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異世界は猫(?)と共に(仮)  作者: 藤間ココロ
第一章 そこは異世界
8/40

幕間 夢1

 目が覚めると暗闇。これが僕の日常。


「不運」なんて言葉で片付けられるほど僕の人生は簡単じゃない。

 後から聞いた話だけど生まれた時から始まっていた。父親も母親もどこの誰だかわからない。産まれてすぐ僕は駅のコインロッカーに捨てられた。もちろんその記憶はない。

 僕の記憶は児童養護施設内から始まる。周りも親に捨てられたり、DVから保護されたりして明るい子はいなかった。みんな目の奥に暗い何かを抱えていたように思う。

 僕も一緒だ。捨てられた、それだけを抱えていた。

 小学校に行っても、中学校に行ってもそれは変わらない。養護施設にいるというだけで避けられるし、クラスで何かがなくなったりすると誰もがこっちを見ている気がした。

 将来の夢、そんなものはどこにもなかった。ただ漠然と早く一人になりたかった。

 4人部屋の2段ベッドの下で寝る僕は、いつしか布団を頭からかぶって寝る習慣になっていた。暗闇。一人になれる黒。

 里親の話も何度か出たことがあるが、僕の場合は一度も決まらなかった。中学2年の時に大きな病気にも罹ったし、施設の先生からはもっと前向きに明るくなれればなんて無責任なことを言われることもあった。

 そのたびに僕はどんどん大人と話すのが嫌になった。大人はなにもわかってくれない。友達もいないのでこの思いを共有できるわけもなく。ただ、一人、この世から逃げ出したかった。

 自殺を考えたこともある。でも死ねなかった。子供の僕には死ぬことも怖かった。首に押し当てたカッターに肉を切るほどの力を加えることが出来なかった。

 高校に入って二つの出会いがあった。

 一つは図書館にあった本。小学校でも中学校でも逃げる場所は図書館と決まっていた。たいていは読んでいるふりをするだけで誰からも話しかけられず時間をつぶすことができるという理由だけで入り浸っていただけだったのだが。

 出会ったのは最近流行し始めた異世界転生のファンタジーものだ。一度死んで異世界へ。チート能力で勇者になって、自分の人生をやり直す話。クラスごと転生したり、モンスターになったり。魔王になる場合もあった。

 人生の意味をなにも考えられなかった僕にぴったりだと思った。もちろんお話の世界で自分が転生するなんて思ってなかったが、物語の世界に入っているときはもう一人の自分になったみたいではまりまくった。夜、頭からかぶった布団の中で、妄想していた。

 もう一つの出会いは野良猫だ。高校から養護施設への帰り道に出会う茶色の猫。昔から人だけでなく動物にも好かれた記憶がない僕は最初茶色の猫を見ているだけだった。あるときふいにその猫と目が合った。なにかに惹かれるように手を伸ばすと猫も逃げずに触らせてくれた。初めて触った茶色の猫は、温かかった。生きている。

 にゃ~と鳴く声も耳に優しく、いつまでも撫でていた。いつしか僕は泣いていたらしい。涙の理由はわからなかったが、泣いている僕に猫は、いつまでも寄り添ってくれたのだ。

 肉球だけが冷たくて、体の温かさと反比例して、気持ちよかった。


 少しだけ、僕の人生に血が通ったように思えたが、数日後。

 放課後職員室に呼ばれた僕に担任が言い放った。

「お前がやったとは先生も思ってない。一応話を聞くだけだ。」

 今朝、図書委員が図書館の窓が割れているのを見つけた。昨日というかいつも僕が座っている付近の窓。

 当然僕に容疑がかかったというわけだ。

「あ、あの、僕・・・やってません。」

 大人の前ではいつもちゃんと話せない、くそっ。

「そうか、昨日図書館にはいたよな?」

「は、はい・・・」

「何時までいた?何か見なかったか?」

「17時ぐらいだと思ます。な、なにも見てません・・・」

「じゃあ、なんでそんな顔してるんだ?誰かに黙ってろとでも言われたか?」

「い、いえ・・・なにも。」

「ふ~ん、ま、今日のところはいいや。何か思い出したら言ってくれ。いいか、思い出したら必ずおれに言えよ、な。」


 容疑が晴れたわけではないが釈放された。


 帰り道、猫に会う。

「こんにちは、マロン。今日もいい天気だね」茶色が栗みたいなのでこの間からマロンと呼ぶことにした。マロンが肩に飛び乗る。慣れてきたみたい。

「今日はご機嫌だね。それにしてもマロンのふわふわいいな~」頭を撫でる。猫となら普通に話せるのに。


 猫とじゃれているとさっきの先生の話はどうでもよくなっていた。と、衝撃と共に地面に投げ出され、上空に、隕石??


 隕石の衝突で死んだ僕は神様に会い、マロンと共に異世界に転生することになる。

 人生をやり直すチャンスが僕に来た。マロンと「幸運」MAXと・・・


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