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異世界は猫(?)と共に(仮)  作者: 藤間ココロ
第二章 勇者
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9話 城と、王様と、勇者

 王都へと向かう旅は特に何事も起こらなかった。時折出現する魔物も街道近くにいるのはそんなに強くはなく、レベル上げもかねて倒していたが楽なものだった。

 5日後、王都に着いた。


 森の町とはなにかもが違うスケール感。城壁の高さはとてもジャンプして乗れるものではなく、あたしから見ると空に届きそうなぐらい。それがどこまでも続いている。城門もものすごい幅でこんなものどうやって開け閉めするのかさっぱりわからにゃい。

「この門、どうやって開けるんだろ・・・」

「この門はな、付与魔法が施されたもので、まあ、魔法で開閉するんだよ。」とイザーク。

「す、すごいですね。」

 道中もニャオトは彼らに興味からの質問をたくさんしていた。王国のこと、魔法石のこと、付与魔法のこと。初めてのことばかりで止まらなかった。で、少しは卑屈なの治ったかにゃ。

 城門の前には王都にはいるためにたくさんの人や馬車が並んでいた。

 馬車はその列から少しずれて、城門よりは小さな、でも立派な門に向かっていく。門の前にいた門番が馬車に気付くと、

「開門―!!」大きな声とともに門がすーっと開いていく。馬車は止まることなくその門をくぐっていく。偉い人用の門なのだろう。

「すまないが町の中では窓にカーテンをさせてもらう。姫の警護のためだ。」

 王都を見るのを少し楽しみにしていたニャオトががっかりしていた。

「ごめんね。」姫がニャオトの顔を見て言う。

「あ、いえ、大丈夫です。また次の機会にゆっくり見て回りますから。」

 馬車は静かに王都を進む。しばらく進んだ後外から声が聞こえてきて、今度は扉が閉じる音。

「着いたようだ、さあ、降りよう。」


 馬車を降りるとそこはたぶん城の中。

 そこで待っていた人間のメスに案内され姫とイザークたちが先に進んでいく。もう一人の人間のメスに少しだけ待たされた後にあたしとニャオトが進んでいくと扉。


「この先は謁見室です。どうぞ。」案内してくれた人間のメスに言われ、中に入る。

 通された謁見室の正面には豪華な椅子に座った王様がいる。金色の髪に金色の口髭。その両脇に先に行った姫や偉そうな人がたくさん並んでいる。

「ナオト、で良かったか。今回の働き、あっぱれである。」あ、王様がしゃべった。

「は、はい。」

「褒美を与えよう。それまでゆっくりと過ごしてくれ、以上だ。」

 え?おしまい??


 謁見室から離れた小部屋に移される。ニャオトにはお茶、あたしにはあったかミルクが出された。少し待ってると姫と王様が2人の護衛を連れて部屋に入ってきて、椅子に座る。

「すまないな、謁見となるとわしも立場上あれ以上は難しくてな。姫を助けてくれて本当にありがとう。」軽く頭を下げる。

「あ、いえ、そんな。」

 それを見てニャオトがかしこまる。いつも通り。


「少し込み入った話になると思うが、聞いてくれ、転生者ナオト。」

 え?ニャオトも驚いている。

「やはり間違いなかったか。」

「僕のことを知っているのですか?」

「いや、この世界には過去にも異世界よりの転生者が何人か来たことがあるのだ。言い伝えに残るその転生者の特徴がナオトそのものなのだ。」


 異世界より現れし転生者、黒髪黒目にて人を超えた力を持ち、魔法の力は魔人をも超える。勇者として魔を打ち砕く。


「勇者、ですか。」


 この世界では数百年に一度魔族の王、「魔王」が現れるらしい。普段バラバラに暴れている魔族や魔物が魔王の元に統率され、人間社会を蹂躙する。

 その時ほぼ同時期に「勇者」もこの世界に現れ、魔王討伐にあたる。このグラッド王国はそもそも前回の魔王と勇者の戦いのあとに生き残った人間たちが建国した国だということだ。

