3話 浄化
なかなか時間を作るのがむずいっす。
人間のメスたちの説明によると、彼らがここに来た理由は「迷宮」の「浄化」。
この世界にはいくつかの迷宮があり、魔物が住み着いている。なぜ迷宮が出来るかはわからないことも多いが、迷宮の中の魔物は平地にいるものより強く、ほうっておくとどんどん迷宮が大きくなり、そのうち地上に魔物があふれ始める。迷宮の奥にある迷宮核という物を「浄化」させることでその迷宮は消滅するらしい。そして「浄化」が出来るのはスキル「浄化」を持っている者だけで、この人間のメスが「浄化」を持っていると。
浄化って、神様が言ってた魂の浄化とはまた違うのかにゃ??
―鑑定シマスー
名前:ユリア・グラッド 種族:人間 年齢:18歳 性別:女 ジョブ:「浄化者」
レベル20
所持スキル:「浄化」レベル5「風魔法」レベル3「回復魔法」レベル5
「状態異常回復魔法」レベル7「状態異常耐性」レベル5
装備:強化杖 付与効果:MPUP(大)魔攻UP(小)
輝きのローブ 付与効果:HPUP(小)物防UP(小)魔防UP(小)
防魔のネックレス 付与効果:素早さUP(小)状態異常耐性
―鑑定シマスー
「浄化」魔物ヤ魔力デ汚染サレタ場所ヤ物ヲ浄化スルスキル。
「状態異常回復魔法」毒ヤ麻痺、催眠ナドノ状態異常ヲ回復スルスキル。
ニャオトに鑑定結果を共有させる。言っていることは間違ってないみたいだにゃ。しかも結構強そうにゃこの人間のメス。
「それで、先ほどはなんで襲われていたのでしょうか?あ、すみません。」
「この先に最近発見された迷宮があるんだけど、その「浄化」に向かう途中でなぜかゴブリンに襲われたのよ。」
「ゴブリンぐらいなら本当はなんてことないのだが、姫の浄化までの消耗を避けるために護衛の俺たちだけでと思ったんだがな。正直本当に助かった。」
あれに苦戦しているようではこの後も大変だと思うにゃ、ね、ニャオト?
「その、迷宮ってもっとたくさん魔物が出てくるんですよね?大丈夫ですか?あ、いや、その、すみません。」
「迷宮の中はさっきみたいに囲まれることは少ないし、今回の迷宮程度であれば大丈夫だ。出来立てだと2~3階層ぐらいで核までたどり着くしな。」
「なら、はい、頑張ってください。あ、すみません。」
―感知シマシター
魔物にゃ。話に夢中で気が付くのが遅れた。ゴブリンとは違う感じがする。
―鑑定シマシター
種族:サンダーウルフ 性別:男 ジョブ:なし
レベル10
所持スキル:「爪攻撃」レベル5「雷魔法」レベル1
黒い狼が8体。ゴブリンより強いし、なにより、
「魔法が使える??」
木の陰から狼が吠えた。急に黒雲が10mぐらい上に出来始めた。雲の中がピカピカと光り始め、ゴロゴロと音もする。今にも雷が落ちそうにゃ。
「くっ」
ニャオトが黒雲の方に向かってジャンプする。雷が落ちると同時に剣をふるう。
ミスリルソードの付与効果、魔力吸収。その効果で雷が剣に吸収され、まだピカピカ光っている。
「きゃ~~っ」人間のメスが叫ぶ。
突然の出来事に王女一行はなすすべがなかったが、雷が消えるとイザークたちが狼の群れに向かって動き出す。
「にゃ」風魔法で風の刃を飛ばす。数頭の狼を切り裂き、周囲の木を伐り飛ばし、見える範囲を広げた。
イザークたちは言うだけあって強かった。
魔法を使わせる間もなく狼たちを切り倒していく。
ニャオトは人間のメスを守る位置にいた。
「魔法を、吸収したの?」
「あ、その、はい、ごめんなさい・・・この剣ならもしかしたら出来るかと思って試してみました・・・」
「剣もすごいのね。」
イザークたちの攻撃を縫って、1頭の狼がこちらに向かってくる。それをニャオトが一閃。吸収した雷の効果もあり、切られた後に狼は黒焦げになった。
ドロップアイテムが出る。収納のための穴が空間に空き、ドロップ品を収納する。
―鑑定シマスー
サンダーウルフの皮。レアドロップ。
「収納まで・・・」戻ってきたイザークのため息交じりの声。
「マロン、全部はダメじゃ・・・」
「あ~、気にしないでくれ。俺たちはドロップ狙いじゃないからな。取っといてくれ、猫さんや。」なんだいいやつじゃにゃいか、人間のオス。ついでに狼の死体も燃やしてやるにゃ。
火の玉!!これでよし。
「それにしてもなぜこんなに魔物が・・・もしかしてこの先の迷宮に何かあるのか・・・」
「だからなに、イザーク?行くしかないのよ、わたしにはそれしかない・・・。」
「・・・あの、あ、・・・」ニャオトが何かを言いかける。皆がニャオトに注目する。
「あ、え~と、その、僕たちも一緒に行こうか、ね、マロン?」
あたしに振るの??
