ポマードと再会
ツッパリは学校から帰路に就こうとアーケード商店街を歩いてると右斜からあのポマードジジィが駆け寄ってくる。
「そのサングラス似合ってますね。あの時から心を改心して今はコンビニでアルバイトしてます」
「いや、誰?」
ツッパリは不審者を見るような目で話しかけてきた男を見た。
「あ、そうですよね。そのサングラス貸してもらえますか?」
「どうぞ」
男はツッパリから借りたサングラスを耳に掛けた。
「これで、分かりましたか?」
「ポーマードじゃん」
ツッパリは嬉々した声で飛び跳ねて言った。
「そうです、ポマードです。やっと分かってくれましたか?」
「あぁ、もちろん。にしても、ポマードつけるやめたのか?」
「はい、俺はハゲなのでスキンヘッドにしてるんですげど髪に未練があってポマードをつけてたんです」
ポマードは悲しい顔をして髪の葛藤を話した。
「何言ってんだ、ポマード。今お前は、身体的にはハゲてるもしれないが心はフッサフッサやで。以前は、心もハゲていたのに」
「ありがとうございます。自信が出てきました。そういえば、お名前をお聞きしてもいいですか?」
「俺は、辻田、辻田巴里」
「つじだぱり、つじだぱり、ツッパリさんって呼んでいいですか?」
ポマードは食い気味になってツッパリに訊ねた。
「顔がちけぇよ。好きに呼んでいいよ」
「では、ツッパリさんと呼ばさせていただきます。俺の名前は熊沢ウルフといいます」
「ウルフ?めちゃくちゃキラキラネームだな。熊と狼ってややこしいな。お前はやっぱりポマードって名前が呼びやすい」
ツッパリはニカッと微笑む。
「そう呼んでください。ツッパリさんにはポーマードって呼ばれるのが1番しっくりきますから。あ、このサングラス返しますね」
ポマードは微笑を浮かべて言った後、サングラスをツッパリに返そうとした。
「いや、これはもうお前のだ」
ツッパリはポマードが返そうとしたサングラスを首を横に振って受け取らなかった。
「え、何でですか?」
「元はお前のだろ。それに、ポマードはサングラスがあって"本物"に見えるからな」
「ありがとうございます、ツッパリさん」
ポマードは満天の笑みで声を張って言った。
「お前って幾つなの?」
「27歳です」
「え!?意外と若いのかよ、55歳だと思ったぞ。確かに、よく見ると肌が若いな」
ツッパリは見た目より年齢が若かったので目を丸くした。
「よく言われます」
「あ、ポマード頼みがあんだけどよ……」
* * *
「ねぇ、奈々子。明日、遊園地に行く服みんなでジャージで行くって決めたから。だから、当日ジャージで絶対来てね」
「え、本当にみんな……」
九条は自分の言いたいことを伝えて電話をブチっと切った。
月白はスマホを持って自分のベッドの上で体育座りして深い溜息をつく。
* * *
遊園地当日、月白は九条に言われた通りにジャージを着て集合場所の駅に重い足取りで向かった。
「奈々子、こっち」
駅前に居た九条達はみんなお洒落な私服だった。月白は騙されてるのを分かっていたが私服で行ったら九条に罵詈雑言を浴びさせられる。それに対して、何も言えない自分が大っ嫌いだった。
九条達はジャージを着た月白をみて嘲笑った。
「マジで、ジャージで来たの。冗談だったのに」
「やっぱり、私着替えてくる」
「何言ってんの。そんな時間ないからあんたは今日1日それ着て過ごすんだよ」
九条は高圧的な態度で月白に言った。
* * *
古びた小汚い喫茶店でツッパリとポマードはお茶をしていた。
「つまり、私とツッパリさんで藤川遊園地に行くってことですか?」
「そういうこと。チケット1枚あるんだけどこれは俺のだからポマードは自分の分買えよ」
ツッパリはストローでオレンジジュースに息を入れてブクブクしてから言った。
「え、俺のチケットないんですか?」
「ないよ」
「分かりました。自分の分買っときます」
ポマードは少し寂しげな声色で言った。
「で、さっき伝えた事を当日遂行してもらえるか?」
「えぇ、大丈夫です」
読了ありがとうございます。