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【超王道】将棋能力バトル

作者: 青山陰翳

今流行りの将棋を題材にした能力バトルものです。

将棋のルールはわからなくても楽しめます。

<序章>

 オレは歩兵!みんなからは「歩」と呼ばれて親しまれているぜ!


 普段は城を守る棋士(ナイト)

 でも今日は王将からオレに大事な話があるらしい!一体何の用だろう?


「王将!歩兵、参上しました!」

「ふむ、よくぞ来た歩よ。早速だが貴君に最重要任務を与える!」

 任務だと!城の警備以外の仕事なんて初めてだぜ!

「実は暗黒棋士『玉将』がこの世界を闇の力で支配しようとしておるのだ。そこで貴君には玉将の討伐を命じる!」

 なるほど、玉将を倒し、この国に平和をもたらすのがオレの使命ってわけか!

「承知しました!!!」

「うむ、良い返事だ。では世界最強と言われる国宝の武器を授けよう」

 いい感じの日本刀を下賜されたぜ!いきなりの最強装備にテンションは高飛車を超えた最高飛車だ!

 ちなみに将棋盤の格子状の線は日本刀で引いているんだぞ!

「それと軍資金として50ドルを与える。これで旅支度を整えるがよい」

 わお!太っ腹!何買おうかな?!

「ではゆけ!歩よ!」


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 スマートなオレはいきなり町を飛び出したりしないぜ!まずは玉将の城の位置を調べないとな!

 オレはグーグルマップで検索した!

「・・・なるほど、玉将の城は国道沿いを北の方角に進んだ所にあるらしいぜ!よーしそれじゃあ出発だ!!!」

 こうしてオレは玉将討伐の旅に出たのだった!



<第一局:VS香車>

 ということで町の外に出たぜ。ここからはいつ敵に襲われるかわからない。

 初めてお酒を買おうとして年齢確認されたときと同じくらいドキドキするな・・・


「あいや待たれよ!」

 誰だぁぁぁ!?

「拙者、香車と申す。玉将の指示で、歩兵の命を頂戴しに参ったでござる」

「なんだとぉぉぉ!オレを殺すだとぉぉぉ!!!」

 いきなり刺客が現れた!オレが玉将討伐に向かったと知って、早めに潰そうって算段だな!

 だが冷静なオレはクールに先制攻撃を仕掛けるぜ!

 この日本刀で悲鳴を上げる間もなくスパッと斬り捨ててやる!

   --スカッ!!!

 しかしなんということだ!香車は隕石のような速さでオレの攻撃をススッとかわしやがった!

「遅いでござるよ。拙者の『愚直なる疾風(ストレイトゲイル)』にはかなわないと見受けられる」

 どうやら香車は直進のみ超スピードで移動できる能力を持っているらしい!

「次は拙者の攻撃でござる!」

 さっきと変わらぬ速さで真っ直ぐ突進してきた!

 そのままオレは突き飛ばされる!

「ぐわぁ~~~!!!」

 とても痛い!あばらが折れた気がする!


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 何度か日本刀を振るったが、香車にはかすりもしない!その間にも、ヤツの隕石のような突進でオレは傷を増やし続けた!

 どうやらオレに勝ち目はない、どのプロ棋士の目にも明らかだ・・・


 ・・・が、しかし!

 諦めかけたオレの頭に一条の雷光が走った!

「カッカッカ・・・拙者のスピードに勝てるわけがない」

「それはどうかな!」

 オレは正面に香車を見据え、日本刀を振り上げた!

 そして呪文を唱えた!

歩は雷同(ふわらいどう)!」

 次の瞬間、落雷が香車の脳天を直撃!香車は絶命した!

「雷は隕石より速い!」

 大学で雷魔法を履修しておいてよかったぜ!



<第二局:VS桂馬>

 さらにオレは旅を続けた!いつの間にか山道に入っていた!さすがに少し疲れたぜ!


「むむっ!前方に焼き鳥の屋台を発見!」

 折角なので焼き鳥を食べて一休みするぜ!棋士だって対局中におやつを食べるしな!


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 オレは50ドルを支払い焼き鳥を受け取った!美味そうだ!

「いっただっきまーす!!!」

 焼き鳥にかぶりつこうとしたその瞬間!!!

   --ズガーン!!!

