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第20話 竜帝姉弟、来たる

ニコニコに動画上げてるホモの兄ちゃんに見つかったので初投稿です。

あの人の動画すき。


 開店作業にもだいぶ慣れてきた頃。俺たち2年1組に飛び切りのニュースが入った。

 持ち込んできたのは、何かと騒がしい大空さんだ。


「ちょっとちょっと! すっごいビッグニュースだってば!」

「どうしたんだよ。いつもより落ち着きが無いぞ」

「それがさ、エルツォーン? ってとこの皇帝が、あたしたちに会いたがってるんだって!」

「「「「な、なんだってー!?」」」」


 クラスのみんなに電流走る! もちろん俺にも!

 ところで、エルツォーンってどこ?


「地図や文献によると、火山活動が活発で国民の8割近くが竜人族らしい」

「マジで!? 頼めば鱗とか触らせてくんないかな~!!」

「定禅寺、ステイ」

「竜人族とは……これまたファンタジー」


 エルツォーンがどんな国かを聞いた定禅寺くんの息が荒い。生き物大好きな定禅寺くん、動物園に行った際の行動の数々は伝説として学校に残っているという。いったいナニをやらかしたんだ。


「竜人族さん、アレを受ける羽目になるッスか……」

「ちょっと気のどくよね……」


 横に立つミロアさんとサヴァちゃんが呟いたので、ちらりと横を見てみると、2人とも遠い目をしている。雰囲気もお通夜みたいだ。


『ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから……髪の毛切らせてくんない?』


『エラは……どこにあるのかな? 1回きり見せてくれれば満足するから、ねね、いいだろう?』


「大人しそうに見えるのに、まさかあんなに変な人だとは思わなかったッス」

「人は見かけで判断しちゃいけないのよねぇ」


 いったい2人の身に何があったんだ……。俺の中での定禅寺くん像を、更新しなければならない時が来たようだ。


 それにしても、『会いたがっている』という事は、もしかしてお客様として来店するんじゃないか!? やべぇよ、これじゃ失敗できないよ。かといって、こう、ガチガチに緊張してもあまり良い印象は与えられないし、どうすりゃいいの。


「会うのは王城で、だ。しっかり覚えとけよ」

「分かった。なるべく忘れないようにする! でもなんでちょっと当たり強めなの?」

「天宮にだけは、念入りに伝えておくよう言われたからな」

「お、おう……」


 御嶽くんが伝えてくれたけど、俺ってどう思われてんだろうな……。


* * *


 到来しました定休日。この日は、エルツォーンの皇帝姉弟との対面予定日だ。


 俺は今、王都のお城の中にいる。

 このお城に来るのも、だいぶ久しぶり。皇帝の姉弟は、応接の間で対面する事になっているらしい。

 相手を待たせるのは失礼だし、俺たち2年1組+2名は面会の30分前に応接の間にやって来た。なかなか広い部屋だぜ。


「アオスブルフ皇帝陛下の、御な~り~!」


 ははーっ!

 こう言われると、自然と頭を下げちゃうよね。だって日本人だもん。


「畏まらずともよい。面を上げよ」


 有り難き幸せーっ!

 みんなが顔を上げたのを感じ取った俺は、合わせて目を開ける。

 皇帝かぁ。きっと、すごく偉くて強い人に違いない。世界最強とか、憧れるよね。


 期待に胸を膨らませて見た先に居るのは、なんかちみっこい、男の子。その後ろには、高身長のイケメンが控えている。

 竜人族であるためか、角とか翼とか尻尾も生えているし、鱗も所々に存在している。腕とか脛とかに多いね。定禅寺くんの反応が気になるけど、俺は出席番号では前の方。だから整列する時は大体前。後ろの反応は見れない。

 イケメンの方が皇帝かな? と考えていると、ちみっこい方が口を開いた。


「エルツォーン8代目皇帝、マルス・アオスブルフだ。貴公らの活躍はこちらの耳にも届いておる」


 ウソだろオイ。申し訳ないけど、小生意気な子供にしか見えなかったぞ。


「して……」

「皇帝陛下が懐刀、ハーゲン・アオスブルフだ」


 従者、なのかな?

