第17話 再開だなんてボクのチャートに無いぞ!
(この作品はRTAじゃ)ないです。
前略。馬車を間違えて王都ビギニアへ逆戻りでござる。
無駄な混乱は避けるために、もし俺のクラスメイトと出会っても素性は隠しておこう。
けど、クラスメイトは王城で匿われてるみたいだし、こんな街中でばったり出くわす事なんてあるのかな。
久しぶりの街並み。今歩いているのは商店街みたいだけど、あいにく俺たちの所持金に余裕はない。
え? 『馬車に乗った時の所持金でギリギリだっただろ』って?
それがね、道中の拾いものや譲り受けた品を王都で売ったらそれなりの小銭にはなったんだ。はやくリッチになりた~い。
最近の物価から推測すると、ミロアさん用のお水を注文しただけで全額吹っ飛んでしまいそうだ。ぴえん。
さてさてやって来ましたのは、最近ウワサの喫茶店。その名も『セイヴァーズ』。いざドアを開けよう。
「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」
「おっ本田くんじゃん何やってんの?」
「……ん?」
あ、やっべ。
「お前、どうして俺っちの事知ってるんだ?」
「ナ、ナンデダロウナ~。ワタシココニハジメテキタカラワカラナイナ~」
「誰かしら? ハルの知り合い?」
「そうなんスかハルさん!」
「お前、名前『ハル』っていうのか。…………むむっ」
なんてこと言うのミロアさん。サヴァちゃんも。
ホラ見てよ、本田くんの目つきが険しくなってるじゃん。
「なあお前、1つ聞いてもいいか?」
「な、なんでもどうぞ」
丁度いい。ここでしらばっくれれば俺の勝ちだ!
「じゃあ行くぞ! 今までに取ったテストの最低点は!?」
「2点!!」
化学のテストは強敵だったよ……。授業を休んだ事なんて無かったのに。
俺が素直に答えたら、本田くんが信じられないものを見るような目を向けてきた。なんだよその目は。俺だって2点を取りたくて取ったわけじゃないんだぞ。
「おまっ……マジで天宮かよおおおおおおおおおおおおおおお!?」
あっあっやめてくださいよ。そんな大声で叫んだら……。
「えーウソ!? 天宮って生きてたの!?」
「でもさ、本田の前に居るの女の子じゃん。もしかして美人局なんじゃ」
「うわ……おっぱい揉めそう」
「何か考えてそうで何も考えてなさそうな顔してんな。ホントに天宮かよ」
「天宮!? 殺されたんじゃ……」
「いや待て、あの孤独なSilhouetteは……」
「これマジ? 上半身に比べて下半身がムチムチ過ぎるだろ……」
天宮イヤーは地獄耳。外野聞こえてんぞ。
ほらー人集まって来ちゃったじゃん。こんな大勢に注目されるのは、その、緊張する。
「どうしますかホールチーフ」
「そうだな……とりあえず、営業終了までバックヤードに置いとこう。うん、それで決定」
決まったら早いもので、俺たちはあれよあれよという間に、裏のスタッフルームへ連行された。
質問! 待ってる間にご飯は出ますか?
腹の具合を考えてたら、ミロアさんが獲物を見つけた目つきをこちらに向けてきた。
「さっきの人たち全員、ハルの知り合いなのかしら!?」
「スゲーッス! あんなにたくさんの知り合いがいるなんてマジパネーッス!」
勘違いをしていた。どうやら、こちらが質問される側だったようだ。
やがて、本日分の営業が終わり、俺はクラスからの質問の矢面に立たされるのだった。
「じゃあ、本当に天宮晴本人だっていうのか?」
「これを見てもらった方が早いんじゃないかな?」
俺が差し出したのは、所持していたクラスカード。今まで肌身離さず持っていたので、落とした事なんてそうそう無い。
「……なんか変な項目が無いか?」
「? どれどれ」
─────────────────
天宮晴人間 16歳
技能
・一般四則演算
・一般文章読解
・無垢の器
・光の魔法
─────────────────
本当だ。技能欄に『光の魔法』という項目が増えている。いつの間に。
「魔法って……適正とは違うの?」
「違うらしいけど、俺にも違いはよく分からんな」
「こればっかりは涌谷さんがいないと、どうにもならないな」
そういえば、委員長や御嶽くん、高橋さんたちはどうしてるんだろう。迷惑かけちゃってるだろうし、今度会ったらいっぱい謝らないと。
特に心配なのは、世話焼きな高橋さんだ。あんな性格だし、責任に押しつぶされてないといいんだけど。
今頃、別室にいるミロアさんとサヴァちゃんは、質問攻めにされてるだろうな。初めて出会ったファンタジーな種族だから、興奮してしまうのも無理はないか。
暇な時間をうとうとしながら過ごしていた俺は、勢いよく開いたドアの音に驚いて、思わず立ち上がりそうになった。何事!?
