8話 プレゼント
元気な武器屋の店主に気圧されながら、代金を受け取り、店を後にする。
「次はその他のドロップアイテムだから、魔法道具屋に行くわよ、こっち。」
元気に姫が進んでいく。
ニャオト、昨日からこの姫、やけに元気にゃ。どうしたのかな?
「さあ。わかんないよ・・・」
武器屋と同じ通りに面した一軒の店。看板には瓶のような絵が描いてある。
武器屋の時と同じように姫が入っていくと、老婆の店主が驚いている。買取の旨を伝え、空間収納から残りのドロップアイテムを取り出す。
ゴブリンの角×35
サンダーウルフの皮×8
ホブゴブリンの角×20
ゴブリンロードの角×1
ゴブリンメイジの角×1
ゴブリンファイターの角×1
ホブゴブリンの魔石×30
ゴブリンロードの魔石×1
ゴブリンメイジの魔石×1
ゴブリンファイターの魔石×1
その量に驚く老婆だったが、やはりゴブリンロードたちのドロップアイテムの買取は難しいとのことで、しまう。
買取のための計算を待っている間に店内を見て歩く。
棚にはいろいろな形をして様々な色の液体が入った瓶が並んでいる。
「この辺はポーションですね。こっちが魔法ポーション。」ポーションと呼ばれているものが青系の色、魔法ポーションが赤系の色にゃ。
「こっちは解毒剤や麻痺回復などですね。」緑や紫。
「この棚は、魔法付与の指輪やブレスレットなどがありますね。あ、可愛い。」
姫が見つけたのは魔法付与のブレスレットだ。赤い金属の輪に青色の宝石が付いている。
「魔力強化の付与みたいだけど、効果よりもデザインが、可愛いわ。」
目がキラキラしている。
「あ、わたしの買い物じゃなかったわね。ナオトは何か買う?」
「いや、その、どうかな・・・マロン?」
だから、そこあたし?好きなの買ったら?
「え~と、ポーションと魔法ポーションは欲しいですね。念のため解毒剤なんかも。」
「終わったよ。」店主から声がかかる。
「え~と、ゴブリンの角が50ゴールド×35、サンダーウルフの皮が100ゴールド×8、ホブゴブリンの角150ゴールド×20、ホブゴブリンの魔石が250ゴールド×20で、全部で10,550ゴールドじゃ。」
「あ、ありがとうございます」
「あんたかなりの手練れなんだね。これからもごひいきによろしくお願いしますよ。ついでになんか買っていくかい?」
「あ、はい、え~と、このポーション類を・・・」
「ありがとうね、おまけしとくよ。」
ポーションと魔法ポーション、解毒剤などを5本ずつ購入し、代金を払って空間収納に入れる。
「あんたも姫と王都に向かうのかい?」
「あ、は、はい。」
「気を付けていくんだよ、姫を宜しくね。またおいで。」
「あ、ありがとうございます。」
魔法道具屋を出る。
買取も終わったので、あとは特にやることもない。宿に戻って昼寝でもしたいにゃ。
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!月一セールの開始だよー!!」
急に大きな声があたりに響く。見ると通りの一際大きな建物の前で大柄な男が大声で周囲に叫んでいる。
「雑貨屋ベクレム、月に一度の大セール!なんと今日は1000ゴールド以上買い物のお客様にくじ引き抽選付きだーーーー!!!さあおいで、お嬢ちゃんもどうだい!!」
男の声に特に女性陣が色めき立って店の中に入っていく。
「ナオト、少し見ていかない?」
「え?あ~、そうですね、そうしましょうか。」
楽しそうな姫の表情に断り切れず店内へ。
店の中は雑貨というだけあって所狭しと売り物が並んでいる。大きなものは家具みたいなものから、台所用品、服などとにかく種類が多い。
姫はというと、色々な商品を目を輝かせながら見ている。買おうとはしていないものの、見るのが好きなんだにゃ、女子は、
「あ、下着とか買った方がいいかな・・・」
服や下着を売っているところでニャオトが思いつく。
「え?あ、それはさすがに、私ではわからないわ。」姫が恥ずかしそうにすると、ニャオトもそれに気づく。
「あ、もちろんぼくひとりで選びますから、姫は少し他のところを・・・」
「そ、そうね・・・」
「マロン、姫についてて。」
少し顔を赤くした姫と下着売り場を離れる。次に向かった先にあったのは、これはなんにゃ??
細い棒の先端にふさふさと毛が生えていてるもの。
あたしがその棒をじっと見ていると姫がこちらを見て、
「マロンも好きかしら」
その棒を手に取ってあたしの目の前でふさふさを揺する。ふさふさが揺れると、目がきょろきょろ動き出し、ん~~~にゃ~~~、てし、てし。触ってもふわりと逃げるふさふさに夢中で、てしてし。
ふにゃ~~~~~
「マロン?」
下着やらを抱えたニャオトが近寄ってきた。ふ~~ふ~~よし、今日はこのぐらいにしてやる。
「マロンがお気に入りみたいよ、ナオト、これも買ってあげては?」
「そ、そうですね、マロン欲しい?」
な~~~~
ニャオトは自分の下着とあたしのふさふさ棒をもって会計に向かう。
「服と、下着と、猫じゃらし、しめて、お、ぴったり1000ゴールドだね、くじ1回引けるよ。」
店の入口付近にくじ引きのコーナーがある。店員の前に穴の空いた箱が置いてあって、買い物客が手を入れて中から折りたたまれた紙を引っ張り出す。店員がそのくじを受け取って開くと、
「はい6等ね、こちらから一つ持っていってください。」
くじを引いた客は残念そうにしながら、また、うれしそうにくじ引きの賞品を受け取っていく。
客の列に並んでニャオトの番になる。見様見真似で箱の中からくじを抜き取り店員に渡すと店員の顔色が変わる。
「おめでとうございまーす!!1等、1等が出ましたーー!!!」
さすが幸運MAX
「1等はこちらです、どうぞ」
店員が出した賞品は、
「え、これ」
さっき魔法道具屋で姫が欲しがっていた赤い金属の輪に青色の宝石が付いている魔法付与のブレスレット。さっき姫が欲しそうにしてたもの。
「え~と、これは、姫に、ですね。」空気を読んでニャオト。
「私に??ナオトありがとう!!」
さすが幸運MAX
宿への帰り道、さっそく腕に付けたブレスレットをずっと見ながら姫は楽しそうに歩いている。
あたしはというと、前の時みたいに塀の上をバランス良く歩く。カラスがいないにゃ。
「ナオト、本当にありがとう。」もう何度目かの感謝の言葉。
「そ、そんな、はい。」何度目かの卑屈。
「この出会いは、きっと奇跡よね・・・」姫がつぶやく。
「え?」
「この国では『浄化』を持っているのはわたしだけなの。王女として生まれた以上、このスキルを使って、この国のために迷宮を浄化し続ける使命を担ってるわ。でも、正直怖かったのよ、私・・・」
「姫・・・」
「でも、今とっても強いナオトと、『浄化』を使えるマロンが目の前に突然現れて、わたしを救ってくれた。」
真剣な眼差しでニャオトを見つめて姫は言う。
「本当に、ありがとうございます。わたしはこれからも戦いますが、お二人に出会えて本当に心強いです。」
にゃるほど、姫のテンションの高さはそういう理由もあったのか。