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第15話 弩級猛牛大一番

主人公:ADHD系アホ

ミロア:世間知らず系アホ

サヴァ:単純にアホ


どーすんのコレ


 俺はミロアさんとサヴァちゃんを引きつれ、昨日開通させた遺跡の入り口に来ていた。


「ここが例の場所ッスか……」

「私達は初めてになるわね。気をつけておくべき点とか、ないかしら」

「野生動物が住み着いてるから、襲ってくるかも。それとファル、今回も光ってもらうからね。頼ってばかりでゴメン」

[問題ないさ。もとよりワタシは、キミをサポートするために存在するのだから]


 では行くぞー!


 海の近くだというのに、独特の磯臭さはなく、壁にフジツボも密集してはいない。どうなってるんだろう。

 お、あそこに何か発見。


「……ヤドカリ?」


 早速出会った第一野生動物は、大砲みたいなフジツボを背負ったヤドカリ。なんかこっちにフジツボ向けてません?


「うわっ冷たっっ!!」


 あいつめフジツボから水ぶっかけて来やがった! しかも勢いが強い!

 それによく見たらハサミもデカいな……。あれで殴られたら、かなり痛い事になるだろう。

 となると名前は、砲ヤドカリって所か?


「ハルさんに何するッスかー!」


 サヴァちゃんが自らの『水適正』で生み出した水流に乗り、両手首と両足首から生えているヒレで砲ヤドカリを切りつける。

 おお、速い。空中を激しく踊りながら戦ってるみたいだ。


 ん? やっべ。砲ヤドカリってばフジツボを思いっきりサヴァちゃんに向けてるではありませんか。あれはかなりのものだぞ(体験談)。


「! とうッ!」


 砲ヤドカリが放った水流も織り交ぜ、さらに加速して翻弄している。すごい。

 水の扱いではサヴァちゃんの方が、上かな? 上だよね?


 不利を悟ったのか、砲ヤドカリが嘶くと物陰から同じような砲ヤドカリがゾロゾロと這い出てくる。仲間がいたか!

 砲ヤドカリたちはサヴァちゃんではなく、こっちにフジツボを向けている。


「助けて! 私海水って飲むのも浴びるのも駄目なのよ!」


 叫びながら射線を遮ろうと物陰に隠れるミロアさん。草タイプなのに水タイプに弱いのか。というか本家もサブウェポンで返り討ちにされてしまうね。南無。


 仕方ない。ここは漢らしく、全部受け止めてやろうじゃないか!


 砲ヤドカリの、一斉砲撃!


「危ないッス!」


 窮地に陥った俺たちを見て、サヴァちゃんが『水適正』で水流を操った。寄り集まった水流は大きな波になり、砲ヤドカリを押し流す。

 ……正直この光景、あまり見たくはないな。


「助かったわ、ありがとうサヴァちゃん。あまり役に立てなくてごめんなさい……」

「どうってことないッス!」

「相性が悪かったんなら、仕方ないよね……」


 え! メジャーなタイプが4倍弱点だけのポケ〇ンでランクマを!?


 しっかし海の近くのある遺跡だっていうのに、苔もフジツボも付いてないよなぁ……何か神秘的なパワーが働いてるんでしょうか。せっかくならあやかりたい。あやかって12を出しまくりたい。


 道中の原生生物に時々お引き取り願いながら、俺たちはだいぶ奥まで進んできた。

 砲ヤドカリの他にも、足に吸盤じゃなくて棘が生えたタコだとか、ただひたすら大きいだけのナマコとかにも出会った。貴重な食糧だから無駄にしたくないので、殺してはいない。


 そんな訳でやってきました、遺跡のかなり奥。

 大物の気配がするけど、ここまでの原生生物の感じからして海の生き物かな。


『ブモオオオオオオォォォォォォ!!』


 頭から生えるは2本1対の雄々しいツノ。強靭なヒヅメが大地を蹴る。それに見てくださいよ、がっしりとしたこのボディ!


 どう見ても牛さんやないかい!


 いや、けど、最近魚や貝ばかりが続いてたし、本気のお肉を遠慮せず食べれるっていうのは……アリだな!


 調理方法はやっぱり牛丼……ダメだ、米が無い。

 普通にステーキでも美味しくいただけるか!


「かなり興奮しているわ。何かあったのかしら」

「2人とも見てくださいッス! あそこに何かめり込んでるッス!」

「あれは……なんてこった」


 俺が転がした鉄球!!


 牛さんの頭には大きなタンコブが出来てるし……もしかしてアレに当たっちゃった!?

 いや普通そうはならんやろ。


 と思ってたら牛さんが突っ込んで来たァ! ヤバイこのままだとあのツノに串刺しにされるゥ!