 空から馬が降ってきた!すんでのところでオレは直撃を避けたが、爆風で焼き鳥が消し飛んだ!

「オ、オレの焼き鳥を消し炭にしたのは誰だぁーーー?!?!」

「私の名前は桂馬。お前を殺しに来た」

 なんだと!?新たな刺客が現れたってことかよ!!!だが声は聞こえるのに姿が見えない!どこかに隠れているみたいだ!

 周囲を注意深く観察していると・・・右斜め前方の岩場の陰から馬が飛来してきた!

   --ズガーン!!!

「この能力は『天馬の怒り(ペガサスフォール)』と言い、斜め前方に馬を投げつけて爆破することができる。

 攻撃対象との間に壁があっても関係ない。天馬だからな」

「なんだと!!!だからって死角から攻撃するのはずるいぞ!」

 刺客だけにな!


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


   --ズガーン!!!

 桂馬は死角からの砲撃と移動を繰り返し、常に身を隠している!

 このままではジリ貧だ!だが一体見えない敵とどう戦えばいいのだ?!

「何かこの盤面を打開できるアイテムはないだろうか・・・?」

 しかしアイテム袋には焼き鳥の串しか入っていない!クソぅ!焼き鳥食べ損ねたの思い出したぜ!

 ・・・焼き鳥?


 唐突に、地獄の業火のごとく焼き鳥を焼き上げる炭火コンロが、オレの脳内をよぎった!

「そうか、相手が見えないなら・・・!」

 オレは日本刀を構えた!

 そして呪文を唱えた!

歩ぅ林火山(ふうりんかざん)!」

 辺り一面の林が瞬く間に火の海となる!

「あっつ!!!!」

 そして桂馬は火だるまになる!ややあって周辺の炎と一緒に桂馬の命の灯火は鎮火した!

「桂の高跳び歩の餌食ってな!」

 まったく、範囲攻撃技は最強だぜ!



<第三局:VS金銀>

 なんやかんやあって、ついに玉将の城に辿り着いたぜ!


 しかし、その門扉は固く閉ざされている!

「なになに・・・『入館料4ドル』だと!?」

 しまった!さっき焼き鳥を買ってしまったからお金なんか無いぜ!

「予めスマホで玉将の城について調べておくべきだった!・・・あれ、そういえばこのスマホって確か???」

 オレは慌てて料金の投入口付近を調べた!そして発見した!

「やっぱり!ここスイカ使えるじゃん!」

 こんなこともあろうかとオレはモバイルスイカをインストールしていた!

   --ピッ・・・ガチャン!!!

 ICマークの付いた読み取り部にスマホをかざすと、ぬるぬるとゲートが開いた!

 やったぜ!


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 城内はなんだか空気がビリビリしてる気がするぜ・・・!

 部屋中にフリーワイファイが飛び回っているせいか・・・?


「そこまでだ……」

 突然、マグマだまりの底のように低い声が部屋中に響いた!

「誰だっ!!!!」

 全身がテカテカした何者かの影が近づいてくる!

「我は玉将を守る四天王が一人、金将である……」

「ワイは銀将や!四天王最弱やで!お前が玉将を倒そうとしている歩兵やな」

 四天王だとぉ!!!いかにも強そうな敵が同時に2体も現れた!


 こんなときこそクールに作戦を練るぜ!

 敵が複数いるなら1体ずつ確実に倒していくのがセオリー!まずは自称四天王最弱の銀将を狙うぜ!

 オレは日本刀を構えて銀将へと突っ込む!

   --ピキーン!

 だがしかし!突如として銀将の前に顕現した真っ白な壁がオレの刃を弾き返した!

 何だ!?

「これはワイの必殺技『白銀の氷壁(アイスシールド)』ゆーねん。

 生半可な攻撃じゃあこいつは破壊できへんで」

 悔しいがおそらく銀将の言う通りだ!これを破壊するにはかなりの消耗を強いられる!

 ならば柔軟に作戦を変更するぜ!先に金将を討つ!

 オレは180度体をひねって金将に相対する!さあ、今度こそ日本刀が敵の首をはねるぜ!

   --カキーン!

 またしても!オレの凶刃は甲高い音と共に弾き返された!

「甘い……この程度では我の秘技『黄金の光壁(シャイニングバリア)』は破れぬ……」

 金将も障壁を展開できるとは・・・!こいつら、間違いない!ダルいタイプの敵だ!