「にゃ」
「というわけです、はい。」
「そりゃあ来てくれるなら助かるが。」
「急いでるわけではないの?」
「まあ、えっと、はい。」
「なら来てもらえるかしら?もちろん後日報酬はちゃんと払うわ。」
「あ、え~と、その、はい。」
ついていくことになったのね、はい。
ナオトとマロンも加わった迷宮討伐隊は歩を進める。
あ、今気が付いたけど、お腹すいたにゃ~。迷宮とやらに入る前にご飯食べたいにゃ。ニャオト~
ごろにゃん。
「え~と、ちょっと、待ってね・・・」
「ん?どうした?」
「マロンが、お腹すいたと言ってるんですけど、ちょっとご飯にしてもいいでしょうか?」
「そうするか、姫いかがでしょうか?」とイザークが馬車の中の人間のメスに問いかける。道中の消耗を避けるために移動中は馬車のなかに人間のメスはいる。
「そうね。」
「・・・マロン、そういえば食べるものないよ、なにも。」
そういえば何も持ってないにゃ。でもお腹すいたよ~。
―空間収納ヨリ、食料ヲ取リ出シマスー
顔の横にいつものように空く穴から、何かが出てきた。何かが盛られた皿が一つ。これは・・・ペットフード?????丸く固められたいい匂いのするやつ。向こうで食べたことあるやつだ~~。がぶがぶ。うま~~!!これいい、うまい!
「・・・これ、猫のえさ、だよね?なんでも出てくるんだ・・・」
がぶがぶ、かは、飲み物欲しい
―飲ミ物ヲ取リ出シマスー
今度は皿と、皿の中に白い液体・・・ミルク。ごくごく。
「ミルクまで・・・人間用のはあるのかな?」
―人間用ヲ取リ出シマスー
ニャオトの声が聞こえた途端に、また出てきた。今度は皿ではなく、紙袋。ニャオトが恐る恐る紙袋のなかをのぞくと、固形の物質が入っている。
「カ○リーメイト???たしかに保存にも持ち運びにも便利で、栄養バランスもいいけど、僕苦手なんだよね・・・ぽり、うまい!!あれ、うまいよ、ボソボソ感が強いカ○リーメイトと違って、しっとりして濃厚な味。体に浸透して力がみなぎる感じ。ふわ~、うまい。」
「・・・おい、それうまいのか?」
「はい!おいしいですよ、あ、みなさんの分もあるのでどうぞ。」
「すまん、ではまず俺が・・・うまい!!ただの保存食じゃないな、これは。」
「姫もどうぞ。」
人間のメスもニャオトに勧められて食べる。問題ないみたいだ。おいしそうに食べている。他の人間のオスも食べ始め、みんな満足しているようにゃ。さすがあたしの「賢者」。
あたしも全部食べてお腹いっぱい、眠くなる。馬車に乗って楽しよう。