プロローグ
人生初のなろう投稿です。自分の好きなものを詰め込んだ自己満足の世界。時間かかっても完結させます。
最初の数話は連続投稿しますがその後はのんびりです。
気が付けばそこは眩しい光、ただ光のにゃか。
いつものコースを散歩していた。いつもの通り。
電線の上にとまってこっちを威嚇するカラス。やつらは手が届かないところでバカにするのが得意な臆病者。タイマンじゃ絶対負けにゃい。前脚の爪も小さいけど丈夫な牙も鳥ごときに遅れをとるものではにゃい。
お母さんに教えてもらった攻撃方法は、油断したすずめぐらいなら何匹もやっつけてきた。ただあのカラスたちは油断が少にゃい。いつかもう少し大きくなってお母さんぐらいになったらやってやる。
人間たちはブロック塀の上をバランスよく歩くあたしのことを優しそうな顔で見つめる。年取ったのや、子供や、メスでもオスでも。人間は恐ろしい生き物だとお母さんに教えられたが、一人になってから今のところ危険を感じる場面はにゃかった。餌をくれる人間もたくさんいる。ちょろいもんだ。
「こんにちは、マロン。今日もいい天気だね」若い人間のオスが下から話しかけてきた。最近たまに見かけるこの若い人間のオスはあたしのことを「マロン」と呼ぶ。もちろん茶毛ですよあたし。誰が見ても。でも甘いわけでもないし、あたしの本当の名前とも違う。
『にゃ』否定しておく。
「いつも返事してくれてえらいね~」違う、間違いを正しているだけにゃ、いつも
ただ、まあ気分が悪いわけじゃにゃい。あたしたちは気まぐれだとよく言われているみたいだけど、言っても個人差あるからね。あたしはどちらかというと・・・気分屋、か。今日は日差しが暖かくて気持ちがいい。
のびをして、まだ動かないたまに見る若い人間のオスの肩に飛び移る。
「今日はご機嫌だね。それにしてもマロンのふわふわいいな~」頭を撫でられた。
『にゃ~』これ好き
「癒される~。今日のマイナス分取り返したな。」
ん?少し暗い影の匂い。
あたしと違ってこの若い人間のオスは嫌なことがあったのか。しょうがない、こういうときのあたしの癒し効果はばつぐんにゃ。ごろごろ、こすりこすり。
その時だ。
グォーーゴゴゴーーーーーーーーン!!!!
轟く衝撃音。今まで生きてきた猫生の中初めて聞く大きな音。
音だけじゃなくて、時間差で本当の衝撃も受けて、若い人間のオスと一緒に地面に叩きつけられる。いや、あたし猫だから着地上手なのに、なぜか若い人間のオスにつかまれて一緒に。はなせ!はなせ!
逃げようとするほどに力強く抱きしめられる。
腕の隙間から見えた光景に体が固まる。空に赤が広がっている。大きな音を出しながら赤。あれは、何??え??にゃに??こっち来る!!??赤の中心に、大きな、石・・・?
気が付けばそこは眩しい光、ただ光のにゃか。
ここはどこだ。ゆっくりあたりを見る。まぶしすぎて真っ白。
あ、若い人間のオスが倒れている。必殺顔舐め。ペロペロ
「ん・・・、あ、マロン。ん?え?なにここ?」起きてきょろきょろしてる。
『にゃ』ここなに?
「え?・・・マロン喋った?」
『にゃ??』え??
「え?」
「わかるにゃ?」
「わかる・・・よ??え??」
にゃんだ??人間と言葉が通じる・・・わお、すげー。聞きたいこといっぱいあるにゃ。
「えっと、まず、あたしマロンじゃないの、名前」
「え?」
「あたしの名前は、」
「お?あいや、猫が一緒に??こりゃまた、困ったのぉ」
突然老いた人間のオス(?)が現れた。どうやら困っているみたいにゃ。
「わしか?わしは、神だ」
・・・
「え?神、様?」
「うん。神。しかし困ったの。お主だけのはずだったのだが、おまけ付とは。」
誰がおまけにゃ
「まあしかたいないの。コホン。ではでは、改めて。わしは神じゃ、佐々木直人16歳、男、お前は死んだ。あ、お前もの、猫、3歳、女」
「ぼ、ぼく死んだんですか?」
「そうじゃ。ほれ、天国みたいな光景じゃろ」
「いや、初めてなんでよくわかりませんけど」
「ようこそ天国へ」
にゃんとここが天国で、このオスとあたしは死んだの??