 ここで一度状況を見直す。ヤツらは守りに関しては鉄壁だが、その分攻め手に欠けるのでは?!

 ならばオレが殺られることはない、つまり障壁を展開するエネルギーがなくなるまで攻撃を続ければいいだけだ!

 よし、今一度銀将から倒しに行くか!!!

 そう思って金将に背を向けたその刹那・・・!

   --ビビビッ・・・

 金の障壁からレーザー攻撃が放たれた!

 完全に不意を突かれた!これは避けきれない!

「ぐえー!ヒットポイントが半分くらい削られたぁ!」

 反則級の火力だ!ダメだ、金将にスキを見せるとやられる!

   --バシュッ!

 そこへ追い打ちのようにナイフが飛んできた!今度は銀将の投げナイフ攻撃だ!

 金将への警戒を強めていたせいで、銀将の攻撃を予期していなかった!蛇のように飛びかかってきたナイフはオレの肩に穿孔を生じた!

 痛い!肉体的にも戦況的にも痛い!

 ・・・あれ?これ、勝てなくない?


「もうお前に勝ち目はない……大人しくしてもらおうか……」

「ワイらの完勝やな!」

 金将と銀将の勝利宣言が聞こえる。

 実際、敵は攻めも守りも完璧だった。


 オレは、ここで、終わるのか・・・?


「観念したようだな……ならば……」

「トドメさしたるわぁ」


 体が・・・熱い。

 体中の血液が沸騰するように熱い・・・!

 心は諦めているのに、オレの体がそれを拒否する・・・!

「ん?なんや歩兵の体が赤く光っとるで・・・?」

 城に入った時から感じていたビリビリが急激に増す・・・!

 力が、みなぎってくる・・・!

 理屈はわからない、だが、オレはまだやれる・・・!

「関係ない……奴はもう死ぬのだから……この一撃で……!」

 金の障壁から再度撃ち出されたレーザー。

 オレはこの攻撃を・・・!

   --ボホーン!

 食らうことはなく、金色に輝く障壁がレーザーを完全に受け止めた!

「!?・・・あれは我の『黄金の光壁(シャイニングバリア)』ではないか・・・」

「ほ、歩兵のやつ、まさか能力のコピーをする能力を持っとるんか!しかも真っ赤になって姿形が変わっとるで!」

 コピー、か。確かに金将のそれと全く同じ能力だが・・・!

「こいつはコピーなんかじゃないぜ!オレの秘められていた潜在能力さ!

 そう、名付けるなら『成金の輝壁(メニマニシールド)』!!!」

「成金……驚くべき力だ……だがしかし!我らを倒すには」

 オレは呪文を唱えた!

降り駒(ふりごま)!」

 無数の駒が降り注ぐ!その圧倒的な物量で金将と銀将は圧死した!

「オレはもうただの歩兵じゃない、『と金』だ!」

 天地がひっくり返ったような大逆転劇だぜ!



最終対局(ラストバトル)

 しかしこの城部屋の数が多くてどこに玉将がいるのかわからないぜ!ドアをひとつずつ調べていくしかないな。

「応接室」「お手洗い」「食堂」「図書室」「サーバー室」「玉将の間」・・・

 あったぜ!


 オレは扉を開けて最後の舞台へと王手をかけた!


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 扉を開けるとそこは屋外だった!玉将の間とかいいながら裏庭じゃねーか!

 だがそこに玉将はいた!リクライニング玉座の上で日光浴をしていた!

「よくぞ辿り着いた、棋士(ゆうしゃ)よ。

 吾輩の名は玉将。世界を闇に染め上げる暗黒棋士である」

「オレはと金!お前の野望を止めにきた!」

 ようやくここまできた・・・オレのラストバトルが始まる・・・!


 辺りに玉将を除く敵影はない!完全に一騎打ちの様相!

 オレは相棒の日本刀を構えて真正面から玉将へと飛びかかる!

「出でよ!傷つかぬ玉アルティメットスフィア!」

 そのとき、玉将の手元に巨大な水晶玉が現れた!玉将はそれを両手で支え、オレの前に突き出した!

   --ビキィン!

 日本刀の刃が水晶玉に当たり、耳障りな音が響く!

