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第37話 もう年末が近いって嘘だろ?


嘘だよね

ねえ

何とか言ってよ2021年くん!



 ジャッポジアの遺跡探索を終え、フカミ邸で旅支度を整えていると、サヴァちゃんが涙に濡れて帰ってきた。


「最下位だったッス! ボロ負けッス! 悔しいッス!!」


「てことは、やっぱり審査員は効率重視だったんだ」


「そうなんッスよ! ただ栄養の吸収だけが食事じゃないッスのに!」


 頬を膨らませてそう愚痴るサヴァちゃん。最下位だったのがよほど悔しかったのだろう。

 大粒の涙を拭って、サヴァちゃんは不安そうにミロアさんへ尋ねた。


「ミロアさん、作戦はうまくいったッスか……?」


『ええ! だから手続きを終え次第ここを発つわ!』


「本当ッスか!? やったッス!」


 それを聞いた途端、喜色満面といった様子を見せるサヴァちゃん。泣いたり笑ったり、感情が忙しそうだ。


 この国ではお屋敷の厄介になった事もあってか、お金の消費が割と少なかった。なので、やろうと思えばジザニオンにもハロデヌィにも行けそうだ。実際に行くかどうかは、ふたりが首をどう振るかにかかっているのだが。


「さて、次はどこへ行こうか」


『「ハロデヌィ以外で』」


 ふたりとも真顔で即答。


 そんなに嫌なのか。まあ、命にかかわってくるから、わからなくはないんだけど。


 ハロデヌィは平均標高が他の国より際立って高く、年がら年中雪と氷に覆われた国だ。

 ミロアさんは元が植物なので寒さにはめっぽう弱く、サヴァちゃんは高い場所だと内臓が口から飛び出て気絶してしまうらしい。だとすると行き先は必然的に絞られてくるけど。


「じゃ、ジザニオンしかないか」


『なっ、何を言ってるのかしらハル!? ジザニオンにはまた今度行けばいいじゃない! そう、その方がずっといいに決まってるわ!』


 コレだもんなぁ。


 ミロアさんは祖国ジザニオンを露骨に避けたがる。理由は分からないし、保留にしてきたけど、今ここで聞いてみようか。


「……なんでミロアさんってばジザニオンに行きたがらないの? 故郷でしょ?」


『そ、それはね……』


 答えようとするも、言葉に詰まったミロアさん。俺は何も言わないけど、物欲しげな目線を送り続ける。

 やがて観念したのか、ミロアさんが陥落して情報を吐き出した。


『実を言うとね、私は前からジザニオンの外へ出て行きたかったの。ジザニオンの外には私の知らない事でいっぱいなんじゃないかって思ってね。

 けど、私の家族……特にお父様がそれを許してくれなくて。それでも諦めたくなくて、国境の監視が薄い日を見計らって外へ出たわ。そして死面徒に襲われて、ハル、あなたに出会ったの』


「そうだったのか……」


『それにサヴァちゃんとも出会えて、私は今とっても満たされてるの。でも、だから、ジザニオンに帰るとまた閉じ込められそうで……怖くなっちゃって』


「そういう事情、だったッスか」


 ならば納得だ。

 そういう訳なら、ジザニオンは旅の最後に持ってきた方がいいだろう。だとすると行き先はハロデヌィのみ。けどふたりは連れて行けないから、どこかを中継してふたりを預けなければいけない。


「準備はもう終わったかしら?」


 俺があれこれ考えていると、メイちゃんが話しかけてきた。って、その手に持った風呂敷はどういう事?


「家族と話し合った結果、私もあなたの旅に同行する事になったの。『ふたりでいる方が死面徒の企みをくじける』とかね」


「でも、メイちゃんは納得したの? メイちゃんってば俺に対して当たりキツいし、てっきり反対するんじゃないかと」


「……はぁ。死面徒を全滅させる為なら、我儘なんて言ってられないわ。それに、私が付いていないと危なっかしいし……」


 最後の方は小声だったしよく聞こえなかったけど、表情から満更でもないって事は伝わったのでまあいいでしょう。


「そっか。じゃあこれからグラージュ経由でハロデヌィ行くんで!」


「は?」


 それではレッツゴー!


* * *

 

「久しぶりの外気よ! 存分に味わわなきゃ!」


 関所をいくつか通りグラージュに到着。晴れて防護服の呪いが解かれたミロアさんが目いっぱい伸びをする。さぞかし窮屈だったんだろうなぁ。


[しかし、堪能する時間はそう長くなさそうだね]


 ファルの言う通り。この門を潜れば、もうそこは王都なのだ。

 王都ビギニアよ、私は帰ってきた!


 中世ヨーロッパ風な街並みを歩き、やって来たのは最近話題の喫茶店『セイヴァーズ』。俺は普通のお客が入る入り口ではなく、裏の従業員専用の入り口から入店した。


「ただいまーっ!」

「おー、おかえり!」

「天宮が帰ってきたぞー!」

「マジ? よし、じゃあ業務のシフトが終わるまで待っててくれるか?」

「応だとも!」


 裏口から入れば、休憩中のクラスメイトが出迎えてくれる。それもそのはず。

 まったく連絡してなかった反省を踏まえて、グラージュに付いた頃くらいには手紙を出していたのだ!


