゾル以下省略! 闇に溺れて沈みなさい!」

「ぐわああああ!」

「ぎゃああああ!」

「ほげええええ!」


 闇の魔法を発動させた刀で、次々にサンショクダンゴ面徒の兄弟を撃破していくメイちゃん。てか、結構雑な詠唱でもイケるんだね。


「これでどうかしら……?」


 メイちゃんの推理が正しければ、この時点で戦闘は終了だ。けど、俺の中の直感が、まだ勝負はついちゃいないと叫んでいる。うるさい直感だが、信じて構えてみよう。


「ハハハハハ!」

「残念だったな闇の魔法少女よ」

「僕ちんたちは3人同時に倒さない限り何度でも復活するのさ!」

「ッ! 何ですって……!」

「そんなのアリかよ……」


 絶望しそうになっているのは、さっきのメイちゃんの攻撃を見たからだ。さっきメイちゃんは確かに3体を倒した。けど復活した。

 つまり『僅かなズレがある限り、同時撃破とは見做されない』という事だから。


 2人で3体を同時に撃破なんて、何か変な形状の武器でも使わない限り不可能だ。 こちとら最高でも2人しかいないんだぞ。3人目とかいないんだぞ。


 どうしよう。ガチで死面徒が俺らを倒しに来ている。


「どうする、メイちゃん。まだ戦う?」

「あったり前でしょ。こんな所でくたばってたまるかっての」


 メイちゃんはまだ戦う気でいるけど、はっきり言って俺には勝てるビジョンが見えない。そう、わずかな光さえも。


「アビサル・ガタゾル・ルルエスタ。刀に集まりし闇よ、その影を弦とし邪なる存在を滅せよ!」


 メイちゃんが詠唱し、刀に集まった闇の力を三日月状にして横一文字に飛ばす。確かにこれなら、同時撃破も夢じゃない。けど……


「兄貴たちは僕ちんが守る!」

「弟よ。そなたの献身、忘れはせん……!」

「感謝しますよぉ……!」


 このように誰か1体でも前に出れば同時撃破は崩れ去る。

 さらに照り付ける太陽の陽ざしが、容赦なく俺たちの体力を奪う。解決策をのんびり考えてる余裕は無さそうだ。


「厄介な能力だな……!」

「おっと! 僕ちんらの能力はこれだけじゃないぜ!」

「そうだとも! さあ、どこからでもかかって来なさい!」

「それじゃあ、お言葉に甘えてっ!」


 俺が走り出すと、転がっていた空き瓶を踏みつけてしまった。そのまま俺は転んでしまう。

 ……なんでこんなところに空き瓶が?


「不思議そうな顔をしているが、それも俺たちの能力だと知るがいい!」

「三色団子野の色、ピンク・白・緑はそれぞれ春・冬・夏に対応しているとの説があります。この中に欠けているものがあるでしょう?」


 四季から春夏冬を除くと、残るのは秋だ。それと何の関係が?


「そう。秋がない、秋ない。つまり飽きないという言葉遊びです」

「だから三色団子である俺たちには、『あき』と名のつくものを操る力があるのさ!」

「その能力で『空き瓶』を操ったんだもんね!」

「拡大解釈過ぎんだろ!!」


 死面徒の滅茶苦茶な言い草に、俺は思わず大声をあげてしまう。


 しかし、案外大した能力ではないのでは?

 実際『あき』なんてのが付く言葉に強いのは無さそうだし。


「ねぇファル、実際『あき』が付く言葉で強そうなのって無いの?」


 俺が尋ねても、帰って来る言葉が無い。不思議に思っていつもファルがいる場所を見ると、なんとファルがいなくなっていた。


「ファルがいない!」

「っ! ヤタもいなくなってるわ!」


 相方の不在に気づけば、ふと後方に何者かの気配。振り向けば緑地に唐草模様の風呂敷をほっかむりにした男が走り去っていた。


「あーっ! 『空き巣泥棒』!!」

「まだまだ行くぞ!」


 まだ出す気でいるのか。どうせ今度は『空き家』とか『空き地』とかが襲ってくるんだろ。いやどういうシチュエーションだよ。


「大英雄『アキレウス』おいでませ!」


 俺たちの前に現れたのは、筋肉ムキムキのお兄さん。

 ……失礼ながらどちら様であらせられる?


