2話 立ち向かう者
あたし達が鉄くずに変えたD-roidの中からまだ使えるものを、機体の指示に従って集める。
「待て。その機体の装甲パーツはまだ使える。」
「じゃああっちのはどう?」
「ああ、そのブレードは加工すれば固定兵装にはできるだろう。」
子供たちが見つけたものから、D-roidとわたしで使えるかを確認し、それを整理していく。
新人類を返り討ちにできる程のAIとはいえ、機体そのものは旧式だ。それを倒した機体でつぎはぎにしていく。
専門家等一人もいないが整備もAIがやり方を指示できるのでわたし達にとっては幸運だった。
「ねえ、これは本当に必要なの?」
装甲材をフレームに追加していく。展開式のブレードではなく、固定式のブレードに切り替える。満足に整備できるかも怪しい状況ではエネルギータイプの武装よりは旧来の実体兵器の方が信頼性に勝る。プラズマブレードのプラズマ発生器も所詮は消耗品・・・らしい。
「当然だ。新人類の傭兵が差し向けられれば、ほぼその村は跡形も残らない。その中で私達は返り討ちにしてしまった。D-roidでの返り討ちだ。テロリスト認定されるかもな。」
わたしの希望的観測を否定し、AIは冷酷に状況を告げる。
「じゃあ、あのまま皆死ねばよかったわけ!?」
「戦い続ける勇気がないならそのほうが幸せだったかもしれないな。」
「ッ・・・!」
わたしの神経を逆なでする。やはりこいつはポンコツで、呪われた兵器だ。この相手を思いやれないあり方は新人類そのものだ。
「だが。」
電子音性は続ける。
「君はそれに納得がいかないのだろう?なら、今からでも覚悟を決めるべきだ。不条理に立ち向かうというのはそういうことなのだから。」
無機質なその音声にはどこか人間味を感じた。
Error。
記憶領域が破損しています。想定されていない動作が行われています。今後の戦闘行動に影響を及ぼす可能性があります。
「何度も言ってるけどあんた、もっと揺らさず動きなさいよ!」
「無茶を言うな。戦闘機動とはああいったものだ。自分の手で村を守るというならいい加減慣れろ。」
彼女は私という兵器を起動し、傭兵どもを追い払ってから、訓練をするようになった。私自身の操縦でもよほどの腕の者が来ない限り圧倒できるが、彼女はそれをよしとしない。
「誰かに任せきりになんてできるわけないでしょ。」
彼女の弁はそういうことだった。なので、私はナノマシンリンクによって模擬戦場を作り、訓練をしたり、彼女の指示の下復興の作業を行っていた。
巨大な瓦礫の除去、高所への人の移動。どれも私の用途として考えられるものではあったが、私が実際にそれを行うのはおそらく初だろう。
そして私の機能として供えられたVRを用いた戦闘訓練。彼女は旧人類として考えるなら一歩抜けているが新人類としては平均以下のまさに半端者だった。
「そもそもだ。マスター。君は無理に戦う力を身に着ける必要はない。たいていの相手は私だけで事足りる。そして、私でどうにもならない状況なら君が付け焼刃の力をつけても役に立たん。機体の修復と武装さえ提供すればそれでいいんだ。」
「うるっさい!それでも私は任せきりなんて嫌。勝手に全部もって行かれるのはもうたくさんよ!」
「兵器の私にそのような気遣いは不要だ。」
「アンタがどう考えるかなんて知らないわよ!自分を道具扱いするならご主人様の言うことを聞きなさい!あんたは私のために戦うの!!」
「・・・了解した。マスター。」
戦いの訓練だけではない。村の復興作業。新人類国家との支援の交渉。村の代表とはいっても小娘が一人で背負っていいものではない。
が、その弱音を彼女は絶対に吐きはしない。自分の後ろに立つ誰かのために、力の足りないことを自覚しながら、それでも彼女は村にとって代表の子なのだ。寄る辺なき子供たちの村として必要なことと誰よりも奮起している。
それが彼女の美徳であるのだろう。だからこそ、このような不条理な文句も私は彼女に必要な行為として許容し、逃げ道を提示する。彼女がそれを決して許容しないことを予測しながら。