表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/55

第25話 鉱山親方は超ブラック

昨日J9GPが開催されたので初投稿です。

大会URL:https://www.youtube.com/watch?v=aQSmLkm01ig


 エルツォーンでは五本の指に入るほど大きな規模の鉱山。その麓には鉱山を管理する事務所があり、さらにその隣には掘っ立て小屋。中にはエルツォーン皇都から集められた十数人の子供たちがいる。


「帰ってきたぞ!」

「……! にいちゃんだ!」


 入ってきたのは、晴から宿泊券を盗み、彼女/彼を殴って気絶させた少年。この場では最年長であり、リーダー格を買って出ている。


「それよりも、ほら。今日はいいもん持ってきたぞ」


 そう言って少年が袋を取り出す。袋の中には、晴が注文したカツ丼がそのまま入っている。

 かきこんで食べるフリをして、その実この袋に入れていたのだ。気付かれなかったのはこの少年が上手いからなのか、晴達がアホだからなのか。後者だろう。


「やった! ごはんだ!」

「まちきれないよ! もうハラペコなんだ!」

「押すなって! ちゃんとみんなにもあげるから!」


 ともかく、一食分の食事に群がる子供達。食べ盛りであるにしても不自然だ。

 その違和感の正体は、すぐに現れる。


「貴様ら! 何をしているか!!」


 少年らを怒鳴りつけるのは、この鉱山の管理者であるアードルフだ。竜人族である。


「こんなものまで持って来よって……貴様らが口にできると思うなよ!」


 彼は少年から袋を奪い取り、床に投げ捨てて踏み躙る。子供達の表情が悲しみに染まる。


 それもその筈。子供達は碌な食べ物を与えられず、強制的にこの鉱山で働かされているのだ。勿論、こういった行為はエルツォーンでも違法である。


「貴様ら弱き人間は、俺達竜人族に守られてでないと生きていられんのだ! それが分かったのなら、脇目もふらずに働け!!」

「やだよう! ぼくたち、もうおなかがペコペコなんだ! これじゃあげんきが出ないよ!」

「口答えするなぁ!!」


 訴えかけた子供を蹴り飛ばすアードルフ。彼は私利私欲しか頭に無いのだろうか。

 子供達はアードルフにすっかり怯えてしまい、その場を動こうとしない。そんな子供達に苛立ちを抑えきれず、アードルフは強硬手段に出る。


「死面徒様! お願いします!」

「クックック……」


 闇から出てきたのは、なんとも形容しがたい死面徒。組み立て式のチェアに座りキャップを被った人が、メガホンで何やら指示を飛ばしているお面だ。

 どこからともなく現れた死面徒に、子供達がさらに怯える。子供達の前に出て庇う様子を見せる少年も、歯を噛みしめている。


「そんな顔をしても無駄だ! オレ様の声ひとつあれば、貴様らはただの奴隷になるんだよ!」

「やはりそういう事だったのね!!」

 

 死面徒が動き出す刹那。掘っ立て小屋の扉を勢いよく開け放ち、晴を背負ったサヴァと腕を組んだミロアが入り込んできた。


「変身しっぱなしじゃなったから死んでた……」

「なかなか戻らないと思ってたら、素で忘れてたッスか」


 三人を目にした少年は驚く。何故なら逃走中煙に巻き、居場所なんて分かる筈が無いからである。


「お前らっ……どうして!?」

「それはね、ココよ」


 ミロアが自分の体を使って足首をさす。少年も自身の足首を見てみると、そこには『引っ付き虫』と言い表せる植物の種子が付着していた。

 取り押さえてもみくちゃになっている間に、便乗して引っ付き虫を付着させ、その反応を追ってミロア達はこの掘っ立て小屋に辿り着いたのだ。


「あっ……!」


 少年がハッとしたところで、晴がサヴァの背中から飛び降りる。


「こんなボロい場所で戦ってたら壊れちまうからな! 来てもらうぞ! 『ジェイルアンカー』!」

「何を……くっ!」


 晴の盾の裏から伸びる光の鎖に拘束され、死面徒は表へ引きずり出された。


* * *


 変な死面徒を光の鎖でぐるぐる巻きにして引っ張り出した後、そのまま勢いに任せ投げ捨てるように解放すれば、死面徒は地面を転がった。この辺の地面って石ころ多いし痛そうだし、そうでなくてもアスファルトとか砂場で転ぶと痛いよね。痛くないのは……床で転んだ時!


「調子に乗りやがって……!」


 死面徒が立ち上がった。

 子供たちはミロアさんとサヴァちゃんが守ってくれるから、俺は死面徒にだけ集中できる。俺は『ヴィブジョーソード』を呼び出しながら死面徒に迫り、死面徒のパンチを盾で弾いてがら空きのボディに叩き切る事1、2、3! ローリングソバットで〆!


