7話 変わりゆく者
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記憶領域が破損しています。想定されていない動作が行われています。今後の戦闘行動に影響を及ぼす可能性があります。
「新人類が変わらない限り、君たちの生活が変わることはない。」
移動途中も時間は無駄にしてはいけないと、ゼラニウムは新人類について語り始めた。
「そんなことは判ってるわよ。でも変えようがないから困ってるんじゃない。」
電子音声はけれど、私達にとって「怪我をしなければ健康でいられる」と言われているに等しい。当たり前だが、どうすれば「怪我を無くせるのか」がない事であればそれは無意味だ。
「そうでもない。君たち旧人類は少しばかり誤解している。」
あたしと仲間は顔を見合わせる。
「誤解ってなによ。あいつらがいつも私達を襲ってきてるのはあんたもわかってるでしょ。」
特殊なナノマシンを体内に取り入れた彼らはあたしの村を容赦なく蹂躙した。どうしようもない殺戮者だ。
「そもそも新人類は共感力と、良心を強化するナノマシンを体内に取り入れ、それをさらに子供に受け継がせ、倫理を強化してきた。」
おとぎ話だ。新人類が生まれるきっかけ。誰でも知っている。しかし、それをうのみにする人間はこの場にいない。現実にあたしたちは蹂躙されているのだから。
「しかし、ナノマシンの良心の部分が抑制された人間というのが存在する。傭兵たちがそうだ。君たちは新人類のスクールの人間と直接会ったことがないだろう?平和に生きる新人類は君たちからすれば腹立たしいだろうが、話してみれば驚くほど全うな倫理観を持っている。誰かを傷つけるなんてもってのほかだ。」
旧人類と同じ悪意をもって、新人類の力を一方的に振るうことができる調整をされた兵器としての新人類等、平穏に生きている新人類は存在を夢にも思わない。
「けれど、良心の抑制機能というのはちょっとしたきっかけで解除されうるものだ。だからそこを利用する。現実を認識させさえすれば、傭兵という存在は駆逐される。社会の名もなき人の声が、武力を一掃する。」
逆に言えばそのきっかけを作ることが今までできなかったということだ。ゼラニウムにはなにか宛があるのだろうか。
「君の心が鍵になる。」
ゼラニウムはそんなことを言い出した。
「精神感応?」
「ああ。」
D-roidは全身をリンクシステムでナノマシンと同調させることでその力を行使する。
だが、あたしの体内のナノマシンは少なく、それをAIのゼラニウムが補う形でかろうじてD-roidの体を保っている。
そして規定に満たないナノマシンの操作が起こした不具合が、あの時のD-roidを追い払ったときに起きたという。
「不具合を意図的に引き起こす。君は思いをそのまま載せるだけでいい。そうすれば、ナノマシン同士がリンクシステムを通して、より高い純度で相手は君に共感する。」
「洗脳?」
「そういう人もいるかもしれないがね。本質的には対話だよ。彼らは言葉を聞くための耳を持っていない。だから強引に聞く耳を持たせる。後は本人がどう思うか、という話ではある。」
「大して役に立たなそうなんだけど。」
話を聞いてもらうだけって何の意味がある。あたしが欲しいのは状況が改善されることなのに。
「そうでもない。私のかつての主はある少女の言葉を聞いたからこそ変わることができた。戦争に取りつかれた自分のない傭兵でさえ、良心の声をきくことはできたんだ。新人類とはそもそも『善き人』になるために生まれたのだから。君の経験は、君の叫びは届きさえすれば確実に彼らの良心を揺らす。」
新人類がそんな優しいものだとは思えない。あいつらは侵略者だ。あたしたちの大事なものをいつも奪っていく。でも。
「あんたがそういうなら……信じて、いいのね?」
「後悔をさせる気はない。」
「わかった。何が必要なの?」
「ああ。それだが―――」
いくつかの注文を聞いて、みんなと一緒に機体を整備する。大人も子供もない。村のみんなはこれからを変えるための最初の一歩を踏み出していた。




