第30話 てやんでいサイバーパンクな大江戸でい
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ひたすら東を目指して数日間。いくつかの関所を通り、海を越え、俺たちはジャッポジアという国へやって来た。俺たちがまず通らされたのは、空港にある税関のような場所。困ったことに、海外旅行というものを経験していないので勝手が分からない。こんな本格的に尋ねられるのも、初めてだ。とりあえずその道のプロであろう職員に大人しく従う。
税関でここまでの通行証を見せると、やって来た目的を聞かれたので、単に旅だと伝える。
「この国はこれまで来た国とだいぶ対応が違うわね。何故なのか教えてくれないかしら……」
しばらく経つと、服の上からでも分かるくらいムキムキな職員さんたちが俺たちを囲んだ。そんな記憶は無いけど、何かマズい事でもやらかしたか?
「そこの女。花茎族で間違いないな?」
「え、ええ。そうよ」
「外来種の種子を持ち込んでいる可能性がある。ちょっとこちらへ来てもらおうか」
言い渡されるや、すぐにミロアさんは両脇をムキムキ職員さんに固められた。俺もサヴァちゃんも止められないくらい、一瞬の出来事だった。
「な、なんでよー!」
「言った通りだ! 大人しくしろッ!」
「そんなー! 新しく来た国だし、見たい場所もいっぱいあったのにー!!」
「精密検査が終わり次第解放する! それまでじっとしてろ!!」
こうしてミロアさんは何処かへ連れ去られてしまった。俺とサヴァちゃん、あとついでにファルは無事に税関を通過できたけど、ミロアさんに申し訳なく感じてしまう。
「ミロアさん待つかぁ」
「そうした方がいいッス。ひとりにしておくと危なそうッス」
そう判断し、出てすぐにあるベンチで一休み。
俺の目に飛び込んでくるのは、教科書や時代劇で見た江戸時代の街並み……によく似た光景。通行人の男性はみんなちょんまげだし、和服を着ている。
『よく似た』と表したのは、そこかしこに立体ディスプレイ的なものが浮かんでいるからだ。景観は江戸時代なのにそんな技術力の塊が存在していると、違和感が凄い。
ハイテク大江戸だ。てゆうかスマホどこに入れてるねん。袖だと落ちてしまうやろ。あと、歩きながらスマホを弄るのは、やめようね! この前スマホやりながら歩いてる人とぶつかったんだよな。俺は尻餅付いただけで済んだけど、相手からの謝罪は無しでそのまま素通りしやがったんだ。あ゛~、思い出したら気分悪くなってきた。こんな時は食って忘れるに限るぜ。両替は済ませてあるし。
「おっちゃん、団子ひとつちょーだい」
「おう」
「自分も食べたいッス!」
「そっか。じゃあ1本追加で」
「あいよ」
近くにあった茶屋で団子を注文する。やって来るのは、オーソドックスな三色団子だろうか。あれってピンクが春、緑が夏、白が冬で、秋が無いから『飽きない』らしいね。昔の人って良いセンスしてるなぁ。
「お待ちどう。団子ふたつね」
運ばれてきた団子に、俺は思わず目を疑った。なんと白一色なのだ。
ま、まあ見た目は悪くても美味しけりゃヨシ! だし、早速食べる~!
なんか、食感がもっさもっさしている。もちもちという感じではない。団子の姿か? これが。
いや待て。噛んでいると段々味が変化してきて……これは、餡子!? 小豆の食感もこしあんっぽい感じもしないぞ! 脳がバグるわ!
「ハルさん。これ美味いッスか?」
「……全然」
「そうッスよね。コートクランで食べたご飯の方が、美味しかったッス」
地図では日本みたいな形だったし、食べ物も似てるのかなと思いきやこれである。あくまでも日本に似ているだけで、国としては別物。
しかも街の景色をよく見たら、中華街とか電飾とか他のアジア圏の文化も混じってるじゃねーか。
「何が『日本っぽいし楽』だ。何が『どっちでも同じようなもんだろ』だ……!」
こうなったら、俺がホンモノの日本ってやつを教えてやるよ!
寿司は……ちらし寿司くらいしか作れそうにない。ラーメンは準備が大変だ。そう考えると、白玉粉とお水さえあれば作れるお団子が適任だな。
[買いに行こうとしている所悪いが、向こうに死面徒の気配だ]
お、久しぶりだなこの機能。そいじゃ、いっちょ行きますか。
「サヴァちゃん、俺は死面徒のとこに行くから、戦っている間にミロアさんが来るかもだしここで待ってて」
「はいッス!」
「そいじゃ、奇想転身!」
[ハル! ここからしばらく道なりだ!]
