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第23話 火山の国だ!


 重厚な乗り物に揺られて、俺たちは火山の国『エルツォーン』にやって来た。聞くところによれば、アオスブルフ姉弟もこの乗り物でグラージュへ来訪されたらしい。道理で、警備が厳重になってるわけだ。もしかして俺たちってば、VIP待遇?


「到着いたしました。ご用意を」


 考え事をしていたら、もう着いたようだ。途中で寝ちゃってたから、どの位かかったのかは分からない。

 ともかく、寝ぼけナマコを擦り、大欠伸をかいてから、ストレッチして軽く体をほぐす。


「エルツォーンの首都、『ヴルカーンフォルト』でございます」


 おお……! これは何とも、ビギニアとはまた違う街並みだ。俺にもうちょっと語彙があれば、この景観を伝える事ができただろうに。まあ、今のままで頑張ってみよう。

 そこかしこで湯気が立っており、体感気温も気持ち高めだ。そして地面は完璧な赤土。そして土による野菜の育ち方の違いは……俺にはよく分からないなぁ。


 そして何よりも違うのが、すれ違う人がみんな、アオスブルフ姉弟みたいな竜人という事。俺と同じような人間もいるっちゃ居るけど、圧倒的に数が少ない。

 それに竜人と言っても様々で、人間の体にツノや翼やしっぽが生えただけのものから、頭まで完全にトカゲみたいなものまで。実に幅広い。それでいてあれこれのいざこざが起こらないように見えるんだから、本当にすごいと思う。


「ありがとうございました。えっと……」

「イシュトーと申します。ご案内を務めさせていただきました」

「そっか。俺は天宮晴、天宮が名字で晴が名前だ」

「ミロアです。ここまでありがとうございます」

「自分はサヴァ! ありがとッス!」


 では、この街へ繰り出そうか!

 どんなものが売られてるか、今から楽しみだぜ。


 まずは情報集め。エルツォーンは大陸有数の温泉地であるらしく、観光客のためのサービスも整っている。そして俺の懐には、宿泊地のチケットが人数分。これを無くしたりしたら野宿だ。なのでジッパー付きの袋に入れ、落ちる心配が無いようにして所持している。防水もばっちりだ。


「ハルさん! あっちからイイ匂いがするッス!」

「おおマジか! さっそく食べに行こう! ……ミロアさんはどうします?」

「そうねぇ……せっかくだから、温泉の水でも飲んでみようかしら。温泉って、いろいろ体にイイのよね!?」


 ミロアさんの好奇心には、もう火が灯っているようだ。そういや飲める温泉もあるんだったな、後で飲んでみるか。

 それでは行ってみよー!


 お店ののぼりや看板を見ると、どうもこの界隈はおみやげ屋さんが多いらしい。文字は、何となく読める。

 はえ~、温泉の蒸気でふかした芋か。味付けが塩だけとは、また渋いチョイスだ。嫌いじゃないよ、そういうの。でも、お水なしでの芋の食べ歩きは遠慮したい。むせそう。

 と思ったら、飲める温泉水も一緒に売ってるじゃないか。これは買うしかない!


「すいません。ふかし芋2つと、温泉水3つください」


 代金を支払い、ふかし芋と筒入りの温泉水を受け取った俺たちは、お店の近くにあった休憩所のベンチに座る。


「「「いただきまーす!」」」


 ではでは、早速一口。あむっ。


 ……!

 お芋がすっごく甘い! 口の中でとろけそうだ! 見た目は完全にジャガイモなのに!!

 サツマイモっぽい見た目なら、まだ納得できるけど……とにかく信じられないくらい美味しい!


「美味しいッス! おイモって、こんなに甘かったッスか!?」

「いやいや。俺でもこんな甘い芋、めったに食べた事ないよ!」

「温泉の水が、おイモを甘くしてるのね。飲んでみたから、よく分かるわ」

「スゴいッス~!」


 花茎族って植物みたいな生き物だから、そういう水の違いも分かるんだね。凄いや。


 それにしても、マジで手が止まらん。塩だけっていう味付けがそうさせているのだろうから、これは店主の英断だと実感せざるを得ない。


「ああ待ってハル。そんなに急いで食べてたら––––」

「エフッ! ゥエフッエフッ!!」


 むせた。

 急いで水をがぶ飲みして事なきを得たが、温泉水だったのでちょっと勿体ないことしちゃったな。


 ふかし芋を売っていたお店から少し歩くと、本日泊まる予定の宿が見えた。けど、まだまだお日様は高い場所にあるし、こんな時間から宿に入っても、暇を持て余すだけだろう。なので、俺たちは宿を素通りし、このまま観光を続けることにした。


 あそこのお店は、カラフルな石のキーホルダーが売られてるのか。オシャレね。

 パワーストーンがあれば、必殺の運ゲも少しは安定するのかな?

 しかし、お値段が高い。このお小遣いで買うとなると、しばらくは贅沢を控えなくてはならない程だ。


「この石とかすごく綺麗ね! 角度によって色が変わるし、今まで見た事ないぐらいキラキラしてるわ!」

「ホントだ……すげー」

「おー、確かにそんな感じがするッス」

「……何よ。ふたりとも随分反応が薄いじゃない」

「いや、これでも実際感動してるんだよ? ……はい、すみませんでした」


 そんなシーンもありつつ、いろいろと堪能し、俺が店を出た時だった。


 ドンッ!!


