第11話 いざ潜入ミッション!
今更ですが、この作品のタイトルにもある『メガトンコイン』とは、確認不足によるやらかしを意味しています。
そこそこいい感じに葉っぱが付いた枝を手繰り寄せてロープで縛った簡単なテントで、俺たちは一晩を明かそうとしている。
葉っぱの隙間はスッカスカだし、雨など降らなければいいんだけど。それと、風通しが良すぎるのも考え物だね。
花茎族であるミロアさんの力を借りて、食べられる草や果実で飢えは凌いだ。植物から進化した花茎族は、何となくだが植物のことが分かるのだとか。
選んだ果実は結構甘くてジューシーでした。まだあったらジャムとかにして、トーストに塗って食べたい。絶対美味しいから。
もう日が沈んでだいぶ経つ。空には綺麗なお星さま。
俺はござみたいな布団で、猛反発まくらに頭を乗せて浅く眠っている。ミロアさんと二人で交代制で見張りを行っているからだ。野生動物が狂暴化しているって言うのも、よりその考えを後押しした。
羽衣母さん、お元気ですか。今頃そちらは大変なことになっているかと思いますが、俺こと天宮晴は元気です。
すでに父さんは居ないから、俺が死んだら羽衣母さんは一人ぼっちになる。だから、自ら命を捨てるような真似はしたくない。そう言えば、メイちゃんも分かってくれるかな。
おっといけない。星空のせいかノスタルジーな気分に浸ってしまった。そろそろ交代の時間だし、ミロアさんを呼びに行かねば。
「ミロアさ~ん、そろそろ交代……」
あれ……?
ミロアさんがいなくなってる。もしかすると、また迷子になっているのかも。探しに行かなきゃ。
でも外は暗いし怖いよ。この前みたいにファルにランタン代わりになってもらおう。
「てな訳で、ファルさんお願いできますか?」
[これもパートナーの務め、仕方ないか]
ゑ、ウソ。ファルってば俺の事そう思ってたんだ。こっちとしては、魔法の力をくれた喋るレリーフ1号なのだが。
まあいい。とにかくミロアさんを探しにレッツゴー!
[……! ハル、あれを見てくれ!]
「? どれだよ」
[道端だ。道端の草が、不自然に結ばれている]
「おーほんとだ。……ん? しかもこれ先にもあるじゃん」
[だとするとこれは、ダレかが残したメッセージ!]
俺は結ばれた道草を追いかけて夜の森を歩く。この方向にずっと進んでいくとなると、やがて海に出そうだ。
(いたいた! こっちよ、こっち!)
探してる俺に届く声。だけど小さいから、どこから来ているのかが分かり辛い。
しばらく耳を澄ませながら周囲を眺めていると、小刻みに手招いているミロアさんと目が合った。
「ミロアさん!? どうしてここに……」
「見張ってたら人が通るのを見たから、追いかけてきたのよ。草を結んだ目印、役に立ったかしら?」
「あれはミロアさんが……。うん、大助かりだったよ」
「そう♪ なら良かったわ。……ふぁ~あぁ……」
「もしかすると、眠い?」
「元が植物だからかしら。夜には弱いのよね」
そう言って目を擦るミロアさんの足元には、空っぽの栄養剤の瓶が何本も転がっている。ここだけ見れば、エナジードリンクをがぶ飲みした人みたいだよな。ヤバイ。
「にしても、よくこんな暗い中追いかけれましたね」
「根っこに伝わってきた振動を教えてもらったの♪ 花茎族にしかできないわよ」
「この先には岩だらけの海岸があるの。その割れ目に入っていったわ」
森を抜けるとすぐ海岸。崖の大きな隙間を、ミロアさんは指した。狭いけど、俺たちも入る事ができそうだ。
さあ、いざ突入!
* * *
岩壁の割れ目から入った空間は、どこからどう見ても人工物だった。しかも苔とか浸食とかはされてないから結構新しめ。
パッと目につくのは、壁に設置されているボタン。台座は黒と黄色のシマシマ模様で、ボタン自体は赤い色をしている。
「あら、やっぱりハルもそれが気になるの? いったい何かしらね、このボタン」
「他に目立つ物はここに無いし、こういう時はボタンを押すに限るね。じゃ、ここは俺が……」
「えーヤダー! 私も押してみたーい!」
[待つんだ2人とも。それが何のボタンかは分からない、なるべく押さないようにしなくてはね]
「「ゑ?」」ボタンポチー
[もう押してるー!?]