「死んだはずの天宮が、女の子になって帰ってきたって本当なのか!?」
あ、先生!
先生なら遺跡についても大学で勉強していたかもしれない。せっかくだから聞いてみよう。
「俺、国語の教師なの。厳密に言えば、大学の専攻は古文だったんだけどね」
うーん、残念。結局、自分の力で解き明かすしかないかぁ……。
「お。アイツらも戻ってきたみたいだな」
ドアの方へ顔を向けると、委員長を先頭にして涌谷さんに御嶽くん、内田くんと高橋さんが部屋に入ってきた。
全員俺の事を怪しげな目で見ている。
「先生。彼女が、本当に天宮本人なんですか?」
「信じられないかもしれんが、正真正銘の天宮晴だ。天宮のテスト最低点数をピタリと言い当てたからな」
怪しげな目から一転。視線に籠った気持ちは、俺にはあまり汲みとれないけど、俺がやらなきゃいけない事だけは理解している。
「えっと……その……今まで黙っててごめんなさい!」
すなわち、全力での謝罪。『連絡手段が無かった』だの、わざわざ言い訳する気はない。
重い沈黙が続く。俺、許してもらえるかな。ちょっと不安になってきた……。
「顔上げて」
この声は、高橋さんのものだ。抑揚はついてないけど、何となくわかる。
高橋さんの言う通りに動いたら、頬をはたかれた。スナップのきいたいいビンタだ。
ウデプシーからくらったガチビンタよりは痛くないけれど、それ以上に心に来る。迷惑をかけたのだろうから、甘んじて受けとめよう。
「もうバカ! バカバカバカバカ! もひとつおまけにバカ!! そんでもってかなりのアホ!!」
ええ……そんなにボロクソ言う必要ある?
これじゃあさすがの圧倒的光属性鋼メンタルな俺でも涙が出ちゃうよ。
ていうか涙を流してるの高橋さんの方じゃん。それだけ俺が心配かけてたって事かぁ。本当に申し訳なく思っております。はい。
「……ちょっと言いすぎちゃったわ。ごめんなさい」
「なんで高橋さんが謝るのさ。今謝ってるのは俺なんだよ!?」
「ふふ。そうだったわ」
高橋さんに余裕が戻った。さっきの事は水に流そう。めでたしめでたし。
それにしても、さっきから立ちっぱなしの御嶽くんたちが気になる。何か言いたいのなら言ってもいいのよ?
「……あの、なんか大人しいんですけど、どうかした?」
「まあ、言いたい事は全部高橋が代弁してくれたからな」
「恵に全部取られたっつーか、そんな感じ?」
「それに、我らは同じ学徒で同じ学級よ。仲間に追い打ちを仕掛ける真似はするまい」
「強いて言うなら、もっと早く無事を知らせてほしかったね。点呼の時とか、雰囲気が重くて仕方なかったんだ」
こんな俺でも受け入れてくれるだなんて……うう、みんながあったけぇ。あったけよぉ……。
「はぁぁぁぁ……。やっと解放されたッスよ。疲れたッス~」
「このお店で働いてる人、皆名前の法則が同じような感じなのね!? もしかして同郷なのかしら?」
「ミロアさんは、この通りピンピンツヤツヤしてるッスけど」
2人ともお帰り。
あれからずっと俺についてきてるけど、これからどうしよう。先生に相談してみるか。
「先生、この2人……ミロアさんとサヴァちゃんっていうんですけど、どうしましょう?」
「えっと、天宮との関係は?」
「旅してたらついてきた」
「未知の謎を追い求める仲間よ!」ニュッ
「自分は旅のオトモッス!」ニュッ
「えぇ……」
なんてことだ。3人とも認識がバラバラじゃないか。先生も戸惑ってらっしゃるよ。ここは誰かに合わせるべきか?