 ミロアさんとサヴァちゃんはそれぞれ左右に避けた。けど牛は俺を狙っている! すかさず体を横にして串刺しになるのを防ぐ。


 大成功。俺の身体は2本のツノの間に挟まる形になった。そして投げられた。空を飛んだ時はすごく怖かったです。


「わっとと! 大丈夫だったかしら?」


 落下する俺はミロアさんに受け止められた。しかも今の状況、いわゆる『お姫様抱っこ』になっている。

 ここからだと顔と顔の距離が近いよぉ。うわミロアさんまつ毛長っが。それにすごい。顔がいい。


 降ろされた後も、しばらく心がふわふわしている。

 俺がときめいてる間に、牛さんはこちらに猛突進してきた。サヴァちゃんが背中にしがみついてるけど、牛さんは、サヴァちゃんには興味が無いのかな?


 もしかして、ぶつかった鉄球から俺の匂いを感じ取っている?

 ヤダ~それなら制汗シートで体拭いておくべきだった~けどあの匂いは苦手なのよね~。


 あ、サヴァちゃんが振り落とされた。


「サヴァちゃん、大丈夫なの!?」

「まだ、ぜんぜん、平気ッス!!」


 そんなに平気じゃなさそう。

 暴れ回る牛さんと近接戦をやってたし、ロデオもやってたから、スタミナの底が見えている。

 ここまでも頼りきりだったからな~休ませた方がよさそう。


「サヴァちゃんは下がってて! ここは俺とミロアさんで何とかする!」

「でも! 自分はハルさんの仲間としてまだまだッスから、もっともっと頑張らないと!」

「何言ってる! ここまで頑張ってくれたじゃないか! それだけでも俺は十分満足だ! お疲れ様、後は任せとけ!」

「…………ヤバくなったらいつでも呼ぶッスよ!」


 牛さんとサヴァちゃんの間に割って入る俺たち。


「そうか! 何か作戦があるッスね!」

「いえ全然。ノープランでございます」


 俺の言葉にサヴァちゃんが崩れ落ちる。申し訳ないけど、俺にとってはよくある事なのよね。


「問題ないわ。私が居るんですもの」


 ミロアさん! 何か手があるんですね?


 俺とサヴァちゃんが期待の目で見る中、いきなりミロアさんが激しくヘッドバンキングを始めた。それに続けて、歌舞伎の連獅子みたいに頭を回す。

 Why!? 何故!? 気でも狂ったのかーっ!


 ひらひらと動くミロアさんの髪の毛が視界に入り、牛さんは大興奮。ここだけ抜き出すと、何か性癖がヤバい人みたいだ。

 さておき、牛さんはミロアさんに向かって突進。あのままじゃミロアさんが危ない!!


 思わず目を瞑ったけど、何時まで経ってもミロアさんの悲鳴は聞こえなかった。

 びくびくしながらも目を開けてみると、そこにはミロアさんの前で立ち止まっている牛さんが!


「私の花粉、死面徒にはあまり効かなかったけれど、普通の動物には効き目バツグンよ♪」


 なるほど。さっきの激しい動きは花粉を撒き散らすためだったのか。

 おお、牛さんがみるみるうちに弱まってゆく。


「眠らせただけだったけど、これで充分よね?」

「もちろん、バッチリだ!」


 でも毒物を摂取した牛肉ってどうなんだろう。食べたら危ないかも。

 それに血抜きをしないと、あまり美味しく味わえないんだっけ? ジビエに関しては詳しく知らないや。

 中途半端な知恵と技術でお腹を壊しては大変だ。残念だけど、今回はお肉を諦めるしかないか……。


 さて、それでは碑文探しだ。

 取り敢えず目についた扉を開けると、そこには祭壇と碑文が佇んでいた。


 これも結構読めそうだな。どれどれ……


 『やがて大地は災禍に相次いで見舞われ、大勢の人が命を落とした』


 神話とかにはあまり詳しくないんだけど、この災害をどうにかしたのが、今この大陸で信仰されているルファド様なんだろうな。


 しかし、この文の前後がグラージュで見つけた碑文と繋がらない。順番はバラバラって訳か。地道に全文を探すしかなさそうだ。


 収穫はあった。そろそろ帰ろう。


* * *


 この森を越えたら、パラデイオーは近い。次はどこに行こうかな。2人に聞いてみよう。


「なあ、次ってどこ行く?」

「コートクランから海を越えたらジャッポジア、万年雪のフェーリ山脈を越えたら雪と氷の国ハロデヌィよ」

「どっちも道のりが険しいッスね……」


 潮風と寒冷地。ミロアさんは長期間の船旅は無理っぽいし、寒さに対する準備なんて整ってない。


 頭を抱えながら進んでいると、俺の前にはメイちゃんの姿が。


「また? 何か俺に言いたい事あるなら、簡単にどうぞ」

「そうね、私と戦いなさい」


 ……はい?


「あなたも構えなさい。チェンジ・ダークネス!」


 …………??????????