《緊急警報発令!》《緊急警報発令!》《緊急警報発令!》
《エリア13にて異常を確認! 各自配置につき、異常に備えよ》
けたたましく鳴り響くサイレンと繰り返されるアナウンス。まあやって来た作業員に「間違って押しちゃいました」って謝れば大丈夫か。
通路の奥からやって来たのは、もうすっかり見慣れた全身タイツ。ネガルディアの下っ端、ビリーだった。謝ったら許してくれるかな。
それに通路の奥からだけじゃない。壁から。床から。天井から。どんどんビリーが這い出てくる。
俺たちはすっかりビリーに囲まれてしまった。
「こうなったら、やるしかない! ミロアさんも準備はいい!?」
「構わないわ!」
「よし! じゃあファルも行くぞ!!」
ア゜! ファルについたインク落すの忘れてた! これじゃあ変身するのは難しいよ。
とりあえず目の前のビリーの腰を90度に折り曲げ、馬跳び。
お次は脛を思いっきり蹴りつける。いくら怪人でも、弁慶の泣き所は痛かろう。
振るわれた手刀をしゃがんで避けて、足のバネを生かして頭突きをお見舞いする。石頭には自信があるんだ!
ミロアさんは身を翻すと同時に花粉を漂わせ、ビリーの動きを鈍くしている。この辺は大体片付いたし、この隙に逃げよう。
「ミロアさん、早く!」
「ええ!」
2人で並んで走るけど、どこに向かうべきか分からない。しかも後ろからビリーが追ってくる。
逃げた先で養生テープ発見!
廊下の壁に先っぽを貼り付けて、一気に反対側まで伸ばす! 追いかけてきたビリーを一網打尽だ!
そう思ったのに次々とビリーは出てくる。どんだけ居るんだよ。これじゃあ俺たちは体力をすり減らすだけだ。
大き目の木箱を見つけたので2人で中に入る。これで、騒ぎが落ち着くまでしばらくやり過ごせるだろう。
……ん? ちょっとミロアさん、もしかして花粉出しっぱなしにしてる?
おかげで花がムズムズして……このままじゃ……くしゃみが出ちゃ……
「はっくちゅ!」
あ、やっべ。
近くのビリーが全員こっち見てるよ。お願いどうか、気付かれませんように……。
あッ箱に手をかけちゃダメ! ダメだからー! 持ち上げないでくださいお願いします!
見つかっちゃったZE☆
こうなったらもうヤケクソだッ! どこまでも逃げ続けてやる! まずは木箱を奪って目の前のビリーにかぶせた。
俺たちは逃走経路しか考えずに、ただひたすら逃げ続けた。
走って、走って、走って、走って。
気が付いたら結構奥まで来ていた。
真っ暗な部屋。何かありそうだ。
「帰り道どうしよう……」
「それより、ここは何処で、何の為にある部屋なのかしら。気になるわぁ」
「とりあえず明かりをつけるか……ファル、光って」
ファルに照らされて、部屋の全貌が露になる。
「!? ハルさん、どうしてここにいるッスか! まさかハルさんたちも捕まって……」
サヴァちゃん!? こんな所に居たのか! しかも檻に入れられて……道理で街を探しても見つからなかったわけだ。
「実は自分、この間ハルさんと戦ってた怪人を森で見たッス。『ハルさんの役に立てるかも!』と思って後をつけたはいいッスが、見つかっちゃったッス……」
元気なく項垂れるサヴァちゃん。これまでのハキハキとした姿からは想像できない。そんなにショックだったのか……。
「目には青葉、山ホトトギス初ガツオ。素晴らしい言葉だ、心が洗われる」
声のした方を向けば、得体のしれない液体に浸かっているアオイロ面徒。シュールな絵面だな。って、今はどうでもいいか。
それよりも、大切な事がある。
「待ってろよサヴァちゃん、今助けるからな……!」
「そんな、なんで……なんで助けようとするッスか!? 自分、ハルさんにもミロアさんにもいっぱい迷惑かけたッス! 助ける必要なんて無い筈ッス!!」
「うんまあここに来たのはぶっちゃけ偶然だけどさ、それでも助けない理由にはならないじゃん? それにさ、俺もサヴァちゃんみたいに、良かれと思ってやった事で誰かにいっぱい迷惑かけてきちゃったけど、許してもらってきたし。俺が失敗する分だけ、みんなの失敗にも甘くなろうかなって」
サヴァちゃんに俺の気持ちを伝えつつ檻をどうにか開けようと考える。お、錠前発見。だけど鍵がないんじゃ開かないよな。さて、鍵はどこかな……
「助けようとしても無駄だ。檻を開けるカギはこのオレが持っている。それに、オレの強さは青天井だぜ!」
「だったらアオイロ面徒! お前に言っておきたい事がある」
「ほう? 言ってみろ」
「透き通るような薄いブルーだったら、オムライスも悪くないかなって!!」
みんながずっこけた。俺、そんなに変な事言っちゃったかな?
