3話 選ばれなかった者
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記憶領域が破損しています。想定されていない動作が行われています。今後の戦闘行動に影響を及ぼす可能性があります。
小さな村だ。少女が取りまとめるこの旧人類の村は常になんらかの脅威にさらされている。伝染病、新人類主導の保護団体、そして襲撃者だ。
キャンピングカー数台を後ろに脅迫をする成人男性。いつの時代でも少女相手に脅迫など一般的な感性なら恥ずべき感性といえるだろう。しかし、男も生きるために必死なのは間違いない。
「やめなさいよ!あんたたち子どもにたかるなんて恥ずかしいと思わないわけ!?」
「うるせぇ!ガキが俺たちの苦労がわかってたまるか!!村のない俺たちがどんなにみじめかわかるか!?」
「アンタたちみたいに食うに困って、子どもからたかるような恥知らずの気持ちなんて知らないわよ!!」
「テメェ・・・」
武器が抜かれる。拳銃くらいは誰でも持っている。いやライフルやサブマシンガンでさえ入手はそれほど難しくない。
なんせ適当な死骸をあされば、そんなものはいくらでも転がっているからだ。
だから、彼女も恐れない。素早く頭目につかみかかり投げ飛ばした。華奢な体からは信じられない機敏さで男を地面にたたきつける。奪いとった銃を突きつけて。
「ちゃんと村を手伝って、復興させたなら衣食住くらいは何とかしてあげる。その後どうするのかは自分で決めなさい。」
この程度でおびえてすくむようならそもそも強盗などできない。即座に車から火器をもった男が躍り出る。
彼女は半端ものとはいえ、旧人類からは少し足を踏み出している。旧人類相手なら余程の人数が来ない限りは1人で十分制圧できるくらいの力はあるのだ。だが。
「な、なんだ!?地震か!?」
大地を揺らし、ドッグの隔壁が開く。
「そこまでにしてもらおう。」
スピーカーに電子音性を乗せる。ドッグから跳んで、彼女の前に立つ。
「アンタ・・・」
「抵抗は無駄だ。おとなしく帰るか、彼女に従うか選べ。」
彼女はすでに決意している。この手助けは無意味だ。彼女は既に手に返り血を浴びている。
それでも。必要以上に痛みを感じさせることもまた、ないはずだ。
「パーツの選別をお願い。アンタたちもあれだけ武器をもってるなら売り物になるのとならない物の見分けはつくでしょ。」
縛り上げたならず者に、役割を与える。あのポンコツのセンサーで村の中なら不穏な動きもできない。
ただ、生かすには彼らは私達の生活をひっ迫し、殺すには私達と境遇が近すぎる。なら、なんとか共存していくしかない……というのは甘すぎるかもしれない。
「わかってるとは思うけど、金をちょろまかしたりする程の余裕は私達にはないわ。あてにしてるからキリキリやってね。」
「わかってるさ。お前ら、やるぞ。」
強面の男が答える。私たちと同じに生活が懸かっていたから戦っただけ、それさえ保障できれば、共存できる。
むしろ話せる人間だとすら思えた。
共有スペースにまとめられたガラクタの山の前ですわりこみ、一つ一つ手に取って検品を始める彼らを見ながら。私はPCで村の支出や収入を整理していく。
「なあ、嬢ちゃん。」
「なによ。」
「なんで俺たちを助けた?D-roidなんてもんがあるんだ。踏みつぶして終わらせることもできただろう。」
男たちの作業の仕分けの手は止まらない。だが、それはどうでもいい世間話というわけではないことは誰にでもわかる。けれど。
手が止まる。キーボードがうまく叩けない。私には、答えがなかった。
「わかんないわよ。そんなの。」
「・・・そうかい。」
その声にどんな感情が込められているかわからない。何が正しいのか、何をすべきかなんてわかりようがない。
選別される物のガサゴソとした音を聞く。今日の仕事は、捗りそうになかった。