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第19話 畑荒らしをとっちめろ

ユニークアクセス数が1000を越えました。嬉しいです。


 突然だが、うちのクラスは畑を持っている。クラス全体の所有物という訳だ。

 そこでは、大豆みたいな作物や芋を主に作っている。


 今日の俺の仕事は、この畑の手入れをする事だ。

 ミロアさんとサヴァちゃんを連れ、3人で畑に向かっている。


 ミロアさんは花茎族で、植物についてはめっぽう強い。サヴァちゃんには『水適正』があるから、水やりもラクラクだ。で、2人をまとめる俺。農業に関しては最強の人選だな。


 クラスの拠点となってる喫茶店から、歩いて十数分。例の畑に俺たちはやって来た。

 ミロアさんにはボトルに入った水を持たせてるし、近くにきれいな水路もあるから、水の心配はしなくていいだろう。熱中症にでもなったら大変だ。


 俺はミロアさんやサヴァちゃんみたいな特技は無いし、地道に雑草でも抜きましょうかね。

 そんな事を考えてる俺の目に飛び込んできたのは、無残にも荒らされた畑の姿だった。


「これは……どうなってるッスか!?」

「そんな……!」


 どうすっぺ。クラスに伝えたら、俺のドジでこうなったと受け止められかねない。けど、『伝えない』っていう選択肢は無いな。


「とにかく生き残ってる株を探しましょう! 話はそれからよ!」


 ミロアさんの顔つきがいつになく真剣だ。やっぱり、同族意識ってのがあるのかな。

 とはいえ、


「俺ってば農業素人だから、どれがダメでどれがいいかなんてわからん! のでクラスに助け呼んでくる!」

「あ! 自分も行くッス!」


 カフェ『セイヴァーズ』まで、全力ダッシュだ!


 移動シーンはカットで。


 営業中なので、俺が入るのは裏口から。なるべくみんなに伝わるように、大きな声で話しかけよう。


「大変大変! とにかく大変なことが起こったんだ!」

「どうした天宮。そんな興奮して」

「まずは落ち着いて。ひっひっふーだよ、ひっひっふー」

「ラマーズ呼吸法じゃないか。あれって何か意味あるの?」

「知らんけど」

「女子なら何か知ってんじゃね?」

「どうなのクラスの女子ーズ」

「ちょっと!? それ、セクハラだかんね!」

「男子サイテー」


 収拾がつかねえ。うちのクラスってば元気ダナー。


「ねえ天宮君、よかったら僕を現場に連れてってくれない?」

「え? いいけど……」


 俺にそう持ち掛けてきたのは、このクラスで1番動物や植物については詳しい定禅寺くんだ。ついたあだ名は動物博士。


「痕跡があるのなら、必ず原因は突きとめられる!」

「その通りだ定禅寺。俺も同行する」

「花京院」


 定禅寺くんの隣に立ったのは、クールで眼鏡な論理派、花京院くん。データを扱うのが趣味だとか。きみってば本当に高校生?


 メンツも揃った事だし、いよいよ畑へいざ鎌倉。

 さ あ 行 こ う ぜ 。


「ほんじゃ、行ってきま~す」

「留守は任せとけ! 委員長たちにも連絡しとくからよ!」


 サヴァちゃんは……ついてきてるな。ヨシ!


 小走りでなるべく急いだけど、移動シーンはカット。


「花茎族に伝わるやり方で処置はしたけれど……正直、あの子たちの生命力に賭けるしかないわ」


 大手術を終えた医者が言いそうなセリフだ。

 畑の隅を見れば、もうダメだと判断されたであろう野菜が転がっている。定禅寺くんと花京院くんは、わずかな痕跡も見逃すまいと調査をしている。葉っぱに残された跡だったり、土に残った足跡だったり。