「とぼけない! 来るわよ……!」

「お、おう!」


 意気込んだのはいいものの、このお兄さんってば相当強くて、俺たちの攻撃をものともせずに突っ込んできた。そしてその鋼の肉体で、俺たちに幾度となく拳や蹴りを浴びせてくる。2対1なのに、アキレウスは整然とした顔つきだ。

 ふたりがかりでも対処しきれない相手に苦戦する中、死面徒が新たな手先の召喚に入った。


「出でよ、『現御神』!」

「……アキツミカミ?」


 聞きなれない単語だったので、思わず口に出てしまう。

 出現したのは、神々しい光を放つ人影。俺たちはそのオーラに大きく吹き飛ばされた。地面を数回バウンドした後、完全に止まる。

 『神』ってつく時点で相当警戒しておくべきだったかぁ。


「天宮! フカミ! 無事か!?」


 立ち上がろうとすると、後ろから聞こえてくる涌谷さんの声。普通ならば安らぎを感じる声に、俺はむしろ焦りさえ覚えた。例え涌谷さんが並外れた武力を持っていようとも、死面徒には敵わないからだ。


「ッ! また面妖な……。ひとまず受け取れ」

「! わっ……とと」


 涌谷さんがこちらへ投げてきたのは、俺たちの相棒。ファルとヤタだ。でもどうして涌谷さんが持ってるの?


「捕縛。盗賊を見つけたから捕まえた」

「サンキューグレイシャさんに涌谷さん!」


 うん。やはり、あるべきところに収まっていると安心感が段違いだ。


「して、何が起こっておるのだ」

「実は……かくかくしかじか」


 涌谷さんが尋ねてきたので、俺は包み隠さずに見てきたものを伝える。涌谷さんは半信半疑な目を向けてきたけど、この街の状況を見て俺が嘘を言っていないと判断してくれた。非常にありがたい。


「ふむ。ならばこうしよう」


 長さ30センチくらいの尖った氷を生み出すと、ムキムキお兄さんへ振りかぶって投げた。

 放たれた氷は涌谷さんの『氷適正』による操作であっという間にムキムキお兄さんの踵へ深く突き刺さる。するとお兄さんが苦しみだしたかと思えば、次第に肉体が薄くなり消えていった。


「大英雄アキレウス。母から川に浸かられ不死身の肉体を誇るが、握られていた踵だけはそうでなく急所となった人物だ」

「あっ! あのアキレス腱の人なのか!」

「……知っているなら、どうして気づかなかったわけよ」

「文字列が違うから、てっきり別人かと……」

「同じ物体でも地域によって違う呼び名がある。例えば、大判焼きのようにな」

「大判焼き……? ああ、『あじまん』の事ね」


 寒くなるとスーパーやホームセンターの駐車場で売ってるんだよな。


「さっきから俺様たちを無視して会話しやがって! 援軍が来たからなんだというのだ!」


 確かに涌谷さんは死面徒に有効打を与えられない。

 好転しない状況に俺が顔つきを険しくさせていると、グレイシャさんが口を開いた。


「提案。私がセラと契約する」


 確かに精霊と契約を交わせば、俺たちと同様の力を得る事ができる。けど、そうなったら……


[正気なのかい!? 契約をしてしまったら、キミはもうその姿で居られなくなるんだぞ!]

[もう少し時間をとって、考え直しとぉくれやす!]


 ファルとヤタが本気でグレイシャさんにそう促している。他人との契約は精霊側にとって、生半可な覚悟じゃ務まらない物のようだった。


「肯定。昔のやり方なら、そうなる」


 ……そっか。ファルとヤタがいた頃より、精霊も進歩を重ねているんだ。精霊の姿を保ったまま、人と契約を交わす術も開発されているのかもしれない。


「復唱。『我、汝と契りを結ぶ者なり』」

「……我、汝と契りを結ぶ者なり」


 ファルと契約した時、俺はそんなことしなかったはず。もしかするとこれが、精霊族が新たに生み出した契約方法なのか?


「マズいよ兄貴! 精霊と契約されちゃう!」

「相手が3人になってしまっては、私どもが倒される確率がぐんと上がりますぞ!」

「ええい! 何が何でも契約を阻止しろぉ!!」

「させないわ!!」


 涌谷さんとグレイシャさんの契約が完了するまで、全力で時間を稼げぇぇぇぇ!!