 俺も、ファルと出会った頃より上手く戦えているだろう。成長ってやつを実感しちゃうね。

 さて、ダメ押しに必殺技でもぶち込んでやるか!


───────{6}───────


 久しぶりの運ゲの時間。出た目は、まあ、そこそこ。こんなもんだよね。

 炎を纏ったヴィブジョーソードで死面徒をしばく。特に効いてる訳じゃないけど、全然効かないという訳でもない。この死面徒、何のお面をかぶってるんだ?

 

 俺が考えてる間に、死面徒は立ち上がって埃を払う。


「あ~酷い目に遭った……こうなったら、『貴様ら、オレ様を守れ』ッ!」


 死面徒がそう叫ぶと、後ろの方から子供たちのざわめきが消えた。そして聞こえるミロアさんとサヴァちゃんの慌てる声。


「そっちは危ないわ! 近づいちゃダメよ!!」

「どうして言う事聞いてくれないッスか? ここにいる方が安全ッス!」


 いったい何が……? と振り向けば、子供たちがミロアさんたちの腋の下を潜り抜けてこちらに向かっているではないか。そして俺と死面徒の間に割り込み、まるで死面徒を庇うように俺の前に立った。

 どうなってるんだ……?


「どうなってるんだ……?」


 困惑する俺を他所に、死面徒は言葉を続ける。


「いいかよく聞け。あいつはオレ様を邪魔する敵だ。全力で排除しろ!」


 死面徒が手を翻すと、あっという間に俺は子供たちに囲まれてしまう。そして距離が近くなったから分かった事だが、子供たち全員の目が映ろになっている。それに気づいた時には、もう子供たちが俺に向かって飛びかかっていた。そのまま揉みくちゃになる俺。


「この辺水が少ないッス……これじゃあ自分は役立たずッス……」

「痺れる花粉って神経に作用する毒だから……後遺症が残ってしまう可能性は大いにあるわ」


 相手はただの子供だから傷つける訳にはいかないし、どうにかして無力化しないと……そうだ!


「サヴァちゃん! 掴んで!!」

「はい!? ??? はいッス!!!」


 俺は子供たちの隙間を縫い、サヴァちゃんたちがいるボロい小屋へ『ジェイルアンカー』を放つ。サヴァちゃんが光の鎖をしっかりつかんだのを確認した俺は、変身して強化されたパワーでもって鎖を振り回す。俺自身がぐるっと回ってサヴァちゃんを回収した時には、子供たちは光の鎖で捕らえられていた。


「なんかゴメンね。利用したみたいで」

「ビューンってなって、結構楽しかったッス。またやりたいッス」

「そっか、よかった。ミロアさん! サヴァちゃんといっしょに、この子たち見といてくれます!?」

「了解よ!!!」


 子供達の相手を2人に任せて、俺は死面徒へ突撃する。……前に推理タイムだ。


 この死面徒は、自分が言った事を相手に従わせる能力なのだろう。ほら、マンガとかだとああいう目って洗脳されてる時に多いし。

 だがお面のデザイン。これがわからない。今までだとLED電球やドリルなんかの分かりやすいものから、初夢や青色といった分かりづらいものまで。多分この死面徒は分かりづらい方だ。だとすると……俺には分かんないや!


 推理終了。謎の死面徒へいざ鎌倉。


 視界の端から飛んできた膝を剣の面で受け止め、腕に付いた盾で裏拳のように殴る。


 それから俺のターンが続いたけど、死面徒は俺の攻撃を全て紙一重で避け続ける。動くと当たらないだろぉ!?

 こうなったら、アレだ。コイツもぐるぐる巻きにして、運ゲやられたい放題にしてやろう。


「『ジェイルアンカー』!」


 狙い通り、死面徒は光の鎖でぐるぐる巻きにされて身動きが取れなくなった。ふふん、どうだ。

 悦に浸っていると、俺の背中に走る強い衝撃。俺は耐え切れず、前に倒れてしまった。砂利が顔に食いこんで痛い。


 何事かと思い見てみれば、俺に乗っかっているのは、捕まえたはずの子供たち。

 どうやら、光の鎖を出す時に、既にこの魔法で出した光の鎖があると、前に出してた鎖は消えてしまうらしい。そっかぁ……。


「フハハハハ! キサマであろうと民間人が相手ならば手も足も出まい!」


 その通りだ。身動きが取れなくなったから、とりあえず今できる事を考えよう。

 戦う。これは論外。子供たちを犠牲にした勝利なんて、後味が悪すぎる。


 待てよ。そういや小屋の中に竜人族もいたよな。しかも大人。彼は死面徒の被害に遭っていなかった。


 その事実から考えられる可能性はみっつ。

 ひとつ目は、本当に幸運でたまたま被害を受けなかった事。しかしそんなウマい話があるのか。でも、『現実は下手な小説より奇妙でおかしい』ってニュアンスの言葉もあるしなぁ。ともかくこれは的中率が低いだろう。