「うわっ! ––––危ないなぁ」


 急に飛び出してきた人間の男の子とぶつかってしまったのは。

 いきなりぶつかったものだから、俺はバランスを崩してしまったが、何とか持ちこたえる事ができたのが幸いだ。


「大丈夫だったッスか? 怪我とかは無いッス?」

「ああうん。問題ないよ。それより、次はどこに行こっか」

「やっぱり温泉ッス! 広いお湯で泳ぎたいッス!!」

「宿に行けばいつでも入れるけど……ちょっと早いかもだけど宿行くか! それにお湯ん中で泳ぐのはやめとこうな? 他に入ってる人がいたら、迷惑になるから」

「わかったッス!」

「宿って確かあっちの方だったかしら!? ハル、宿泊券は持っているわよね?」

「当然! この袋の中に……あれ?」


 Nothing。

 カッコつけてみた所で現実は変わらない。確かに、ここに入れておいたはず。けれど無くなっている。

 記憶ちがいだったかな? と疑いつつ、他にしまえそうな場所を手当たり次第に探す。それでも、宿泊券が入った袋は見つからない。

 もしかして……どこかで落としちゃった!?


「どうしたのよハル。そんなに顔を青くさせて」

「無いんだよ……」

「何がッスか?」

「もらったはずの宿泊券が入ってる袋、どこ探しても見つからないんだよ……」

「「––––はああぁぁ~~~~!?!?!?!?」」


 本当、やっちまったぜ。

 俺が持ってたはずの物が無くなった時って、だいたいどこかに落としちゃったか置き忘れた場合なんだよね。


「じゃあ、じゃあ! これから寝る場所はどうするのよ!?」

「……野宿だねぇ」

「そんな……! じゃあ、楽しみにしていたごちそうは? お風呂は!?」

「……無いねぇ」


 俺の言葉に打ちひしがれる2人。殺人ウイルスがばら撒かれた中、明日に超巨大隕石が落ちてくると知った時みたいなオーラがにじみ出ている。

 俺にとっては、忘れ物はよくある事なのだけれど、今回はそれだけで済ましていい問題ではなさそうだ。かくいう俺も、内心ではスゲーガッカリしている。


 だったらっ……探すしかないかッ……!

 この都市、全域でッッッ……!!


 とはいえ、ヴルカーンフォルトはビギニアの数倍広い。手当たり次第に探しても、あまり成果は出ないだろう。

 じゃあどうするのか。俺の頭で考えるのも限界が見えるので、ファルの力を借りることにした。そして、ファルが出した提案は


[––––ならば、使い魔を呼び出そう]


 なんとも、『それっぽい』ものだった。


[なるべく高い場所で行いたい。頼めるだろうか]

「それならいいんじゃね? あ。あと、変身しといた方がいい?」

[そうだね]

「んじゃ、奇想転身」


 この辺で一番高い場所は……俺たちが泊まる予定だった宿の屋上か。ジェイルアンカーを伸ばし、ミロアさんとサヴァちゃんに捕まってもらって俺ごと引き上げる。


[では、始めよう。キミの目の前に、光の穴があるだろう?]

「……これ?」

[そう。その中に手を入れ、使役したい対象を想像するんだ]

「何でもいいの?」

[目的に最適な形であれば、だね]


 想像が魔法の決め手なのかな。

 それはさておき、何を出そうか。広範囲を探すには、なるべく小さいのをたくさん出す必要がある。アリとか?

 地面を覆う、アリの大群。考えてみたけど、アリグモクイーンとの戦いを思い出してしまって嫌な気分になった。

 打開策を見つけるべく、右の方を見る。魚は……論外か。美味しそうだから、途中で食べられちゃうかもしれない。

 左を見る。植物。……いけるな。あまり目立たないし、風に乗って空から探せる。よし、これで行こう。

 俺は夏の初めによく見かけるアレをイメージしてから、光の穴に手を突っ込んだ。

 しばらくすると、俺の手に感触が伝わってくる。それを確認してから手を引っこ抜くと、俺の手には綿毛のタンポポが握られている。想像通りだ。


[これがキミの想像した使い魔か。一般的な動物型、ではないんだね]

「ま、目的は探し物だからね」


 綿毛のぼんぼんにふぅーっと息を吹きかけると、綿毛は散り風に乗って飛んで行く。


「何それ!? 自分もやりたいッス!!」

「ん。いいよー」


 目をキラキラさせているサヴァちゃんにタンポポを渡すと、サヴァちゃんは思いっきり息を吹きつけた。たくさんの綿毛が空を舞う。

 うーん、なんともメルヘンチック。赤い地面に目を瞑れば、だけど。


[さて、あの使い魔1つひとつの視界を共有してみようか]

「えっそんな事できんの?」

[勿論だとも。先代たちは、そうやっていたからね]


 タンポポの綿毛の数って、いくつだ?

 そう疑問に思っている間に、俺の脳内にヴルカーンフォルトを見下ろした景色がいくつも入り込んでくる。

 段々気分が悪くなってきたぞ。こっ、これはまずい……!


「あばばばばばばば……ヴォエェッ!!」


 吐いてしまった。せっかく食べたふかし芋が勿体ない。


「だ、大丈夫ッスか!? お水飲むッス!」

「あ、ありがとうサヴァちゃん。助かる」

「脳が耐えきれなかったのかしら」

[その様だね。映像の処理は、ワタシがしよう]


 吐いたゲロは、サヴァちゃんの『水適正』で操った水で包み、然るべき場所に捨てました。

 俺はぐったりしたままミロアさんに膝枕され、ファルから発見の知らせを待つのだった。ちなみに柔らかさを噛み締める余裕とかは無かったです。

晴ちんの脳は大体低スぺPCと同じです。キャパ越えるとフリーズしたり、クラッシュします。

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