「だからお前に立ち向かうには……こうだ! 奇想転身ッ!」
[待つんだ! 今のワタシでは出力が足りない!]
「青く塗られたからって何だっていうんだ! 俺はそれでも構わない!!」
[ハル……わかった! ワタシもキミの想いに応えよう!]
ファルもその気になったし、変身!
すぐに変身プロセスは終わるけど、今回はいつもとひと味違う!
なぜなら──
「今の俺はブルーバージョン!」
「……どこか変わってるッスか?」
「いや、色がね。変わっただけなのよ」
「色って何ッスか?」
「ゑ。そこから?」
「自分、色が分からないのでトマトとナスを間違えて買っちゃうことが多いッス」
「私が味を知らないみたいに、サヴァちゃんも色を知らないのかしら。水中で活動してるせい?」
多分ミロアさんの考えが正解だと思う。プールの中じゃあ、色も解りづらかったからな。
[ヴィブジョーソード、モード《IB》!]
七色に光り輝いていた刃も、今は青色オンリーだ。眩いブロンドの髪も青くなっている。
「同じ土俵に立ったはいいが、青表紙を頂いたオレに適うと思うなよ! インクローラーだッ!!」
───────{9}───────
試しに一発やってみたら、なかなかいい感じの目が出た。コロコロするアレを避け、風の斬撃を放つ。見事ヒット。
「青椒肉絲ッ! だが『まぐれ』というものよ!」
「まぐれかどうか、試してみるか!?」
───────{4}───────
これは届かなかった。けど普通の攻撃に毛が生えた程度だし、防がれても問題ないか。
「青いペイントボールを食らえ!」
「うらああああああああああああ!!」
「なにッ! こっちに向かって来るだと!?」
「俺自体が青いからな! 青いペンキが付いちゃっても大して気にならないぜええええええええぇぇぇぇぇぇ!」
この勢いで必殺いっちゃえー!
───────{11}───────
一つ所に同時に複数存在する斬撃が、アオイロ面徒の身体を傷つける。
───────{6}───────
「青二才にやられっぱなしでなるものか!」
向かってくるアオイロ面徒だけど、俺はヴィブジョーソードを床に突き立てて、炎を湧き上がらせる。これでヤツも簡単に近づけないだろう。
「ならばこれだ! バケツぶちまけアターック!」
ぶちまけられた青いペンキが俺に降りかかる。汚れが気にならないけど、流石にあれを頭から被るのは御免だ。
なんかいいの来い!
───────{10}───────
なんかいいのキタ!
降ってくるペンキの時間を止め、下から潜り抜けて斬り上げる。
続けていくぜ!
───────{7}───────
そう悪くないんじゃないかな。
突きを弾かれてしまい、体力を回復できなかった。けどあまり消耗してないし問題ないか。
───────{4}───────
これはあまり当てようとしなくていい。
攻防を繰り広げつつ、俺は必殺技の発動タイミングをうかがう。
……今だ!
「その攻撃は見切った!」
───────{3}───────
前と同じだったような攻撃だからか、防御姿勢をとるアオイロ面徒。だけどこの出目でそれは悪手だ。
ガードを打ち破り、がら空きとなったアオイロ面徒を盾で殴って浮かせる。そして俺は祈る。頼む、通じてくれ……!
───────{12}───────
「青は藍より出でて、藍より青しいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!」
完全撃破!
飛んできたカギをジャンプしてキャッチ。それっぽい端子に差し込むと、鉄格子は中央から割れて上下に格納されていった。なんかハイテク。
「ほう、まさかオレ様の死面徒軍団を全員やっつけちまうとはな。オマエ、結構強そうじゃねぇか」
また奥から誰か来るぞ!
「そんなに強ぇなら、このウデプシー様とも戦おうじゃないか!!」
次回、ウデプシーと大激突!