 俺らは定禅寺くんたちの邪魔にならないよう、畑から出て話し合っていた。


「しかし、誰がやったんだろうな。クマかシカかイノシシかサルか?」

「でも王都は城壁で囲まれてるわ。たとえ狂暴になってるとは言え、野生動物がそう簡単に侵入できるかしら?」

「海藻の場合は貝やヒトデッスけど、たった一晩で移動できるとは思えないッス」


 まあでも、何もなくなるよりは、少しでも残ってる方がずっと良い。

 そう結論付けた時だった。畑から、定禅寺くんと花京院くんが、渋い顔をして出てきたのは。


「2人とも、何か分かったの?」

「その逆だ。全く分からん」


 そんな……。クラスの中でも頭脳明晰で論理派な花京院でも分からないなんて。

 詰んだな?


 絶望的な雰囲気を察したのか、花京院くんは言葉を続ける。


「葉についてる歯型も調べたが、既存の動物と一致しない。だが人間がやったにしては、痕跡が大きすぎる」

「土もそうだね。根っこより深くまで穴掘りする動物、聞いた事ないよ」

「だがこれで何歩も前進だ。『分からない』という事が『分かった』のだからな」

「そんな事言っても、ただカッコつけてるだけじゃないッスか」


 サヴァちゃんなんて事言うの。ほら、花京院くんの顔も強張ってるじゃない。


「あまり考えて生きてこなかった自分が言うのもアレッスけど、記録が無いからって考えるのを止めるなんて、そんなの上書きして考え直せばいいだけじゃないッスか。そんなのも出来ないんなら、記録を扱うなんてやめた方がいいッス」

「こいつめ言わせておけば……!」


 花京院くんから怒りのオーラが立ち上っているのが見える。しかも頭から湯気が出ちゃってるよ。怖っ、近寄らんとこ……。


「ああ分かったよ! そこまで言うならな、俺も本気でやってやるよ!!」


 花京院くんがとうとうキレた。でも結構クレバーな感じで現場を調べている。


「確かに、ここは全く未知の場所。今までのデータが通用しないなら、これから積み上げていきましょう」


 そう言って定禅寺くんも立ち上がる。


 サヴァちゃんの口が悪かったのも確かだけど、それが無ければ花京院くんはやる気にならなかっただろうし……うーん、コレは結果オーライ!


 花京院くんは『話しかけんな』オーラが全開なので、定禅寺くんの方を見てみるか。

 ミロアさんに聞き込みをしている。


「あの、作物の処置をしたのはあなたですよね?」

「ええ。そうだけど……」

「あなたが手当てする前の作物の様子を、僕に詳しく伝えてくれませんか?」

「分かったわ。私でよければ」


 ミロアさんも協力的だ。多分、ミロアさんも作物を荒らした犯人が知りたいんじゃないかな。


「作物は、葉っぱだけが食害に遭ってたわ。あと気になる事と言えば……そう、放っておけば根が腐りそうになるぐらいの水が土に含まれていたわね」

「そんな大量の水が……!」


 なるほど。犯人は水を操る事ができるわけか。…………何のために畑を水浸しにしたんだ? 

 わからん。


 俺が頭をかしげていると、畑にやって来た新たな人影。あれは委員長たちだ。息を切らしながらこちらにやって来る。


「管理してるっ、ぜぇ、畑が荒らされたってっ、はぁ、本当なのか!?」


 委員長が必死の形相で聞いてきた。ちょっとビビるわ。顔も青いし。


「本当だよ。根っこよち深い位置まで掘られてるし、畑もずぶぬれだ」

「……それって、最近頻発してる被害と同じ!」

「え! 王都の外の畑でも、これと同じ状況の被害が!?」

「ああ。それに役所仕事も早いもんで、もう居場所が判明したらしく、俺達のとこに討伐令状が来てな。これから行くところなんだよ」

「手塩にかけて育てた作物が荒らされるなど言語道断! 我らが必ずや討ち取ってくれるわ!」

「そーだそーだ! お肉ばっかりじゃ栄養バランスが悪いじゃない!」


 女子2名も相当怒っているらしい。高橋さんは可愛げがあるけど、涌谷さんの方は、もう恐ろしくて、気を抜けばちびってしまいそうだ。背後に般若のお面が見えるし。


 あ、待って!


