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異世界は猫(?)と共に(仮)  作者: 藤間ココロ
第五章 魔王城
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幕間 夢6 選択

「で、お前はどっちにつく?生きる側か、死ぬ側か」


 隊長の顔を見ればこれは冗談じゃないことはすぐわかる。

 この返答を間違えれば、僕も加助と一緒になる。


「あの荷物、あれはなんだったんですか?」


「おい」

 隊長の声に誰かが動いて、包みを持ってくる。

 その包みをあけると、中にあるのは、あの黒い練り物。


「これはな、阿片だ」


「・・・アヘン?」

「これを燃やして煙草のように吸うと、気持ちよくなるのさ」


「それが、なんで・・・」


「まあ、詳しく知る必要はないが、要は俺がこれで金もうけをしたってことだ。で、まだばれちゃいけなかったんでな、舐めてしまった加助を殺すしかなかったんだ」


 え?そんな理由で?


「ぼ、僕たちのこの活動は、幕府を倒すためじゃなく、隊長の金もうけのためにやっていたとでも?」


「ほら、そこだ。菊太郎、お前がほかのやつと違うのは。今の会話だけでそこまで理解するやつなんていねえんだよ。その通り。俺がやってるのは幕府討伐じゃねえ、単なる金もうけよ」


「みんなをだましたってことですか!?」


「いやいや、全部じゃねえよ。幕府の内情がぼろぼろなのは本当だし、外国からこの国を守らなきゃねえのも本当だ。そのために仲間を増やすのも必要だった。西国の大名が幕府を倒そうとしている。そう、これは将来必ず起こる必然だ。誰かがやらなきゃねえ。誰かが、な。別に俺じゃなくてもいいって、そういうことだ」


「わかりません!!!」


「そうか?この大きな流れはどうやっても変わらないんだ。その流れの隙間で、こっそり金もうけを考える小物が一人いたところで歴史に変化はない」


「一体なんの話をしてるんですか?」


「まあ、あまり詳しくは話せないがな、菊太郎。おれはお前を買っている。これは間違いじゃない。この国のこのあとの動乱にただ巻き込まれて死ぬなんてもったいない。おれと手を組んで、荒波を乗り越えようじゃないかって話だ」


「加助は?」


「残念ながらあいつは馬鹿だったからな、こっち側には来れなかったよ」


「そ、そんな・・・」



「実は、この本拠地は今夜捨てる。いまは引っ越し準備中なんだ。また来るから、それまで考えておいてくれ、菊太郎」


 後ろにいた隊員にまた目隠しをされ、部屋からみんなが出ていく。


 ここを捨てる?阿片?だめだ、情報が多すぎて整理がつかない。どうしたらいい、どうしたらいいんだ・・・





「おはなちゃん、どうだった?」

 菊太郎さんのお母っつあんに聞かれる。


「ええ、加助さんが川からあがったのは本当みたい。わたしが行った時にはもう菊太郎さんはいなかった」

「そう、どこいったのかしら・・・」


 加助さんの突然の死、菊太郎さんが行方不明。一体なにが起こってるの?

 昨日聞いた話、憂国隊、それが絡んだ話だってのはわかるけど。

 例のお屋敷の場所をもっと詳しく聞いておいたほうがよかった。極秘任務・・・。今の時点ではだれにも言えない・・・。




 ずっと放置されて何時間たったのか。

 何人か部屋に入ってくる。


「ちょっと二人にしてくれ」

 隊長の声だ。


 目隠しが外されて、目の前には隊長ただ一人。


「どうだ?考えはまとまったか?」


「・・・正直難しいです」

「まあ、いきなりだからな。しかたねえ」


「で、でも、死にたくないです・・・」


「そうか」

 僕の怯えを感じ取って、にやりと笑う隊長。


「菊太郎、俺もお前を死なせたくない。何といってもお気に入りだからな」

「あ、ありがとうございます」



「すべてを伝えたうえで、お前はこっちに付く。加助のことは忘れる、それでいいな?」


「・・・はい」


 がばっと、隊長の大きな体に抱きしめられる。

「良かった、良かった・・・」

「・・・隊長」



「隊長、ここを捨てるって言ってましたが」


「ああ、そろそろここもばれそうだしな。あ~、でも一番の理由はここが燃えるからだ」


「え?」


 体を離して顔を近づける。

 ぎょろりとした眼の奥に、なんとも言えない感情が含まれる。なんだこれは?


「また揺れるのさ、今夜」


「じ、地震が起きるとでも?」



「ああ、前のよりもまた大きくなるみたいだ」


「な、なんで隊長は、その、地震が来るのがわかるんですか?」



 立ち上がって背中を向ける隊長。

「なんでかな、昔から少し先の未来が見えることがある。それも不幸ごとがほとんどだ。

 隣のばあさんが死ぬとか、鉄砲水が出るとかな。寺に預けられたのもこういう不思議な力を怖がった両親がな、俺を手放したんだよ」



 また判断が難しい内容だ。理解が及ばない。

 未来の不幸が見える。その異能がどういう人生を隊長に与えたのだ・・・。


「この屋敷が燃えるのも見えている。不都合なものはここが燃えることでほとんど消える。騒ぎに乗じて俺たちは京に上がる。憂国隊は京でこそ本当の活躍ができるのさ。ただし、連れて行けるのは最低限の数だ。俺が信頼できる者たちだけ」



「京都・・・」

「そうだな、ここに多くの死体が出る。菊太郎、お前もここで死んだことにして、新しい人生を俺と歩むんだ」

「え?」


「小さな乾物問屋の跡継ぎじゃなくて、世の中を動かす大物になろう。俺の力とお前が手を組めばこの激動の世を面白おかしく引っ掻き回せるぜ!」



 この人はどんな未来を見ているのだろうか。

 今の人生を捨てて、新しい自分として生きる・・・。



「なあ、菊太郎。楽しくいこうぜ」


「そ、それは無理です。僕は家族や友達を捨てて生きるなんて、できません・・・」


「なに?」


「ごめんなさい、それは無理です。でも、このことは黙ってます。誰にも言いません。お願いです。逃がしてください」


「菊太郎・・・俺のことが理解できないか?」


「す、すみません、今はわかりません・・・」


「そうか・・・んじゃこの話はなしだ。」


 さっきまで熱に浮かれて話していたような表情だったのが一気に冷め、感情を感じさせない表情になった隊長は部屋を出て行った。


 このままここにいれば地震が起きてこの屋敷が燃える。

 でも、あの話に乗るわけにはいかなかった・・・。どうしたらいいのか・・・



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