───────{7}───────


 必殺技を発動し、横薙ぎに振るう。ハズレ以外引かなければ基本こちらが有利になるのだ。死面徒としては、当たる訳にはいかないだろう。

 それにこれで、再び必殺の12が出るようになったんだからな。


 ちらりと横を見れば、メイちゃんが闇の魔法でユキダンゴ面徒を縛り上げていた。

 こっちも、運ゲでもういっちょ牽制しとくか。


───────{5}───────


 電撃のバチバチなら当たる範囲も広そうだ。実際にそんな効果なんて無かったとしても、気持ち程度には。


「『ふたつの力が混ざり合い、やがてひとつとなるならば』」

「ふたつの力が混ざり合い、やがてひとつとなるならば」

「『森羅万象の化身たる汝よ、我に身と心を委ね賜え』」

「森羅万象の化身たる汝よ、我に身と心を委ね賜え」

「『ユナイト』!」

「ユナイト」


 死面徒を足止めしていると、涌谷さんとグレイシャさんの契約が完了したようだ。

 どうなったのか気になり振り返ってみると、グレイシャさんはいなくなっていた。その代わり涌谷さんは毛先が水色になり、氷の塊を武士の甲冑のように身に纏っている。


「紹介。これは『精霊装』といって、そなたらの使う『契約魔法』とは別物……だそうだ」


 涌谷さんとグレイシャさん、ふたりの声が重なって聞こえる。ひとつの体にふたつの心。そんな状態なのだろう。


「契約されてしまったか……!」

「大変大変! どうしよう兄貴!」

「ええい、例えどんな力だろうと暴力的な数には勝てまいよ! ビリー共!」

「「「「「ビリリリリィィィィ!!」」」」」


 あ、お久っす。

 ざっと100体は居るなぁ。いくら涌谷さんが強くても、この数だと不安が残る。


「涌谷さん涌谷さん、さすがにこの数はキツいだろうし俺も手伝うよ」

「私もよ。貴女が相当な手練れとはいえ、不意打ちされる可能性だってあるもの」

「無用。ありがたいが、そなたらはここで待っておれ」


 そう言い残して涌谷さんは、俺たちが止めに入る暇なくビリーの大群へ突っ込んでいった。


 そしていざ始まってみれば、俺たちの心配は必要なかったと言わんばかりに、刀身が氷で作られた刀を手に大立ち回りを繰り広げている。押し寄せるビリーをばっさばっさと一刀のもとに切り伏せていく様は、見ていて痛快だ。刀の軌跡にはダイヤモンドダストが煌いていて、とてもビューティフル。

 途中で背後から奇襲されたものの、涌谷さんは刀を背中に回してノールックで防いでいた。強すぎ。

 結果、わずか1分ちょっとでビリーは殲滅された。


「え……こんなあっけなく……?」

「残党。残すは貴様らだけだ。――凍てつけ!」

「アビサル・ガタゾル・ルルエスタ! 深淵より出でし闇よ、彼の者を永劫の檻へ誘え!」

「『ジェイルアンカー』!」


 ぽかんとしている死面徒を俺たちはそれぞれの方法で拘束した。後は必殺技で12を出して倒すだけだ!

 お願いします!


───────{10}───────


 ……次の出目に期待!

 光の鎖で縛られたサクラダンゴ面徒を切りつけて、時間を止めてからもう一発だ。


───────{12}───────


 キタキタキタキターーー!

 俺は天高くヴィブジョーソードを掲げてふたりに合図する。


「行くぞっ!」

「アンタ待ちだったての! ヒドゥンスラッシャー!」

「…………斬!」


 俺はサクラダンゴ面徒、メイちゃんはユキダンゴ面徒で涌谷さんがクサダンゴ面徒へ、全くの同時刻に必殺の攻撃を叩き込む。サンショクダンゴ面徒は俺たちの背後で、派手に爆炎を上げながら散っていった。


 桜も散り、ひどく酔っぱらっていた人の酔いが醒めたようだ。これでもう、暴動は起こらなくなっただろう。良かったよかった。

 そう安心していたら、いきなり兵士さんらしき人が俺たちを取り囲んできた。


「我々はザミルシッチ王宮騎士団である! 全員武装を解除して両手を頭の後ろに回せ!」


 紋章も付けているし、本物の騎士団だろう。その辺はビギニアと変わんないね。

 ともかく、俺たちはあの煌びやかな宮殿へ連行されるのだった。

サクラダンゴ面徒イメージCV:ギルガメッシュ

ユキダンゴ面徒イメージCV:ウィスパー

クサダンゴ面徒イメージCV:スネ夫

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