 玉将はこんな水晶玉で攻撃を受けるつもりか!?ムダだ!日本刀の切れ味とオレのパワーを持ってすれば簡単に砕け散るぜ!

 そう思っていたのだが、水晶玉にはヒビどころかキズひとつ付かなかった?!

「硬い!」

 こいつ、どう考えても水晶じゃないぜ!金将や銀将の障壁以上の防御性能だ!


 水晶玉の硬さに驚いていると、不意に邪悪な波動を感じた!

 左だ!左から何かが襲ってくる!

   --キュピーン!

 オレは咄嗟の判断で左手に『成金の輝壁(メニマニシールド)』を展開!

 邪悪な光がシールドに直撃!シールドは夏のボーナスのようにゴリゴリ削れていくが、どうにか防ぎきった!

「ほう?やるではないか。飛車の攻撃を受け止めるとはな」

「は!?この場に別な何者かがいるのか!」

「見ての通りこの場にはいない。飛車は10万間(約180キロメートル)離れた宇宙空間にいるのだよ。

 彼の能力『絶対十字支配(グランドクロス)』は宇宙からでも攻撃できるからなぁ」

 な、なんだって!?初めから仲間を遠距離に配置する作戦だったか・・・!さしずめ「十万間飛車」と言ったところか!

 と思ったら、次は斜め後方から別な気配!!!

   --チュドゥーン!

 軽やかなバックステップでこれを回避!今のは・・・ミサイルか!?一体どこから?!

「おやおやこれは驚いた。角行の攻撃まで回避するとは、称賛に値するぞ」

「え゛!?まさか他にも仲間が!?」

「その通り。角行もまた宇宙から攻撃を仕掛けたのだ。

 『惑星Xの攻撃(エクスプラネット)』、宇宙間弾道ミサイルを自在に操る能力を用いてな」

 角行の宇宙間弾道ミサイル・・・つまりは角ミサイルというわけか!


 飛車と角の攻撃は凄まじい。だが怯んでいる暇はない!オレも反撃だ!

 再び日本刀を構え直して玉将の真正面へと突撃を試みる!

   --ビキィン!

 やはり攻撃は通らない!美しい水晶が刃を弾く!

 とはいえ繰り返し攻撃を受ければいつかはヒビが入り、そして必ず壊れるはず!飛車と角は宇宙にいるから手が出せないし、水晶への攻撃を続けるのか今の最善手・・・!

 頭の中でそう考えていると、オレの真横に再度邪悪な光が襲いかかる!が、先ほど同様にシールドでこれを防ぐ!

 そして背後から飛んでくる角ミサイル!やはり後ろへ飛び退いてこれもかわす!

 一刻前と全く同じ状況だぜ!


 それぞれが二手の行動を取ったが、誰もダメージを与えることがなかった!戦況は互角と言ったところ・・・!

 しかし水晶玉へのダメージを蓄積させることで勝機は訪れる・・・!だからこのまま攻撃し続ければよい・・・!作戦としては正しい・・・!

 そう思っていたのに不意に覚える違和感・・・!なんだ!?まるで真綿で手首を絞められているような、全く苦しくないのにゾワゾワする感じは・・・!

 まさか・・・既に玉将の能力は発現している・・・?

「どうした、急に攻撃をやめて?吾輩の水晶はまだまだピカピカのツルツルだぞ」

「さっきから膠着状態なのにお前は全く動じていない!何かの罠かと疑うのも当然だぜ!」

「クックックッ・・・!よもやこの状況で感づくとは、本当に優秀な棋士(ゆうしゃ)だ。

 だがもう遅い。『千日手による指し直し(ループルーラー)』は既にカウントダウンを始めている!」

「・・・?!」

 ループ・・・?確かにオレと敵の行動はループしていたようだが、それが何だっていうんだ!?!?

「このフィールドでは同じ盤面が4回現れたとき、これまでの戦いがなかったことになる。そして今のこの盤面、3回目だということは気づいていたかな?」

「な、に!ということは次にオレが攻撃をしたら・・・!」

「そうだ!その後の角ミサイルを後ろに下がって避けた瞬間に『千日手』が成立、貴様は何もかも失い『王将の町』へと戻されるのだ!」

 は・・・そんな、ことが、あってたまるか・・・!