「は? やけに気安いじゃない。どういう事なのよ……!」

「このお店の従業員とハルは同じ土地からやって来たらしいのよ」

「嘘でしょ……」

「ホントの事らしいッス。ファルさんも知ってるッスよね?」

[ああ。初めてここへやって来た時に聞かされたな]


 再会の喜びでみんなとハイタッチしてると、メイちゃんが俺に信じられないようなものを見る目を向けてきている。そんなに変だったかな?


 そんなこんなで質問に答えたりたまにボーっとしたりしながら待っていると、やがて営業時間が終わり、クラスのみんなが押し寄せてきた。

 おや、従業員の中に見ない顔がいるな。


「そういや、天宮は知らなかったな」

「えっ、みなさんの知り合い!? という事は、あなたも救世主なんですか!?」

「ん、まあ、そうなるな」

「それよりも! 名前、確かアマミヤって言いませんでした……?」

「そう。晴だよ。天宮晴」

「何だろう……初めて聞いたはずなのに、なんだか懐かしい気がする」

「それって、俺たちは知り合い同士だった……ってコト!?」

「ワ……!」

「フゥン」

「ハフッ……ハムッ……」

「ヤハ!」

「こら男子共、便乗してちいかわ化しない」

「「「すいませんでした」」」


 みんなノリがいいね。それがこのクラスのいい所なんだろうなぁ。会話に混ざらなくても、眺めてるだけで楽しいんだな、これが。


「で、実際どうなの? 俺の知り合いなの?」

「天宮お前見た事ないんだろ? じゃあ確定だろ」

「いや俺、人の顔と名前あんまり覚えるの得意じゃない方だから……。1度会っただけの関係ならなおさら」

「それじゃあシエルちゃんの方はどうかな。天宮君と会った事ある?」

「い、いえ! そんな事全然ないです!!」


 こちらに来てからというものの、俺の謎は深まるばかりだ。実際何も解決せずにどんどん謎が増えてくからなぁ。俺はもう、あれこれ考えるのをやめている。


 それから俺は、旅してきた土地の事をみんなに話した。みんなの反応も面白くて、つい長く話し過ぎてしまった事を記そう。


「まさかエルツォーンでそのような悪事が働かれていたとはな……」

「それを皇帝自ら潜入して暴くとは、大した人だな。本当に」

「暴れん坊やご老公もびっくりだよ!」

「それで、万事解決した後にゆっくり温泉に入ったんだ~」

「いいなぁ温泉! あたしも入りたい~!」

「すげ~気持ちよかったよ」

「天宮お前、温泉入ったのかよ!? その体で!!」

「まさか……見たのか!?」

「ミロアさんの! おっぱいぷるんぷるん!」

「まあ……そうなのハル?」

「ちゃんとタオルで目隠してたし! 何も見てないし!」

「……それはそれで危なくないか?」

「お風呂の床って滑るからねぇ……カフェでも足滑らせた前科あるし」

「天宮ならやりかねんな」

「その俺に対しての謎の信頼は何?」

「「「「そりゃ、天宮らしい証拠だって」」」」

「そっか! なら大丈夫だ!!」

「納得してんじゃないわよこのアホ……!」


「それと、地図にある日本っぽい国にも行ったんよ」

「マジかよ! どうだった?!」

「えっとね、近未来な大江戸フィーチャリング他のアジア圏って感じ」

「飯は!? 飯はどうだった!?」

「……全員が効率重視の栄養食って感じ」

「oh……マジか」

「ホントあれは思い出すだけで悍ましいッス」

「サヴァちゃんがそこまで言うレベル? だったら寿司やてんぷらはもう食べられないのか……」

「少年よ、これが絶望だ。ターンエンド」

「絶望が俺のゴールだ……」

「みんな死ぬしかないじゃない!」

「あぁ……ひどぅい!」

「俺に任せろ」

「きた!」

「砂押君きた!」

「メイン料理長きた!」

「「「これで勝つる!」」」

「またふざけちゃって……。でも実際、すごい安心感よね」

「砂押君の料理なんて何をどうしても美味いに決まってますわ! 美味すぎて手が止まりませんわ! パクパクですわ!」

「その通りだ! 俺たちは現地にある食材で満足するしかねぇ!」

「お前たちが食われる意思を見せなければ、俺はこの土地を破壊しつくすだけだぁ!」

「そうだ。セイヴァーズの正義は我々にあるーーーーッ!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 頼むぞ砂押くん、俺たちの食生活の充実は君に架かっているんだ!


「少しよろしいだろうか」

「涌谷さん、それに御嶽くんも。どうしたの?」

「お前の旅って、あと2つの国さえ回れば終わるんだろ? その事でちょっとした相談だよ」

「行き先がハロデヌィなら、私も共にと思ってな。雪と氷に覆われた地では、私の適性が役に立つだろう」

「えっ……いいんですか!?」


 涌谷さんは我がクラスの最大戦力だ。それを易々と俺が引き抜いてよいものか……。


「それなら問題ない。こっちも日々確実に進歩してるからな」

「お、おう。ありがとう。代わりといっちゃアレだけど、こっちもミロアさんとサヴァちゃん置いてくから」

「「よろしくおねやさーっす!!」」

「どうして……ああ、気候問題か」


 そんな訳で、涌谷さんの同行が決まった。イッキに当選(一騎当千の事だと思われる)だし心強い!

 次の目的地は寒冷地だし、食料とかの準備は念入りにしないとね! 確か高脂肪分がいいんだっけ?

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