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第9話 新しい仲間

サブタイ通り、新しい仲間のお披露目です。


「それで、この後は何処かに行くのかしら? それとも宿に戻るの?」

「まだ日は高いし、もうちょっと外に出ますね。済ませたい用事もありますし」


 俺の旅の目的の1つ。コートクランにある遺跡の調査だ。

 俺の見込みが正しければ、遺跡には前回と同様に、あの碑文の1部が残っているだろう。全貌を解読する為にも、調査は欠かせないのだ。それにグラージュの遺跡で感じた違和感の正体も、潜り続けていけばいずれ分かる日が来るだろう。


「旧文明の遺跡ね」

「そうそう。そういえば、ミロアさんの出身にもそういう遺跡とかない?」

「あまり聞いた事がないけど……」


 立てた人差し指を顎に当て、思い出そうとするミロアさん。悩む姿も絵になるのう。

 あっ思い出したの!? どうぞ言ってみてください!


「国1番の大樹、それがかつては天を貫かんばかりの塔だった、というおとぎ話なら、みんな知ってるんじゃないかしら。花茎族でこの話を聞かずに育った者はいないわ」

「なるほどー。国で目立つ所に遺跡があるってんなら、まさかコートクランの遺跡は海底にあったりして」

「だとしたらどうするのよ。私達じゃ水中で息が続かないじゃない」

「大丈夫だ。俺は地下水脈を息継ぎなしで抜け出せた経験がある」

「何の自慢よそれ」


「おふたりさんとも、困ってるようッスね! そんな時は、自分にお任せあれッス!」


 ……誰?


 身長は、160cmにちょっと届かない位。水色の髪の毛をうなじ辺りで1つに纏めている。

 何よりも気になるのは、手首や足首に魚のヒレが付いてる点だ。


「さっきの戦い、見てたッスよ! いろんな技が使えるなんて、自分チョー感激したッス!」


 いや~、見られてたなんて照れるな~。これはもしや、俺の時代が来たんじゃないでしょうか。どう思いますか、ん?

 おっとっと、いい気になってる場合じゃない。詐欺の可能性だってあるんだ。もしそうだったんならびた一文取らせるもんか。


「それで、誰なんですかあなたは」

「ああ申し遅れました! 自分、水棲族のサヴァッス!」

「ああ、サヴァッスちゃんね。OK覚えた」

「サヴァ! ッス!」


 サヴァ。それが彼女の名前らしい。……サヴァ、サバ、鯖?


「サバじゃないッスよ!」

「何故分かったし」

「初対面の人がそう考えてる確率が高いからッス。そ・れ・よ・り・も! 自分には目的があるッス!」

「目的? ハルに関係するのかしら」

「その通りッス! 自分をハルさんの弟子、いやオトモにして欲しいッス!」


 別に弟子でもよかったのに、何故オトモを選んだの?

 オトモ、か。あまりイメージ湧かないな。桃太郎が連れてるやつ程度の認識しかない。


「あー、じゃあクラスカード持ってる? 持ってるんなら見せて欲しいんだけど」

「なるほど、面接ッスね! 了解ッス!」


 サヴァちゃんは素直に自分のクラスカードを渡してきた。

 どれどれ……


─────────────────


 サヴァ水棲族 14歳


 技能

 ・水適正

 ・特級空間把握


─────────────────


 おや、見慣れた文字列が無いぞ。ちょっと不安だな。たった1人でお使いとか、できるんだろうか。

 その事を尋ねてみたらサヴァちゃんからは


「言葉は通じるから何とかなってるッス!」


 って返された。ならOKか! 合格!


「やったー! 自分、これからハルさんのオトモとして頑張るッス!」

「んじゃサヴァちゃん、これから宜しく!」

「はいッス!」


 差し出した手と手を、互いに固く結んだ。

 俺の後にはミロアさんとも。これから一緒に旅していくんだからね。


 こうして俺の旅に新しい仲間が加わり、毎日がちょっと賑やかになった。

 しばらくはネガルディアの死面徒も現れていないし、遺跡の調査に集中できそうだ。


「調査お疲れ様ッス! ケーキでも食べてゆっくりしてってくださいッス!」

「おっ、気が利くねえ。ちょうど糖分切らしてたんだよ。……う~ん、美味しい、最高っ!」

「ミロア姐にも用意してるッスよ! 水の国コートクランでシュギョクの100選に選ばれたおいしい水ッス!」

「あら、ありがとう。……ん~、舌触りもすっごく滑らかで飲みやすいわ」


 またある時は……


「あ~ヒマだ。進展ないし、こういう時はしばらく気分転換するに限る」

「ハルさんハルさーん! グラージュで最近流行ってるってウワサの本持ってきたッス!」

「おっ。ってそれマンガじゃねーか!久しぶりだし、ちょっと見てみっか」

「へー。絵と物語が一緒になってるのね……興味深いわ」


 けれど、サヴァちゃんにだけ負担を強いるのは流石に気が引ける。今のところ仲間、ってよりかはパシリ、って感じ。サヴァちゃんが持ってる先入観がこの先邪魔にならなければいいんだけどなぁ……。