 姉弟って聞いてたんだけど、そういう関係じゃ、ない?


 俺が頭に『?』をいっぱい浮かべていると、マルス陛下がハーゲンさんの服の裾をぐいと引っ張った。


「姉者姉者。姉者は僕と違っておなごなのですから、もう少し、こう、愛想とか良くしてください……」

「別に構わんだろう。それに、私はマルスが生まれてくるまでは男として育てられてきたのだぞ? 今更愛想を振りまけと言われても、困る」

「そんなぁ……」


 腕に抱きつきながらしょぼんと落ち込む皇帝陛下は、見た目相応の子供にしか見えない。自己紹介で積み上げた、荘厳な雰囲気が崩れ落ちるのが分かる。


「けど、なんか、イイね……」

「分かる~。守ってあげたくなっちゃう」


 現にクラスの中の生徒数名が、母性に目覚めているではないか。

 そんなヒソヒソ話がハーゲンさんの耳に届いた瞬間、彼女が鬼のような形相で話してた生徒を睨んできた。こっわ。ちびるわ。


 姉はブラコンで弟はシスコンなのか、それともあれが当たり前なのか? 俺には兄弟姉妹がいないからよくわからん。


 怯えている中、ふとハーゲンさんの目つきが変わった。新しいおもちゃを買ってもらった子供のように感じる。いや、それよりはもっと大人な感じもするな。

 視線の先には……涌谷さん。涌谷さんも、同じような目をしている。


「その方。なかなか腕が立ちそうだな」

「ふむ、一目見ただけで分かるとは。そなたも、かなり、やるようだな」

「では、手合わせ願おうか」

「良いが、私の本筋は剣だ。そなた、武具を持たずとも良いのか?」

「構わん。我ら竜人族の体は人間より頑強でな」

「ほう。では試してみるか」


 涌谷さんが模擬試合用に調整した刀を取り出し、前に出る。それ、どこにしまってたんだよ。


「しかし、この部屋では狭いな」

「そうだな。訓練場の一画を使わせていただけるよう、グレン団長殿に話を通してみよう」

「では、決まり次第手合わせだな」

「ああ」


 並んで部屋を出ていく2人。緊張が解けたのか、クラスに賑やかさが戻る。高校生だからね。口を開けば、たちまちやかましさが戻る。

 俺? 俺は嫌いじゃないよ、こういう騒がしいヤツ。

 耳を澄ましたら、ほら。


「ヅカ系イケ女と武人系イケ女の対戦ですって!?」

「2人とも顔がいい!」

「見なくちゃ(使命感)」

「観客入れれば、ちょっとした儲けになるかも!」

「それにしてもハーゲンか。男の名前なのに……なんだ女か」

「イケメンで強いのね! 嫌いじゃないわ! 嫌いじゃないわ!!」

「ウホッ♂」

「お前ホモかよぉ!?」

「あたしそういうの嫌いじゃないから!」

「うおおおおお頑張れえええええ!」

「クラス最強の力をぶつけてやれー!」

「姉者は帝国で誰にも負けた事が無いくらい、すっごく強いんです!」

「ヤダ皇帝陛下ってばそれが素の性格!?」

「お、お恥ずかしながら……。やっぱり皇帝なのですから、威厳があった方が好印象ですよね?」

「もしかして……演技はあのお姉さんを参考に?」

「はい! 強くて格好良くて、自慢の姉ですから!」

「うーんこのお姉さん大好きっ子感」

「2人の間に入ってはいけない(戒め)」


 クラスは2人の試合の話で持ちきりだ。俺もどんな試合が見れるのか、正直ワクワクが止まらない。


「ハルの仲間、みんな賑やかね。慣れない土地だというのに」

「だからこそ、じゃないかな。いっぱい刺激を受けてるから、それを弾けさせたくなる。多分だけど」

「確かにわかるわ! 私も知らない物事に出会った時はそうなるもの!」

「そそ。そんな感じ」


 やがて2人が戻ってきた。その手に訓練場の一画の使用許可書を携えて。

 部屋のボルテージは最高潮。試合はスケジュール等を考慮して、4日後に行われるようになった。


* * *


 4日間、涌谷さんは試合に向けて鍛錬を欠かさない。精神統一の座禅に始まり、素振り、巻き藁切り、仮想組手を行っている。いつもの事しかやってないけど、涌谷さん曰くこれが一番いいそうだ。俺にはよく分かんないけど、涌谷さんが言うんならそうなんだろう。

