第1話・転生
目が覚めた。
神殿のような場所だった。
綺麗な人が僕に近づいてきた。
「私はこの世界の女神です。あなたはこの世界に生まれ変わってきました。」
僕はフリーズしてしまった。
思考が追い付かなかった。
そしてなんか魔法が使えるようになった。
ステータスはSSSで最高らしい。
女神さんのアドバイスで、ギルドに行くことにした。
ギルドにはごつい男がたくさんいた。
「新人か?」
「魔法使いとは珍しい。」
「若いねぇ…。」
みんな僕を話題に挙げている。
こんな僕に何の興味があるんだ…変な人たちだなぁ…。
受付に行くと、制服を着たお姉さんが声をかけてくれた。
名札には「タマリ」って書いてある。
「新人さんですか?こちらで登録するので右手出してください。」
言われるままに右手を差し出した。
「ちょっとステータス調べますよ~」
タマリさんの隣の液晶ではいろんな数字が表されている。
アラビア数字にひらがなカタカナそして漢字。
この世界では日本とそのまま同じ言語が使えるのか。
随分と都合が良い世界だな。
「ステータス高いですね!新人さんでここまで高いのは初めてですよ!これくらいあれば勇者パーティーにも入れますね。」
「高いって…どのくらいですか?」
「攻撃力、体力、魔力、この三項目が9999で最高値ですね。でも経験値は0。これに関してはしょうがないですね。戦っていくうちについてきますよ。」
「うーん、なんかすごいですね。」
「名前の登録もしますね。お名前うかがっても?」
僕の名前…何だっけ…。いつも意識しないから忘れてしまった。
もう今決めちゃおう。
前まで研究していたカビの名前…オリゼ…。
「オリゼと言います。アスペルギルス・オリゼです。」
「オリゼさんですね。わかりました。はい、これは登録書です。身分証明書として扱いください。では、良い一日を。」
登録書にはステータスが書いてあるが、これは魔法の力で自動的に更新されるらしい。
便利なものだな。
ポケットに地図が入っていた
どうやらここから少し離れたところに草原があるらしい。
そこに行こう。
◇
草原には人があまりいない。
そういえば僕は何でこの世界に来たんだっけ…。
そうだ、感情の正体を聞いていたんだった。
なんで聞いてたんだっけ…そうだ…あの子の…。
もういいや、あいつのことは忘れよう。
付き合ってもどうせすぐ分かれるし、考える必要もないな。
元の世界の僕は死んだんだ。今頃水でボロボロになっているだろう。
記憶を消せる魔法ってあるのかな…。
「ありますよ。」
後ろには女神さんがいた。
「これを渡し忘れていました。魔術の書です。普通はここで詠唱の練習をしなければならないのですが、SSSランクのあなたには無詠唱でも十分使えます。」
「記憶も消せるのですか?」
「334ページにありますよ。」
書を開くと、そこには記憶を消す方法が書いてあった。
ええとなんだ…強く念じる…と。
「ものすごく単純ですね。」
「単純ゆえに難しいのよ。感覚にマニュアルはありませんから。」
「なるほど…使ってみます。ぐぬぬ…忘れろ忘れろ…。」
「もういいですよ。目を開けてください。」
目を開けると、目の前には白いモワモワしたものが浮かんでいた。
「それが記憶の塊です。あなたの忘れたい記憶がここにありますよ。」
「感覚ないのですけど…これでいいんですか?」
「ええ大丈夫ですよ。感覚ないのは当たり前です。忘れているのですから。」
「で、このモワモワはどうすればいいんですか?」
「一分経つと消えますよ。空にでも飛ばしてください。」
言われたまま記憶を放り投げた。そしてそのまま記憶は空に溶けた。
「では私はこれで失礼しますね。なにか困っていたらまた現れますよ。」
女神はスッと空間に消えた。不思議な世界だ。
便利すぎる…生きていてつまらない…。
そして僕は536ページを開けた。
そこに書いてあるのは『自爆魔法』。
これでこの世ともお