 俺が何かをぼやけば、サヴァちゃんが何かを持ってくる。そんな日々が続いたがある日、俺たちの所持金が尽きた。

 なんで? あまり贅沢はしてないはずなのに。


「うっ。とうとう……お金無くなっちゃったッスか」

「あらサヴァちゃん、何か知ってるの?」

「これは、自分が原因ッス」


 そうしてサヴァちゃんはぽつりぽつりと語り始めた。


「最初は、自分のお小遣いでなんとかやってたッス。けど、やっぱりハルさんにはいい思いし続けててもらいたいッスから、つい使っちゃったッス」


 ウッソだろお前。ここにきてまた浮浪者みたいな生活を送らにゃならんのか。

 でもなーんかすっごく申し訳なさそうにしてるし、後ろめたかったんだろうなって事はひしひしと伝わってくるから、あまり怒る気にはならない。


「自分は……自分は、オトモ失格ッス~~~!!!!」


 あっどこ行くんだよ!

 サヴァちゃんは俺の言葉も聞かず、どこかへと走り去った。ミロアさんこの状況どうしましょうか。


「とりあえず……追いかけてみましょ」


 だな!

 なんやかんやでサヴァちゃんを加えて過ごす毎日は楽しかったし、引き止めない理由がない。

 だけど問題発生。サヴァちゃんは相当足が速かったのか、すっかり見失ってしまった。

 仕方ない。二手に分かれて探そう。


「俺は左の路地から探しますんで、ミロアさんは右の路地からお願いします!」

「了解よ! 任せときなさい!」


 待ってろよサヴァちゃん! たとえ火の中水の中森の中土の中雲の中ゴミ箱の中にいても必ず見つけるからな!


 捜索だァァァァァ! ウォウウォウウォウウォー!


* * *


 その頃のミロア。


「何かしらコレ! 石の中に海があるみたい!」

「気に入ったかい嬢ちゃん。それはここでしか採れない鉱石を加工したのさ。ってあれ、いない」


 ミロアは露店を離れ、次の露店へ。移動する様は風のごとし。


「露出が多いけどこれは下着、なのかしら?」

「いーや、それは水着ですね。泳ぐときに着るものです」

「そんな、泳ぐときにしか着ない衣装があるなんて!」

「デザインも結構イマドキの若い子らにウケてるんですよ。どうです? 今ならこのお値段! っていなくなってる」


 好奇心の方が優先され、あまり捜索は捗らずにいた。


* * *


 噴水がある広場は、晴とミロアの2人が合流地点に選んだランドマークである。丁度そこへ、捜索を終えた晴がやって来た。


「ハァ、ハァ、どこにもいなかった」


 どうやら見つからなかったらしい。息も切らしていて、急いでここへやって来たことが分かる。


「待ち合わせの時間はこのくらいだったんだけどな~、ミロアさんいないな~」


 自分よりしっかりしてそうなお姉さんであるミロアが、ここにいない。不思議に思った晴だが、まだ探しているのかと結論付け、再びサヴァを探しに向かった。


 晴が噴水広場を離れてから本の数刻。ミロアが件の広場へやって来る。


「ハルちゃんまだ来てないのかしら……遅れたと思っていたけど、まだまだ時間はありそうね」


 だけど、待つ。ミロアはベンチに腰掛け、晴を待った。

 すると丁度そこへ、カラーひよこの屋台が通りすがる。


「きゃー! なんて可愛らしいのかしら!」


 初めて見る動物に、ミロアは待っていられない。すぐさま立ち上がり、屋台を追いかけ離れていった。


 ミロアがカラーひよこを追いかけてからちょっとして、晴が噴水広場に戻ってきた。さすがにこの時間ならミロアも戻っているだろうと考えていたが、どこにも彼女の姿は見当たらない。


「ミロアさんってばまだ探してるのか……俺も負けてらんね」


 年長者がいまだに捜索を続けている。ならば、自分が遊び惚けるのはちょっと申し訳ない。後ろめたさに背を押され、晴は再び探しに行く。


 そして、ミロアが戻ってきた。文無しの為何か買ってきた様子はないが。


「ハル、まだ来てないのね。しばらく待とうかしら……あ、あれは!?」


 長い間閉ざされた故郷で退屈していたミロア。彼女はその抑圧の反動からか、興味を惹かれるものに出会えばすぐに飛びついてしまう。現に今も『足つぼマッサージ体験会』というのぼりに食らいついた。


 晴とミロアのすれ違いが幾度となく続く。両者、どうにも間が悪い。

 その結果


「「ここどこーーー!?」」


 全 員 迷 子

 うち行方不明1人

あーもう滅茶苦茶だよ

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