 クラスのみんなは、涌谷さんが最高のコンディションで試合に臨めるようにと、彼女のスケジュールを非番で埋めた。この穴は、俺たちで補う。

 そして、この4日の間にバトルチームに依頼が来たら、涌谷さんの代わりに俺が出るという事になった。まあそういう事態はそんなに起こらないと思うけど、念のため。


「忙しい中失礼するッ! 救世主一行は不在か!?」


 来ちゃった。しかもマルス陛下ご自身が裏の勝手口から。

 無視できないお客様なので、ホールが落ち着くまで裏で待っていただく。もちろん、お茶とお菓子は忘れずにお出しする。皇帝陛下は初めて見るお茶に警戒している様子。だけど高橋さんがそれを察し、同じポットで淹れたお茶を自分で飲み、変なモノは入れてないとアピールしたおかげで緊張は解かれたようだ。さすが、学園のオカンと呼ばれるだけの事はある。

 落ち着いたマルス陛下は、暇になり集まってきたクラスのみんなに詳細を語りだした。


「実は……エルツォーンとグラージュの国境付近で、奇怪な現象が相次いでいるんです」

「どんな現象なんですか? 詳しく教えて頂ければ、私たちも動きやすくなります」

「それが、人ひとり入れる程の大きな穴が所々に空くんです。既に軍部が調査しているのですけど、恥ずかしながら結果は奮わず……。現場周辺で変な背格好の人を見かけたという情報も入っていますが、それ以上のものはありません」

「……この事を他の誰かに話したりは?」

「していません。試合の日も近いですし、姉者にはそれだけに集中してほしいんです」


 ずいぶん姉想いだこと。まあこっちも、涌谷さんには全力で試合に臨んで欲しいから、喜んで協力させていただきますとも!

 それに引っ掛かるのは『変な背格好の人を見た』という情報。変なポーズで立っている人はよく見かけるけど、姿そのものが変な人というのは、限られてくる。最近HOTなのは、やはり死面徒だろう。グラージュに再び入ってから、あんま見かけた事ないけど。アイツら今頃何やってるんだろうな。


[気になるようだね、ハル]

「ん、まあ。死面徒も最近見てないな~って思ってた」

[では、行くかい?]

「もちろんだとも!」


* * *


 やって来ました。ここはグラージュとエルツォーンの国境付近、キョオー巨石群。塔のような石が、そこかしこに立っている不思議な土地だ。


「目的情報と言っても数日前のものだろうし、どこまでアテに出来るかなぁ……」

「狙うは短期決戦! それだと俺の出番あるかな」

「ま、防衛能力ってのは長期戦で役立つからな。適材適所だ、気にすんなって」

「そうそう! それぞれが自分に出来る事で互いを補い合う、そう決めたでしょ!」

「俺にとっては初耳なんだが……」

「だって天宮がいなくなった後に決めた事だし」

「あの時の団結っぷりは凄かったよね~。先生も『もう誰も死なせるもんか!』って意気込んでたし」

「……さらに申し訳なく思っております。ハイ」


 だからその責めるような目線はやめてくれ!

 俺がげんなりしていると、突然目の前の土が盛り上がった。かと思うと地中から『何か』が飛び出し、俺たちの前に現れた。

 その姿は、頭がドリル。奇妙極まりない。


「––––居ました! 目撃情報とも一致しています」

「何だって!? とりま皇帝陛下はおさがりを……!」

「問題ない! 我ら竜族の体は人間よりはるかに頑丈だ! あんなヘンテコに遅れはとるまい!」


 委員長がマルス陛下に、手で下がるように促す。が、逆効果だった模様。

 それに相手だ。特徴のある頭に、そんなに変化のない体……間違いない。コイツ死面徒だ!