ファルのナビに従い俺は死面徒との戦いに向かった。逃げる人の波を掻き分けると、そこにいたのは見覚えのあるボディ。
「ややっ! 貴様は光の魔法少女! タクラム様の言葉は本当だったのか」
「何ブツブツ言ってんだ。ともかく、おまえの好きにはさせねーからな!」
「それは此方の台詞というもの。死ねぇ!」
俺に向かって投げつけられた、いくつもの高速で回転する物体。すぐさま横に転がって避ける。
地面に突き刺さったのは、ハンドスピナー?
「我こそは『ハンドスピナー面徒』! 光の魔法少女よ、その命貰い受ける!」
手で頭のハンドスピナーを回し、俺目掛けて突進した。すかさず盾で防ぐけど、回転するスピナーが当たる度に衝撃が伝わってきて、正直辛い。俺は耐え切れず吹っ飛んでしまった。
[恐るべき威力だ……! ここまでの戦闘特化、キミを始末する為に送り込まれてきたのかもしれない!]
「マジか! 俺も有名になったなぁ」
「日和っている暇は無いぞ! ハンドスピナー手裏剣、数量先程の4倍増し!」
投げられたハンドスピナーの弾幕が俺に襲い掛かる。これはマズいぞ。
姿勢を低くして、体をなるべく盾の裏側に覆い隠して凌ぐ。
何とかハンドスピナーの雨あられは収まったが、完全に防ぎ切ったとは言い辛く、盾の表面には無数の傷跡が残って、盾からはみ出た部分は切り裂いた跡が出来てしまった。
鋭い刃だ。これを素肌で受けてしまうと、あっという間にパックリいかれてしまうだろう。
「これぞ流行の最先端である玩具、ハンドスピナーの力だ!」
「ちょい待って。今どきハンドスピナーって、流行と遅れてるんじゃない?」
「何ッ!? では今は何が流行なのだ!」
「……ソシャゲとか?」
「ゲームではないか! 電子頭脳ではなく、もうちょっと、こう、実体感あるのが玩具というものだ!」
「だったら、カードゲーム?」
「あんなもの、煌びやかなだけの紙きれではないか!」
かなりのこだわりをお持ちのようで。
「真の玩具は精巧なギミック等で自ら輝きを放つ物! ホロ押し加工だか金押し加工だか知らんが、あのような見た目だけの輝きと一緒にするでない!」
ハンドスピナー面徒の主張はともかく、俺に言われてもなー。実際のおもちゃ会社さんに言ってください、って感じだ。
俺の子供の頃はそれなりにブロックで遊んだりした記憶があるけど、今ではそういうのと縁が遠くなった訳だし。
「ていうか、そんな仕掛けが無くても遊べるおもちゃだっていっぱいあるだろ! 例えばコマとかさ!」
「甘いわ! 独楽にはジャイロ効果が働いているのだ! ちゃんとしたギミックなのだ!」
はえ~、そうだったんか。で、そのジャイロ効果とやらはどういう意味なんだい。
「お主と語れど何も得るまい。玩具の事を何も知らぬ愚か者め! 死んで我ら玩具に詫びろ!」
怒らせちゃった。対応を間違えるとこうなるかもだから、人との付き合いってこわいね。
死面徒はハンドスピナーを次々に投げつけてくる。
ハンドスピナーの雨が止まなくても、こちらのターンだ。盾を前に構えて一気に前進して懐に潜り込み、必殺技を発動した状態で斬り上げる。
───────{4}───────
よろしくない結果だが、だからって何かに当たり散らすようではいけない。運勢が逃げてしまう。
次の手を考えるためにハンドスピナー面徒に目を向けると、なんと無傷。何故かと思って地面を見れば、そこにはまっぷたつに切断されたハンドスピナーが。
まさか攻撃が当たる寸前に、あれを囮にしたのか!?
「だったら、これでどうだ!」
俺はジェイルアンカーを発動し、ハンドスピナー面徒を光の鎖でぐるぐる巻きにして、動きを封じる。これでさっきの防御法は通用しない。チャンス到来!
───────{2}───────
ひぃん。けどまだ鎖は解けていない。チャンスは続いている!
───────{3}───────
この攻撃が終わった直後、鎖での拘束は解けてしまった。けど俺は諦めない。避ける方向を先読みして、もう一回必殺技を放つ。
───────{2}───────
駄目だったよ。怯む様子の無いハンドスピナー面徒から手痛い反撃を食らい、俺は大きく宙を舞った。
俺はハンドスピナー面徒との戦いに負けたのだ。
* * *
体が痛くて、思うように動かせない。今頃、サヴァちゃんはどうしてるかな。ミロアさんは無事なのかな。
そんな事を考えながら日の当たらない路地裏で寝そべっていると、上の方から声をかけられた。ファルなら俺と同じくらいの高さから声が聞こえるはずだし、誰だ?
「こんな…………におら……すぐ………………せねば……」
駄目だ。言葉が途切れ途切れにしか聞こえない。もう寝よう。




