5話 強敵との戦い
にゃ??さっき見た魔物のスキルを使えるってこと??ニャオト~!!
「マロン、本当?」
「やってみるにゃ。空間同調!!」
あたしとニャオトが見事にその場から消えている。
「おい、どうした!!またダークエルフの仕業か!!!」
あ、イザークたちがびっくりしてる。解除!!
「あ、その、ごめんなさい。マロンがさっきの敵のスキル使えるようになったみたいで・・・」
「は?敵のスキルを??ほんとすげー猫だな、おい・・・」
「これで行けるかもしれません。作戦を考えましょう」
たぶん賢者スキルのおかげだと思うけど、細かいことはあとにして、まずは姫の救出を最優先にしよう。ニャオトたちの作戦会議の結果はこうだ。
あたしとニャオトが空間同調で近づいて、姫も空間同調させて脱出。シンプルだけどこれが一番いいかも。敵が強すぎるし。一度撤退して再度部隊を整えて迷宮攻略に来ることに。王国の強い部隊が来れば何とかなるかもってことだ。
問題は、
「問題は、ダークエルフと同じこの隠蔽スキルが見破られる可能性ですね。」
「2人だけで行くのも問題だが、姫にも隠蔽をかけるにはしかたない。ただ、もしみつかりそうになったら、逃げてくるんだぞ。お前たちの身に何かあれば姫も許してはくれまい。」
「わかりました。やれるだけやってダメなら必ず逃げてきます。」
伝令として護衛のうち2人は外に出て先に城に向かわせることに。イザークと残り2人は脱出の準備をして、ここで待つことに。
「では行ってきます。」
空間同調!!
「姫を、頼む。」
姿を消したあたしたちは奥に進む。消えてるあたしたち同士はなんだかお互いを認識できている。これは便利。
しばらく進むと、ゴブリンたちがいる広間の入り口が見えた。扉はない。
入口からそっと覗くと、いた。ゴブリンロード、ゴブリンメイジ、ゴブリンファイターと思わしき3匹と、奥の壁に姫が手足を鎖でつながれて立たされている。その横に、
「女のダークエルフ、だね」
姫の横に立っているのは黒い髪にぴったりボディーラインが見える鎧を着た耳の長い女。腰に細い剣を差している。
「大体想像通りの見た目だけど・・・こっちに気付くかな・・・」
―鑑定シマスー
名前:ゾラ 種族:ダークエルフ 年齢:215歳 性別:女 ジョブ:「暗殺者」
レベル80
所持スキル:「刺突攻撃」レベル40「闇魔法」レベル50 「空間同調」レベル20
所持スペシャルスキル:「暗殺」レベル10
「魔物で初めてスペシャルスキル持ちか。名前もあるし、暗殺って・・・」
様子をうかがっているとなにやらゴブリンロードたちにダークエルフが命令しているように見える。
「ここまで追ってくるかしら。あんたたち、すぐに殺しちゃだめよ。この女に絶望を与えることも目的を達成させるために必要なんだから。」
「はっ!」
普通のゴブリンは人間の言葉を話せるようには見えなかったけど、こいつらはしゃべれるみたい。
「それじゃ、こっちに来るように少し挑発してこようかしら。この女を見てるのよ。」
命令するとダークエルフが消えた。やばい、こっちに来る。空間同調を取得したあたしにはさっきよりもダークエルフの気配が明確に分かるようになっていた。入口に向かって歩いてくる。ニャオトと二人で壁によって避ける。気付くな、気付くな~
ダークエルフの女はこっちに気付かずに出ていった。ニャオトの幸運MAXのおかげかも。
「いくぞ。」
壁沿いに中に入り、ゴブリンたちに近づかないように姫のもとへ進む。。
「ゾラ様はいつも細かいな。」ゴブリンロードが言う。
「こいつが逃げれるわけもないし、あいつら来たら殺すだけだし。」ゴブリンファイターが言う。
「慎重にってことでしょ。私たちとは頭の出来が違うのよ。」ゴブリンメイジが言う。
「それは、まあ、そうだな。」
「さて、戦闘前の準備運動でもしようや。」
3人は入口に向かってそれぞれ素振りやイメージトレーニング?を始める。
ゴブリンロードは身長が2mほどあり、太っている。服装はゴブリンとほぼかわらない粗末な布。額の角が3本もあるにゃ。ニャオトの体ぐらいありそうな大きい棍棒をブンブン振り回している。
ゴブリンファイターは身長はゴブリンロードより少し小さいぐらいで、体形はスリム。額の角が2本。こちらは幅が広くて長い剣を振っている。
ゴブリンメイジは女だからか頭からすっぽりかぶるタイプのローブを着ている。角は2本。杖を持っていて、なにやらブツブツと唱えている。
そもそもしゃべることができるこの3体はかなりの知能をもっているのだろう。あ、あたしは別格ね。
姫のもとにたどり着くと、そおっと、ニャオトの剣を押し当てる。姫を捕らえている丈夫そうな鎖が結構簡単に切れる。やっぱり切れ味抜群だ。
「え?」
「しーーー。姫、静かに、ナオトです。助けに来ました。」
「ナオト?」
「はい、今からマロンの魔法で消えるので、驚かないでくださいね」
空間同調!