「それ、俺も行かせてください!」

「天宮が?」


 そう。俺だって変身すれば戦えるし、クラスの為にもなる。


「私も行きたいわ。あの子たちの仇を取る為にも……!」

「2人が行くなら、自分も行くッス!」


 おお、さらに心強い!


「さて、どうする。委員長?」

「どうするって言われても……とりあえず、どうやって戦うのか教えて欲しいな」

「OK!!」


 俺は内田くんと委員長に、俺とミロアさんとサヴァちゃんが、それぞれ何が出来るのかを話した。


「成程な。シーフタイプのアタッカーにデバフ係か。水適正と氷適正の相性も良い……運ゲーはともかく遠距離攻撃を反射できる、か。良いのが揃ってるじゃないか!」

「という事は……!」

「ああ! 連れてってもいいんじゃねーのか? 委員長!」

「内田くんがそう言うなら……皆も異論は無い?」


 他のみんなも、俺たちがついて行くのに反対しなかった。待ってろよ真犯人、俺たちのやるせなさを全部ぶつけてやる!


「犯人は大勢の人の生きる糧を奪った。きっちりデータを取ってから仕留めてこい」

「戦えない僕達の分まで戦ってくれ! あ。あと、もしよかったらどんな動物が犯人だったか詳しく教えてくれない?」


 花京院くん、定禅寺くんも……!

 これは、負けられない戦いになったぞ。


* * *


 王都を出てから体感45分くらい歩いたところまで来た。

 こんな森の中だから、きっと畑荒らしの犯人はでっかいクマ……。クマって100mを6秒で走るパワーがあるらしいからな。俺は変身前だと50mを9秒だから……変身しないと詰んでるやんけ。


「そういや御嶽くん、武器かえた?」

「ああ。しかも俺だけじゃないぞ、5人全員だ。王都の宝物庫に眠っていた代物で、古代文明の技術を再現して作られたらしい」


 御嶽くんの新しい武器は、大きな盾。内田くんの武器はより銃に近いデザインになってるし、委員長なんかはナックルグローブを身に着けてる。あんま委員長がステゴロするイメージないなぁ。

 もしかして古代文明って、俺が調べてる遺跡の年代なのかな。なんかそんな気がする。今度の調査する時、頭の隅にでも置いて置こう。


 しっかし、進んでもそれっぽいシルエットは見つからないなぁ。ホントにここに居るの?


「こんな森の中に、本当にいるッスかね?」

「見て。葉っぱも、誰かに食べられてるみたい。この辺一帯、みんなそうよ」

「それになぎ倒されてる木まであるじゃない……どんな巨体なのよ」

「あら本当! 急いで手当てしなくちゃ!」


 ミロアさんはなぎ倒された木へ駆け寄り、薬をはけで切り口に塗ってゆく。花茎族に伝わるやり方――熱した貝殻を砕いたものを水に溶かす――で作った薬らしい。


「あんな気をなぎ倒すとあれば、軽く10mはありそうだぜ……」


 10m級のクマかぁ……詰んだな?


「見つけた!」


 指さされた方を見てみると、巨大生物がそこにいた。

 イボの付いた8本の足。褐色のボディ。そして前面の2本の足の先にはハサミ付き。


 どう見てもカニさんやんけ!

 しかもあの具合はタラバガニだ!


 しかし、カニさんがあの城壁を乗り越えられるもんなのかね?