 魔王と勇者の直接対決は誰も見ることはできなかったが、魔王は倒され、そして、


「そして勇者は人々の前から姿を消したと言われておる。」


 姿を消した、ね。


「もしかして元の世界に帰った、とかですかね。」

「それを断言できる情報は我々にはない。なにせ600年も前の話だからな。詳細は伝わっておらん。ただ、伝承では過去すべてで同じ結末になっている。魔王は倒され、勇者は姿を消した。」


 姫もその話知っているのだろう、下を向いてニャオトの方を見ていない。


「魔王というと、迷宮で会ったダークエルフが最後に叫んでいました。」

「らしいな。まだ今回の魔王の存在が確認されたわけではないが、魔物の活性化が各地で報告されている。勇者も現れたのだ、間違いないだろう・・・。魔王はいる。」


 王様の言葉にニャオトは何と言うか迷っているようにゃ。というかあの勝手な神様もこんな話してなかったにゃ。


「唯一今までと違うと言えば、その猫、だろうな。勇者に従者がいるなど聞いたこともない。一緒に異世界から来たみたいだからな。」


 あたしのこと?やっぱり特別なんだにゃ、あたし。猫(?)だけど。


「あ、あの、僕はこれからどうしたらいいのでしょうか・・・。」

 思いつめた顔で、でも真剣にニャオトが王様に訴える。


「・・・好きにすればよい。」


「え?」


「転生人、勇者、魔王。全てこちらからの勝手な話だ。何をなすべきかはお前が自分で決めるしか無かろう?娘を助けてくれたことは本当に感謝しておる。褒美も用意する。このままこの国を出ていくのも誰も止めぬ。」


「お父様!!!」

 姫が王様の言葉に反応して王様に縋りつく。


「ユリア、人は自分で決めた道しか歩めぬ。無理強いしても何もならん。」

 姫はまたうつむく。その両手は固く握りしめられている。


「勇者、いや、ナオトよ。今すぐ決める必要もないだろう。ゆっくりしていってくれ。あとで人を使わす。いくぞ、ユリア。」

 護衛と共に王様と姫が部屋を出ていく。



「いっちゃったね。」

「・・・うん。」


 これを慰めるのはやはりあたししかいないってことだにゃ。

 ニャオトの肩に飛び乗って、頬に肉球を当てる。ピタ


「冷たくて気持ちいい。」

 でしょ。

「正直、異世界に転生出来て、チートもらって、この展開は予想できなくもなかったけど、でも、僕でいいのかな・・・。勇者ってもっとすごい人がなるものだよね、たぶん。」


 あたしにはそういうのわかんにゃいもの。そもそも魔王とか勇者とかわからん。


 コンコン。ノックの音。


「失礼いたします。お二人のお世話をさせていただきます、エリーゼと申します。」

 扉を開けて入ってきたのは、フリフリの服を着た、人間のメスだ。


「メイド、さん。」

 メイドっていうのか、にゃるほど。

「上から仰せつかっております。この城にいる間はなんでもお申し付けくださいませ。まずはお部屋にご案内いたします。ナオト様、マロン様。」


 メイドに案内されてベッドのある部屋に通された。メイドから説明されたのは、姫を助けた褒美が用意されるまでの2日間、この城に滞在するということ。滞在中はメイドの案内で城内の色々なところを見学可能だと。城の外に出る許可は今のところ出ていないということ。


「何かご質問は有りますか?」

「あ、いや・・・今のところは、ないです、はい。」

「では、本日はこの後ご夕食をご用意させていただきまして、お休みなっていただきます。明日の朝食後に城内見学といたしましょう。ごゆっくりおくつろぎなさってください。」


 メイドが出ていく。

 メイドがいなくなるとニャオトはベッドに倒れこむ。


「さすがに疲れたよ・・・」

「ニャオトはこの世界を楽しんでるのかと思ってたにゃ。」

「それはそうだけど・・・。本の中でなら勇者でもよかったけど、いざ現実に魔王と戦うとかって言われても、僕に出来るのかどうかわかんないし・・・。」

「ふ~ん」

「どうしたらいい?」

「だから、それあたしに聞く?」

「だって・・・」

「嫌なことはやらなくてもいいんじゃない?好きにすればいいって言われたよね?」

「・・・うん。」


 それからニャオトは何も言わず考え込んでいた。



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