 目の前の出来事に追いつけないでいると、メイちゃんが斬りかかってきた。


「うわっ! いきなり何するんだよ!?」

「このまま死にたくなければチェンジしなさい!」


 俺が困惑してる間も絶え間なく攻撃し続けるメイちゃん。これ、『いいえ』を選ぶと会話がループするパターン?

 たまに『いいえ』を選んでもそのまま続くタイプのゲームがあるから注意なのよね。セーブデータを忘れずに(1敗)。


 んで、何の話だっけ?


[ハル、チェンジするんだ。カノジョの気持ちには、キミでしか応える事ができない]

「それなら、まあ。え、えっと、奇想転身」


 チェンジし終えると、一瞬で寄られて斬られそうになる。

 相変わらず剣筋が鋭い……!

 けど、以前よりは見えている! だから盾でなんとか防げてる!


 ああクソ一撃が重い! あんな細っそい体のどこにそんなパワーがあるって……それも魔法か。


 このままだと突破口は見えない……ならば!


「いくぞ! 友情合体!!」


 とうっ!

 俺は跳び上がり、ミロアさんとサヴァちゃんが組んだ騎馬の上に着地する。


「乗っただけじゃない!!」

「はああっ!」

「しかもすぐ飛び降りた! 乗った意味は!?」


 位置エネルギーDA☆


 外れちゃったけど、地面がくぼむほどの威力。まともに当たってたらヤバかったな……。


「強くなってる……どうして? 前はこんなに強くなかったはずなのに!?」

「俺も知りてー!」


 横薙ぎ一閃。

 バックステップで避けられたが、俺とメイちゃんの間には距離が出来た。


[己というありのままを解放した今なら、新しい魔法が使えるハズだ!]

「新しい魔法!? どうやって使うんだよ!」

[呪文はキミの頭の中に浮かんでくる!]


 あ、なんか今来た!


 よーし。んじゃ、早速やってみっか。


「何をしようとも無駄よ!」


 メイちゃんは闇色の球体を周囲に浮かべている。多分あれを撃ってくるつもりだ。

 お? だとしたらこれは? ピッタリなんじゃないか?


 盾を構え、呪文を唱える。

 呪文と言っても、何かの技の名前みたいな感じだけど。


「『リフシールド』!」


 盾の表面が鮮やかな光沢を帯びた。まるで鏡みたいだ。

 光の球は反射され、メイちゃんへ飛んで行く。飛び道具を反射とは、結構便利じゃないか。


 結果は上出来。面白いくらいに全部の球がはね返り命中した。


「認めない……!」


 メイちゃんが美少女にあるまじき怖い顔で何か呟いている。とてつもない『スゴあじ』を感じる。


「お前が彼女らの後を継ぐものだなんて、認めるものか!」


 えぇ……。何か知ってるっぽいけど、その為だけに俺ってばやっかまれてたの?

 なーんか萎えちゃう。モチベがどこかへ飛んでいくのが分かる。


「はぁ~(クソデカため息) やめよやめよ。こんなのやっててもあほくさいだけだし」

「阿保くさっ……!?」

「そういやお金無いんだったわ。あー、ミロアさんサヴァちゃん、さっきの基地で売れそうなもの探してきてくんない? 俺も後で行くから」

「了解ッス! それじゃあ行くッスよー!」

「金目のものは片っ端から探し当てるのよ!」


 2人ともじゃあねー。

 問題は、貴金属のレートがよくわからん事だが。


「……は? 金? 金って、あのお金?」


 俺たちのやり取りを前にメイちゃんは、信じられないようなものでも見た時のような表情で固まっている。しかもプルプルと小刻みに震えている。どしたん?


「魔法少女の使命よりも、お金の方が大事だって言うの!?」

「Exactly」


 普通にお金の方が大事なんだが?

 死面徒と戦っても特別収入が出るわけでもないし、使命でご飯は食べられないのですよ。

 

 じゃあなんで、俺は死面徒と戦ってるかって?


 復讐は、ちょっと違う気がするな。かといって義務感で動いてるわけでもないし。うーん、まいったなぁ。


 とりあえず、俺がやりたい事を洗い出してみよう。


「死面徒の横暴を防ぐ……遺跡の碑文も全部集める……あと家に帰る……」


 見つけた……! これらに共通する項目!


「俺が戦う理由……それは、俺がやりたい事に繋がってるからだ!」


 どどーんと言い放つ。けど、メイちゃんからの反応はない。

 チャンス。


「ってなわけで俺はもう帰るよ。じゃーねー!」

[『ルートベ・タラリア』!]


 変形したファルに乗り、全速力でメイちゃんを振り切る。

 あばよとっつぁーん!


「ヤタ、追いかけるよ」

[待って。あんたが乗り始めてから日ぃ浅いんやさかい、事故でも起こしたら大変なことになる。やめとぉくれやす]

「ぐっ! ……覚えてろよ、光の魔法少女!」

※多分忘れます


コラム:{12}の効果

当たった対象を、あらゆる耐性や因果律を無視して破滅させる。

だから、人間相手では使えなかったんですね。

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