「開いた穴ぼこはこいつの仕業って訳か。確かに人ひとり入れるサイズだな」

「一体何をやっていたのか! 洗いざらい吐いてもらうぞ!」

「ええいこうなったら……オレを見たお前らも地獄へ送ってやる!」


 ドリル面徒は両腕を体の前でクロスさせ、高速回転。そのまま頭から俺たちの方に突っ込んでくる。


「皆散れ!」


 四方八方に飛び退く。今の陣形は、みんなでドリル面徒を囲っている形だ。

 内田くんがホルスターから銃を抜き出し、様子見なのか発砲する。


「甘いわぁ!」


 直立したまま高速回転し、エネルギー弾を易々と撥ね除ける。地面には潜らないが、回転したまま宙に浮きあがり、頭をこちらへ向け水平に突進。それしかできないのか。


 その後もドリル面徒の優勢が続く。ドリルという特性上、御嶽くんは積極的に守りにいけないし、宝物庫にあった武器でも有効打にはならないし、高橋さんの応援で何とかできる量を越えている。それぞれが生き残るだけで精一杯、そんな状況だった。


[ハル、何をボケっと見ているんだ! 今すぐ変身だ!]

「あ、ゴメン」


 荷物持ち時代のクセで見物に徹してしまった。反省しなければ。そもそも俺は対死面徒にはそれなりの経験がある。


「奇想転身っ!」


 変身を完了させた俺は、剣先をドリル面徒へ向け対峙する。


「ここからは俺が相手だッ!」

「ほう、やってみせろ!」


 威勢よく啖呵を切り、いざ幕開け。俺の剣とドリルが何度も交差し、火花を散らす。背を向けたと思うと後ろ回し蹴りを仕掛けてきた。ドリルせんのかい!

 でも攻撃は『見えている』。盾で防御するのは簡単だ。


「天宮、アレと互角に渡り合ってる……!」

「あれが魔法の力ってやつか……」


 そろそろ、必殺技ぶっぱしてもいい頃かな。いってみよー!


───────{2}───────


 ––––ショボッ。

 胴に一撃入れるとともに、すぐさま次の必殺技を撃つ体勢に入る。


───────{8}───────


 いい目だ。

 ドリル面徒は氷の中でも回り続けていたらしい。氷は内側から粉砕され、煌く破片が辺りに飛び散る。

 

───────{2}───────

───────{3}───────


 こちらへ飛んできた破片へ、連続で必殺技を発動。こういう破片に当てても、数字は進むんだな。乱数調整だ。


「やられるままだと思うなよ! ロケットドリルヘッドクラッシャー!!」


 ドリル面徒は今までの比じゃない回転数で向かってくる。ここを外したら大損害だな……。


───────{12}───────


 キタキタキタキタァーッ!!

 俺の方に飛んでくるドリル面徒だが、こうなった以上真正面から迎え撃ってやる!

 虹色に光を放つ剣と超速回転するドリルが激突し、迸るエネルギーはやがて爆発を起こす。それは俺が吹き飛ばされる程で、ドリル面徒がどうなっているか確認する術はない。けれど、手ごたえは確かに感じた。


「やったか……?」


 不意に言葉を漏らした委員長の隣で、内田くんはバツが悪そうな顔をしている。

 徐々に煙が晴れ、向こう側––––ドリル面徒の様子が露になる。


 ……誰も居ないじゃん。やったぜ。


「お前そこそこ戦えるじゃねーかよ!」

「へへっ。いえーい」ピースピース

「けど、なんか悔しいな。あそこまであっさり片付けられちゃうとなぁ」

「まあそれは仕方ないんじゃない? 私たちも、互いにできない事を補い合ってるんだし」

「今回はピン刺ししてたカードが偶然メタ能力持ちだったから噛み合った形じゃねーの?」

「まあまあ。とにかく、今は喜んでも罰は当たらないでしょ」

「それもそっか! よし、胴上げすっぞ!!」


 え。

 唖然としてる間に俺は囲まれ、いつの間にか胴上げされる側へ。


「「「「天宮ワッショイ! 天宮ワッショイ!」」」」

ハーゲンというのは、ドイツ圏での男性名です。そして竜人族は出生率が低く、きょうだいが生まれるのは本当に稀な事でもあります。さらにエルツォーンは男性主権が強めです。

だから、弟が生まれるまでは男として育てられてきたんですね。

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