いや、いっその事全部まとめてしまおう!
「えーと、結局どんな関係なの?」
「未知の謎を追い求める旅をしてたらついてきたオトモたちです!」
「こらこら、纏めるんじゃないよ」
叱られちゃった☆
「にしてもどうするんですか先生。僕たちこんなファンタジー世界観マシマシな人に出会うのなんて初めてですよ」
「先生だって人生初だってば。法律に詳しそうで他国との交流もある人……国王にでも聞いてみるか?」
「え゛。私達の事、この国の王様に話すの?」
「どしたのミロアさん。何かマズい事でも抱えてんの?」
「えっとこれは……そう! 花茎族って言わば引き籠り連中だから、残ってる記録が少ないのよ! あまり当てにできないと思うわ」
「そう……。じゃあ僕らクラス委員で勝手に決めますか」
「ふむ。ならばお二方は客人としてもてなすというのはどうだ?」
「確かに、この店はちょっとした宿を譲り受けて改装したものだし。ていうかクラス全員が寝泊まりしてるし、何なら空き部屋も1部屋くらいならある。そこを3人で使ってもらうって事なら、何とかなるね。よし決定」
「メモメモ……2人はお客さん、と」
なんと俺たちは1つの部屋に押し込められる事になった。ちょっと待てや。こちとら中身は男子高校生ぞ? 男女が同室とはどうかと思いますがね。
「じゃあ、天宮は男子と一緒の部屋にする?」
『えぇ~……』
今度は男子生徒陣から落胆の声が。なんでや、自分で言うのもアレだけどすっごい美少女だよ?
「チェンジで」
「美少女でも中身が天宮だと思うと…‥ちょっと」
「なんかの間違いでヤったら性病と一緒にバカまでうつりそう」
「ぼく知ってるよ、女性にTSした男子は無防備なシーンが多いって。万が一意識したらどう責任取ってくれるんじゃい!」
「お前らボロクソ言いすぎだろ。あれでも黙ってれば美人……ごめん、やっぱ無理だわ。黙っててもアホさがにじみ出てる」
おいコラ。俺だってまだ未経験なんだぞ。それにみんな好き勝手言ってやがるよぉ……。
結局俺はミロアさんとサヴァちゃんと同室という事になった。俺の鋼の自制心はいつまで持つのやら。ご期待ください。
「えー、じゃあ、天宮と2人の処遇が決まったところで、本日も点呼取りまーす。番号1番から、相田さん」
「はい」
「次、天宮晴」
「はいっ!」
俺が挙手したら、何故か拍手が沸いた。昨日までの事を思えば、そんなに不思議ではないか。
やがて点呼は終わり、委員長が先生に報告しに行った。
「2年1組、全32名。欠員無しです!」
委員長が高らかに知らせると、部屋は歓声で満たされる。エプロンも宙を舞う始末だ。ちょっとちょっと、ここは大相撲じゃないってば。
「でもな、あれだけ心配かけた天宮が無罪放免てっのも納得いかないな」
「なら、何か『ペナルティ』ってのが必要だよね」
「はいはーい! 『この店でしばらくタダ働き』ってのはどうかな?」
「イイネ! じゃあそれでいこう! 委員長、何か言いたい事あるか?」
「えっと、僕からは特に何もないですね」
「決まりだな。天宮、明日からよろしくな!」
タダ働き……。ただでさえ懐が寒すぎてサムスになってるのに、タダ働き……?
嘘だそんな事ぉぉぉぉぉ!!
次回、ご奉仕するニャン♪