「さっきからそう言うとる。話はまだじゃ、よく聞け。お主たちが死んだのはお主たちのせいではない。間違いじゃ」
偉そう・・・
地球の神のその後の説明はこう。地球の生き物は死んだあとこの天国で魂が浄化され、また生まれ変わる。浄化はたくさんの魂を洗濯機の中でぐるぐるするようなものらしい。
洗剤入れるの??
汚れた魂もきれいな魂も一緒。記憶も汚れもすべて洗い流してまっさらに生まれ変わる。
若い人間のオスこと佐々木直人は前世でも人間で、死後浄化されるときに洗濯機の不具合なのか別の人間の魂の汚れがついて落ちず、そのまま生まれ変わってしまった。
「身に覚えがあるじゃろ?家族の縁もなく、他人から謂れのない誹謗中傷をうけ、友ができず、エトセトラエトセトラ」
問いを受けて佐々木直人はうなだれている。
にゃんだかかわいそうだ
「その責任は神であるわしにある。すまなかった。」
不運。しかも成長と共にどんどん強くなる不運。異変に気付いた神がなんとかしようとしたが間に合わず、まさかの隕石直撃。即死。
隕石ってあの赤い空の石のこと??直撃とか不運ってレベルじゃなくない??
それに、え~と、あたし巻き込まれただけ??
「猫よ、巻き込んですまん。」
やっぱり
「さて、暗い話ばかりではないぞ。めでたくお主等は違う世界に転生できることになった」
さっきから頭のなかのハテナが消えない・・・
「転生というと、あのよくあるやつですか?」
「それそれ」
よくある、の???
いわく、神のミスで死んでしまったがそれはかわいそうだということ。しかし、周囲を巻き込んで大きな破壊をもたらした隕石の被害から生き延びたというのは不具合が多いので、違う世界に生き返らせることで勘弁してくれということらしい。
「僕らのほかにもたくさんの人が、死んだんですか?」自分のことより他人のことか、このオスらしくはあるが。
「いや、そこはわしの奇跡のおよぶ範囲での。みな無事じゃ。お主等だけ救うことが出来んかった。それほどの不運だったのじゃ、よ」
「良かった・・・」良くない
「というわけで、転生じゃ。お望みはあるかな?」
「え?希望が通るのですか?」
「そりゃあ、少しはな。借りを返さなくてはならんじゃろ、わしも」
若い人間のオスは悩み始めた。
ん~、話について行けてにゃいのはわたしだけ・・・
「でも希望と言っても・・・あ、マロンはどうしたい?」
あたし??。だから話についていけてにゃいんだってば。
「そっか、マロンにはわかんないよね・・・」
他の人間ならわかるの?あたしこれでも結構人間世界のことはいろいろ見てきたつもりだけど。
「おすすめはあるぞ、剣と魔法の世界。うん、これじゃな。決まりじゃ」
「希望が通るってさっき」
「少しはな、しかしここは手慣れたわしにまかせるのが良いと思うぞ」
手慣れた?なんども同じことしてるってことじゃにゃいのか?大丈夫なのか、これ?
「少し黙っておれ。お主にも悪いようにはせん。ではいくぞ」
神が光り始めた。面倒くさくなったような口ぶりから光始めた。それと同時にオスから黒い影が吸い出されてきて、空中に浮く丸い玉に。
「魂の汚れの黒塊。これを抜いて、と。ではな、達者でな。また会おう」
光がさらに大きくなってわたしたちが包まれて・・・無
「うまくいったか。よし。さてこの黒塊はこうして、と。それにしても今回は少し欲張りすぎたかの~。ん?あの猫の魂、よく見ると・・・なるほどこれも魂の縁かの、うん」
謎の納得をしつつ、神もその光の空間から消えていく。