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異世界は猫(?)と共に(仮)  作者: 藤間ココロ
第四章 塔
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19話 変化

 公爵との戦いの後始末は混迷を極めた。


 棺から救出した姫は次の日に目を覚ましたがなにも覚えていなかった。2~3日の休息後体調も戻った。

 眷属と化した公爵の部下たちも無事。同じように眷属になっていた間の記憶は消えていた。


 イザークからの連絡を受けて王都から部隊がやってきて、北方領の治安維持を務めることになった。何も知らされない領民は不思議がっていたが、公爵の病死と伝えることで大きな騒ぎにはならなかった。


 地下室は封鎖。後日研究チームが組まれて調査されるみたいだ。


 しかし、国の中枢に与えた打撃は大きかった。北方の英雄とされていた公爵の裏切り。魔王軍がこんなにも内部にいたことへの後手の対応。無事とは言え王女を攫われたことも大きな問題となった。


 王都からの部隊と入れ替えにあたしたちは王都に戻ることになった。


 その間、ニャオトは・・・。ニャオトは気丈に振舞っていた。

 イザークたちの手伝いをして治安維持に一役買っていた。ただ、いつものニャオトではなかった。わかりやすかったのは夜寝ているとき。うなされていた。公爵を斬ったときのことが頭から離れないのだろう。


 そして、あたしにも大きな『変化』があった・・・


「ニャオト~、腹減ったにゃ~」

「もうすぐお昼ご飯だからもう少し待ってよ」

「にゃ~」

「それと、その恰好なんとかならないの?」

「なんとかって?」

「そ、その、ちゃんとした服着てくれないかな?」

「だって楽なんだもん。どっちかというともっと脱ぎたいぐらいにゃ」

「そ、それはだめだよ!」


 ベッドの上でゴロゴロしてるあたしは、薄い布を羽織っただけの肢体をさらしている。


 そう、吸血鬼の『変化』スキルを取得して、人間にも変化することができるようになったのにゃ。

 ニャオトからは他の人間にはまだ見せるなと言われているので、今のところニャオトの前だけだけど。

 まあ、それでいいんだけどね。


 一応老若男女問わず変化できるみたいなんだけど、ニャオトの反応が一番面白い大人のメスになっている。


「ちょっとぐらいなら触ってもいいにゃ」

「な、なに言ってるの、マロンは猫だろ」

「猫ならいつものように撫でてみたらいいにゃ」

「くっ・・・結構です・・・」


 なんてからかってる。

「・・・何か、あたしに出来ることはない?」


「・・・大丈夫、だよ」


 その顔、大丈夫じゃない・・・




 こんなことしてるのもほんの少しの間。


 北方領に魔物、しかも魔王直轄クラスが現れたせいもあり、国中が厳戒態勢だ。



「マロンく~ん、もう我慢できないよ~ん。早く付与魔法の研究しよう!!」

 おじさんがまたはしゃいでる。

 ニャオトの訓練中はまた付与魔法おじさんと研究か・・・


「マロン君と僕、突き詰めていけばこの世界を変える発明が生まれるはずなのだ!!」


 は~、そうですか。


「で、今回はどんな新しいスキルを手にしたのかな?」


 北方領の戦いで得たのは『変化』と、『幻惑』、『隠蔽』『結界魔法』だにゃ。『吸血魔法』は取得できなかった。賢者いわく吸血鬼だけが使えるものらしいからにゃ。

『隠蔽』は鑑定を惑わすためのものだから、付与には使えにゃい。



『変化』を内緒にするなら、『幻惑』と『結界魔法』を見せるとするにゃ。

 まずは、幻惑!


「お~、これはすごい!!武器への付与よりも拠点防衛などにつかえそうだ」



 んで、結界魔法!


「なんと結界か!?これは防御に使えそうだ!防具にも行けるか。防衛全般はもちろんだが・・・城壁と、ん~可能性が広がるな~」


 あ、自分の世界に入ってしまった・・・

 とりあえずその辺に置いてある魔石に付与してっと。

 このあとはニャオトと王様に呼ばれてるからあたしは行くよ~、じゃあね~






「勇者よ、これを見てくれ」

 王様に呼ばれたあたしたちは一枚の紙を見せられた。


「これは?」

「魔王からの、いわば宣戦布告、だな」

「魔王からの?」


 紙に書かれていたのは魔王軍がいよいよ侵攻を始めるとの内容らしい。


「そのうえでこう書かれている。勇者を差し出せばその侵攻を止める、と」

「僕を?」

「そうだ。これはこの国だけではなく世界中に配られているらしい」

「そうですか・・・」

「むろん、こんな話を信じてはおらん。そもそもこの宣戦布告に意味もない。すでに北方領のように謀略は始まっておる。これも陽動の一つだろう。ただ、これで魔王の狙いの一つが勇者にあることもわかった。くれぐれも気を付けてほしい」

「・・・わかりました」



「と、もう一つ、こっちが本題だ」

「何かありましたか?」

「東の森の奥地に突如として塔型の迷宮が出来た。これの調査に行ってほしい」

「塔型の迷宮、ですか」

「うむ。少々厄介な場所でな。すぐ近くにエルフの自治領があってな」

「エルフ、ですか」

「知ってるかわからんがエルフという種族は排他的なところがある。自分たち以外の種族を信用しておらん。今回も手出し無用と連絡が来ておるのだが、どうもうまくいってないようなのだ」


 そんなややこしいところにニャオトを行かせたら騒動の元じゃないのかにゃ?


「勇者として、魔王討伐の一環としての行動をお願いする」

「わかりました。行きます」


 これを受けるのね。勇者としての行動、ね。


「今回は姫を同行させることは出来ぬ。マロンの『浄化』に期待する」

 にゃ~。


「詳細は明後日の出発までに伝える。くれぐれも慎重に」

「はい」


 今回は2人旅にゃ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 目の前が真っ赤だ。

 手には人の肉と骨を斬った嫌な感触が残っている。

 笑みを浮かべたままの公爵がボロボロに崩れていく。


 これは殺人だ。


 初めての殺人。



 魔物を殺したときと全く違う感触。


 自分の力を認めてくれた人を、殺した。


 この先も人を殺し続けるのだろうか。


 魔王を倒すためにあと何人殺せばいいのか・・・。


 皆が褒め称えてくれる。

 殺人者の僕を、よくやったと。姫を救ってくれたと。


 僕は殺人者だ。


 勇者のはずなのに。魔王から人々を守る存在。

 その為に人を殺さなくてはいけない。


 ダメだ、何も考えたくない。


 逃げろ


 ダメだ


 壊れる・・・



 もう嫌だ



 助けて


 助けて、誰か・・・





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あれに何か意味があると思うか?」


「すみません。魔王様のお考えは我らには」


「まあ、特に意味はないさ。人間どもは誰も真剣には受け止めまい」

「では、何故?」

「余興だな。人間どものために戦っても、所詮異世界人よ。異物を排除したがるのはどの時代もどの種族も変わらん。強ければ強いほど疑いの目も強くなるというものだ」

「なるほど」


「ふん、簡単に壊れてもらっては面白くないがな。せいぜいボロボロになってここにたどり着くが良い」

「その前に我らがやっても構いませんか?」

「もちろん。ここに来れないのであればそれまでよ。だが、勇者を侮るのはやめておけ」

「はっ!」



「次は、龍族か。首尾よくあの目障りな猫を捕まえてほしいものだ」

「魔王様のご命令の通りに!」




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