「もちろん、玉将からは逃げられない!つまり貴様は攻撃するしか選択肢は無いのだ。

 ・・・吾輩の水晶玉が割れることを祈りながら」

 !そうか、次の攻撃でヤツの水晶玉を割ることができれば盤面は変わる!つまりまだ戦い続けることが可能になるってわけだ・・・!

 しかし、本当に割れるのか?2回の攻撃でキズひとつ付かなかったあの玉が・・・?!


 躊躇い!オレは攻撃することを躊躇っている!

 だが・・・いくら考えてもヤツの言う通り他に選択肢はない!

 心臓から全身に冷や汗が送り込まれる!

 小刻みに震える両手で日本刀を握りしめ、オレは玉将へと立ち向かう!

「とぉーーーーー!!!!!」

   --ビキィン!

 瞬間、オレの顔面は凍りついた・・・

 玉は・・・割れない!

「どうやら結果は見えたようだな」

 日本刀を押し返されたオレは玉将の前で棒立ちになった。

 勝てない・・・

 そして真左から向かってくる邪悪な飛車の攻撃・・・

   --キュピーン!

 その攻撃は、黄金のバリアによってかき消された・・・

 あれ?オレは『成金の輝壁(メニマニシールド)』を発動していないぜ・・・?


「と金よ、お前はこんなところで諦めるような棋士ではあるまい……」

 こ、この声はっ・・・?!

「我を倒したその実力、これで終わりとは言わせぬ……」

 姿を表したのはなんと金将だ!なんでこんなところに!

 突然のことにオレは動揺した!

 それゆえ接近する角ミサイルに気づかなかった!しまった!もうバックステップでも回避できない!

   --チュドゥーン!

 ミサイルが直撃!オレは・・・白銀のシールドによって守られていた!?

「せやで~。ここで倒れたらワイも許さんで。だから、ここはワイらに任せて攻撃を続けるんや」

 銀将まで!何が起きたっていうんだ!?!?

 予想外の展開に、玉将の顔も驚愕に歪む!

「ま、まさかぁ!成金風情が古代魔法『合い駒』を使うだとぉ!」

 合い駒・・・?そうか!そういうことか!!完全に理解したぜ!!!


「将棋って取った駒は使えるんだな!!!」


 金と銀を盤上に置いた今!ヤツのループ戦法は崩壊した!

 ここからは詰将棋だ!


 オレは玉将へと肉薄し、日本刀と水晶玉が噛み合った!

「ぐぬぬ」

 何度も刀を交えて気づいたが、玉将は積極的な攻め手を持たない!基本、守るか逃げるかしかできないようだぜ!金将や銀将のように攻守共に活躍できるわけではないんだな!

 ふとオレはこれまでの戦いを思い出し、一つの疑問が頭に浮かんだ!

「そういえばぁ!玉将の軍には歩兵がいなかったなぁぁぁ?!」

 オレは日本刀を押し付けながら疑問を口にした!

 そう、オレは香車以上の駒としか戦っていないのだ!

「あ、当たり前だ。歩兵などという最弱の駒は吾輩には必要ない!」

 なるほど、そういうことか!

 だったらこの勝負・・・オレの勝ちだぜ!

「なぁ玉将さんよ・・・!『歩は必要ない』ってんなら、なぜ今オレに追い詰められてんだ?!

 オレは正真正銘、歩兵上がりの成金だぜ!?」

「くっ・・・!」

 ヤツは二の句が継げない!自分でも理解してしまったんだ、歩を軽視した結果がこれだと!

 そんな玉将の心が表出したのか、ついに!水晶玉にヒビが入った!

「これで詰み(トドメ)だ!」

 オレ高らかに最後の呪文を唱えた!


「『歩のない将棋は負け将棋』!!!」


「参りました~~~!!!」



<終章>


 世界は玉将の支配という恐怖から解放された!


 王将の城へと戻ったオレは玉将討伐の功労者として讃えられた!

 そして「龍王」へと昇格した!


 ・・・が、オレは城の棋士を辞めちまったんだ!

 所詮は成金のオレだし「龍王」の称号は重すぎるっていうか・・・

 それに世界も平和になったから、棋士としての仕事もそんなにないしな!

 今は町の料亭に勤めているぜ!

 玄関の明かりをつけて靴を探しやすくする仕事だ!


「どうだぁ!明るくなったろう!!!」


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