 ふたつ目は、死面徒と協力してる関係にあるから襲われなかったという事。だけど、総じてプライドが高い竜人族が誰かの力を借りる事などあるのだろうか。正直思いついても、間違いではないかと疑いたくなる。

 そしてみっつ目。そもそも死面徒の能力自体が、人間の、それも幼い子供にしか効果が無いという事。現に、花茎族であるミロアさんと水棲族であるサヴァちゃんは被害を受けていない。可能性を排除していく消去法で考えたら、多分これが真実に近い気がする。確証は持てない。


 でも、あの少年の警戒しきった様子と言い、どうも引っ掛かる。詳しく、それも迅速に調べる必要がありそうだ。


[もう始まってる!]

「……チッ! チェンジ・ダークネス!」


 外からメイちゃんっぽい人の声が聞こえる。それに今舌打ちしなかったかお前。何がそんなに嫌なんだよお前は。


「ヌゥッ、新手か!?」

「あんなのと一緒にしないでくれる?」


 聞こえてくる音からして、メイちゃんが優勢か。ていうか俺ってばそんなに嫌われてる?


「アビサル・ガタソル・ルルエスタ!」


 必殺技の詠唱に入った。今死面徒を倒すのは、なんかマズい気がする……!

 俺は子供たちの隙間を通し、メイちゃんの利き手目掛けて光の鎖を発射した。鎖を巻き取り、脱出にも成功。腕のバランスが崩れたメイちゃんの必殺技は不発に終わる。


「どうして邪魔をするの!!」

「今はあいつを倒すべきじゃないんだよ! もっといい機会がある!」

「機会も何も、死面徒を全滅させるのが私たち魔法使いの使命なのよ!!」

「俺は魔法使いである前に人だ!」


 そう主張すると、メイちゃんの顔がひどく歪む。女の子がする表情じゃねぇよこれは。


「何か知らんが好機ッ。撤収だ!」


 そのまま揉めていると、死面徒が去ってゆく。そのスピードは速く、俺が目を向けた頃には影も形も無かった。


「ハルさん! 小屋に居た竜人族もいなくなってるッス!」


 マジか。いろいろと話を聞きたかったのになぁ。


 俺は冷ややかな視線でメイちゃんに睨み付けられる。言いたい事は何となくわかるのだ。俺のせいで死面徒を逃がしたのだと、その目が訴えている。

 しかしこの妙な空気、俺がきっかけとはいえどうしたものか。……そうだ。子供たちはどうなっているのかな。気になったので俺が纏わりつかれていた場所を振り向けば、子供たちは正気を取り戻しているようだった。中でもあの少年が、俺を見てぎょっとしている。よし、話し相手はあの少年に決めた。


「よう、少年。さっきぶりだな」

「……!」


 怯えている。こんな時は、しゃがんで目線を相手より低くすることが大事。そしてしっかり相手の目を見る。


「大丈夫。この場所には、俺の友だちしかいないんだから」

「誰が友達ですってぇ……!」


 メイちゃんが怒気を籠めた声でそう迫ってくる。怖い。少年も逃げ出しそうだし、ひとまず落ち着いていただこう。鎮まりたまへ鎮まりたまへ。


「とにかく、何でも話してごらんよ。今日の天気でも、お昼寝する時のこだわりでもいい」

「そうやって……」

「ん?」

「そうやって優しくしたからって、オレはダマされないんだからな!!」

「俺が人を騙せると思う?」


 そう聞き返すと少年は黙り込んだ。ふふん、効果てきめんだな。

 自慢ではないが俺はクラスのみんなから、『人を騙せない人№1』の称号を獲得しているのだ。

 え? 『騙すだけの頭脳が無いだけ』って? そうかも。


 観念したのか、少年はぽつりぽつりと語りだした。


「オレら……無理やり連れてこられたんだ。でも、どれだけがんばってもまともに食えなくて、助けを呼んでもだれも来なくて……そんな時に、お前らを見つけて……人間はだいたい観光客だし……金持ちだから……」


 なるほどな。確かにそんなイメージはある。観光地ってなんだか物価も高いし。どうして水道水が300円なんだよ。

 そして、俺たちが金持ちの観光客に見えた、と。そういう訳か。

 

「よく話してくれたね。嬉しいよ」

「……姉ちゃんは、オレの話を聞いてどうするつもりなんだ? 誰かに伝えに行くのか?」

「? そうだけど?」

「そんなの無駄だ! だって……言ったって、何も変わらないじゃないか!」

「そうかな? とも限らないぜ?」


 少なくとも、死面徒が関わっていた。この事実さえあれば動きはするだろうから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