ある日の教室での出来事
ツッパリは学校へ登校中におばあさんが横断歩道を渡りきれずに信号が赤になってしまったのを見て目の前でスマホを見ながら歩いてる高校生を突き飛ばしておばあさんの方へ走っておんぶして荷物を持ってなんとか無事に渡ることができた。
「ありがとうね、坊や。君は優しい子だからこれをあげるよ」
おばあさんは藤川遊園地のチケット2枚をツッパリに渡す。
「いいの、おばあさん?」
「むしろこんな物しか与えられなくてごめんね」
「ありがとう、おばあさん」
「いいのよ、ほら学校遅れちゃうわよ」
ツッパリは鞄にチケットを入れて学校へ足取りを早めた。
* * *
「大丈夫、大丈夫。みんなで私の分も楽しんできてね」
月白比奈は乾いた笑顔で言った。
月白比奈ー黒髪のぱっつんボブに満月の様に潤んだ丸い瞳と筋の通った愛嬌のある鼻に切れ長で水を含んだ朱色の唇。
「ごめんね、日奈。藤川遊園地のチケット4枚しかなくて。私、たかし、ようた、あかりのチケットしかなくてさ。だから、日菜今回は諦めてね。今度は誘うからさ」
九条絵里は申し訳なそうな胡散臭い芝居をして月白に言った。
九条絵里ー焦げ茶色のミディアムヘアに綺麗に鼻筋が通った高い鼻とくっきりした二重瞼に薄い唇。
ツッパリは九条の話をたまたま聞いたため月白の席に足を進めた。
「月白、藤川遊園地のチケット2枚あるから1枚やるよ」
「え?」
「オレ、遊園地あんまし得意じゃないからやるよ」
「良かったじゃん、奈々。にしても、辻田もしかして奈々のこと好きなの?」
「お前みたいな性悪女より好きだよ」
「んだてめー!」
女は机を手のひらで強く叩いてから怒鳴り声を上げた。
周囲の生徒達はツッパリと九条達を見てざわめいていた。
「ほら、そういうとこだよ。九条は顔だけ切り取ればクラスで1番綺麗だよ。だが、そのねじ曲がった性格を差し引けば九条、お前は不細工だ」
「てめー辻田!お前、私にそんな事言ってタダで済むと思うなよ」
「辻田くん、ごめん。このチケット返すよ」
月白は暗い顔つきで下を俯き言った。
「そうか、九条は月白を省こうとしてわざとチケットを用意してなかったんだろ。でも、俺が余ったチケットをあげるという行為を月白は断った。つまり、お前らとそもそも行きたくないってことなんだよ」
ツッパリは口を尖らせ九九条達の面を見て言った。
「おい、辻田。黙ってればいい気になって。何を根拠に言ってんだよ。偽善者のつもりか。それ以上、なんか言ったら痛い目あうぞ、てめぇー。喧嘩が強くても俺たちには人脈ってのがあんだよ。一匹狼のお前と違ってな」
橋本波斗は鋭い目つきでツッパリをみてから不気味な笑みを浮かべて脅した。
橋本波斗ーサラッとした茶髪のロン毛に薄い眉毛にまるっとした二重瞼で爽やか系イケメン。
「ねぇ、奈々子。辻田がご厚意でくれる遊園地のチケットをいただいてやっぱり私達と一緒に来てくれない?」
九条は作り笑顔を作って月白に言った。
「え、でも……」
月白は言葉を詰まらせた。
「ねぇ、奈々子はっきりしてくれる。私達と行くのか行かないのか?」
九条はかなり威圧的な口調で月白に訊ねた。
「彼女が行きたいって言うなら渡すよ」
ツッパリは欠伸をして両手を上げて退屈そうな顔をして言った。
「……絵里、私も……行くよ」
月白はツッパリに申し訳なそうな顔をして終始言葉を詰まらせながら喋った。
「ねぇ、そういうことだからチケットを1枚置いて自分の席に戻ってくれる?」
九条はしたり顔でツッパリを見て言った。
「わかった。迷惑をかけて悪かった」
ツッパリは申し訳ない顔をしたが決して頭は下げなかった。
「わかればいいんだよ。次、舐めた態度とったら容赦しないからな」
橋本は不気味な顔をして言った。
大人しく自分の席に戻るツッパリを見て九条と橋本達はゲラゲラ笑っていた。
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