姫の姿も消える。ニャオトが手を引いて、また壁沿いに出ていく。姫は驚いているみたいだが、今のところ騒がないで我慢している。と、
「おい!女がいないぞ?!!」
ゴブリンたちが気付いてしまった。
「入口を固めろ、まだこの中にいるはずだ!」ゴブリンロードの冷静な判断で3匹は入口を守る。ゴブリンロードとゴブリンファイターが並んでそれぞれ棍棒と剣を手に、その後ろに杖を構えてゴブリンメイジが周囲を警戒する。
「出てこい!!」
これはまずいにゃ。
「やるしかないかな・・・マロン、聞いて。マロンが離れたところから魔法で攻撃をして注意を引き付けて、その間に僕が後ろに回り込んで攻撃。少しでも混乱させることが出来れば逃げ切れるかもしれない。」
それうまくいくかにゃ?
「時間をかければダークエルフも戻ってくるかもしれないし、時間がない。姫は僕と一緒に。」
ニャオトの言う通りやるしかないか。
―最適ナ作戦ヲ追加提案シマスー
「賢者」が作戦?頭の中に賢者の提案が伝えられる。それをニャオトと共有する。ニャオトは賢者の作戦を吟味する。
「賢者って作戦まで考えてくれるんだ。僕たちレベルとか全然低いし、勝てるかどうかわからないけど、やるしかないよね。賢者の言う通り、幸運MAXもあるわけだし・・・姫は僕の攻撃の後、ここから出て隠れてください。」
「・・・私は・・・足手まといね、わかったわ。言う通りにする。」
「ごめんなさい、そんなつもりじゃなく、姫を守るために、です。」
「わかってる。お願い、死なないでよ。」
「・・・はい。マロン、行くよ。」
あたしはさっき姫が掴まっていたあたりに走っていき、離れたところからゴブリンロードたちに狙いを定める。。
ニャオトたちはゴブリンロードたちの真横に回り込み、待機する。準備完了にゃ。
いくにゃ。あたしは「賢者」を信じるのみ。
―土魔法ヲ発動シマスー
最初はゴブリンロードとゴブリンファイターの2匹への落とし穴。突然足元に空いた背丈ほどの穴へ2匹が落ちる。
あたしは魔法の発動と共に空間同調が切れて姿が見えるようになった。
「ね、猫??」残ったゴブリンメイジが驚愕の表情。
―水魔法ヲ発動シマスー
落とし穴に落ちた2匹の真上に水の塊が現れ、穴の中に降る。あわよくばこのままおぼれてくれないかにゃ。
―風魔法ヲ発動シマスー
ほぼ同時に、残ったゴブリンメイジに風の刃を飛ばす。突然の落とし穴に気を取られたゴブリンメイジだったが、風の刃に気付くと同じ風魔法で威力を相殺させる。でもあたしの魔法の方が強かったみたいで、腕の当たりに切り傷が出来たみたい。レベルは向こうの方が上なんだけど・・・
一瞬隙が出来たゴブリンメイジに、ニャオトが渾身の力を込めて腕を振りかぶり鋭い剣撃を走らせる。斬攻撃のスキル発動でニャオトも姿が見えるようになる。
ゴブリンメイジは直撃を避け、両手で持った杖でニャオトの剣を受け止めるが、ニャオトの剣は杖を切り裂き、ゴブリンメイジの首筋に入った刃は頭を跳ね飛ばす。
ゴブリンメイジ死亡。
姫は姿を消したまま、広間の入り口から出て、隠れる。
姫が広間を出た直後、2匹が落ちた穴から爆音が響く。ゴブリンロードの棍棒による一撃で水が吹き飛んだようにゃ。。
―火・風魔法ヲ同時発動シマスー
火の竜巻が穴から這い上がってきた2匹に向かって飛んでいく。
―土魔法ヲ発動シマスー
さらにゴブリンロードめがけ電柱ほどもある土の槍が飛ぶ。
火の竜巻が目くらましがわりになり、土の槍がゴブリンロードに命中する。ただ、火の竜巻も土の槍も大きなダメージを与えたようには見えない。
と、ゴブリンファイターの真後ろからニャオトが剣を振りかぶる。ゴブリンファイターが振り返りざまニャオトの剣を受け止める。そのまま幾号か打ち合う。
―土魔法ヲ連続発動シマスー
ゴブリンロードの周囲に土の壁を作り隔離する。
ゴブリンファイターには、片足だけが落ちる落とし穴を発動。
足を取られてバランスを崩したゴブリンファイターの心臓あたりに飛び込んだニャオトの剣が突き刺さる。
ミスリルソードの付与効果、即死効果により、ゴブリンファイターが即死する。
ゴブリンロードを囲った土の壁が内部からの攻撃により破裂して壊された。
瞬時にゴブリンファイターの死を確かめると、ゴブリンロードはあたしの方に向かって棍棒を振りかぶりながら走ってくる。
―土魔法ヲ連続発動シマスー
土の壁を次々に発動する。ゴブリンロードの棍棒の一振りごとに壊されるが、さらに出し続ける。
「これはどういうこと!!!!」
金切り声に見ると入口にダークエルフの姿が。