 疑問に感じていると、巨大タラバガニもこちらに気づいたらしい。ハサミを振り上げ、叩きつけようとしている。


「自分が行くッス!」


 サヴァちゃんが『水適正』で作り出した水流に乗り、手首と足首から生えるヒレで斬りつける。


 突撃してくるサヴァちゃんを認識した巨大タラバは、甲羅の側面にある穴から勢いよく水を噴射し、上空でホバリングを始めた。


「カニが空を飛ぶなぁ!!」


 委員長のツッコミが光る。あんな事ができるなら、城壁を越えて王都へ侵入する事ができるだろう。


「深くまで掘られた穴は、飛ぶときにできた、だからびしょ濡れだったって訳かよ!!」

「瀬良ちゃん! あれって凍らす事できる!?」

「水の勢いが強いうえに蟹も遠い。すまぬが出来そうにない!」


 なんてこったい。だがこういう時こそ、俺っていう人間が光るターンだ。さて、俺も行きますかね。


「奇想、転身ッ!」


 今回は、セリフに少し『タメ』を作ってみました。気合の入り方がまるで違います。

 では、まず景気づけに1発。


───────{4}───────


 悪くないけど、そんなに良くもない。そして目が出た時点でふと気づく。どうやって当てればよいのだろうか、と。


[飛ぶぞハル! 『ルートベ・タラリア』!]


 これがあったか。では乗り込みいざ出撃。見た限り日本の土地ではないから、ノーヘル運転しても罪には問われないのだ。

 足に1撃与えたけれど、殻が硬くてろくに通らない。


 しかし涌谷さんが言っていたように水の流れが凄い強い。さっきその辺の石ころ投げ込んでみたら、ほんの一瞬で消えちゃったもん。もしあれが自分だったらって考えると……おっかねえや。


 お腹側に潜り込もうにも、カニさんの警戒が強くて上手くいかない。それに下方向だけじゃなく、横方向にも水を噴射して素早く移動できるのだからかなり厄介だ。濡れてる俺がその証拠。

 さっきは横方向だったから無事だったものの、運ゲーの準備してる間に叩きつけられてはたまったもんじゃない。

 でも俺には運ゲーしかない。やってやるよ!


───────{5}───────


 電撃か。結構いいじゃないか。

 あの水流に当てれば、電気が本体にも伝わって隙ができる筈だ。そういう仕掛けのゲームってあるよね。

 だけど近づくにしろ勢いが強い。何とか遠距離から攻撃を届かせる方法……そうだ!


「そぉれっ!」


 それ即ち投擲。ハナメガネ面徒にやったように、水流に向けてヴィブジョーソードを思いっきり投げつける。

 電気は水流を伝い、カニさん本体へ届いた!


『~!!』


 そしてカニさんは痺れて落下する。落下地点では、ミロアさんが花粉のボールをカニさんへ投げつけていた。これで、さらに行動を妨害できる。グッジョブ!


 ひと仕事終えた俺は地面へ近づき、ファルから飛び降りた。


「よくやった天宮! 今なら運ゲーでもなんでも、やりたい放題だぞ!」

「あーその、ごめん。剣ないわ」

「天宮ああああああああああああ!!!!????」


 内田くんが絶叫のあまり、脳天が地面にくっつく程エビぞりしてしまった。

 手から離れたヴィブジョーソードを探すにしても、今見てる視界には無いし、どうしよう。


「……しゃーない。委員長、俺達で決めるぞ!」

「分かった!」


 委員長が手を掲げると、他の4人も同じく手を掲げた。何が始まるんです?


『5人の武器を1つに!』


 掛け声に合わせてそれぞれの武器は独りでに手を離れ、空中で変形・合体し、巨大な刀になった。


『キューセイブレード!』


 宙に浮く巨大な刀目掛けて委員長は走りだす。御嶽くん高橋さん内田くん涌谷さんが腕を組んで作ったジャンプ台で、一気に跳び上がり刀の柄を掴んだ!


「ダイナミック・エンド!」


 委員長が振り下ろすとともに、不思議な事に刀の刃が伸びてゆく。振り下ろされた刃はそのままカニさんの甲羅、まるで溶けかけのバターであるかのように容易く切り裂き、一瞬で絶命させた。

 俺の必殺技よりスゲェや。


 ともかく、農作物に被害を出していた元凶は討たれた。

 この日の夕食は、みんな静かでした。

次回から新展開です。

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