危険な罠
ツッパリはリュックを背負って18時きっちりに公園に着いた。目の前には田中角栄が姫島の首にナイフをつきつけていた。
「お、ツッパリよく逃げずに来たな」
田中は不気味な微笑みを浮かべて言った。
田中角栄は鋭い目つきをした一重、髪型は角刈り、常にタンクトップを着ている。
「助けて、辻田くん」
姫島は慌てた声で辻田にSOSを求める。
「なるほど、そう言うことか」
ツッパリは緊迫した状況に対して客観的に出来事を把握した。何故なら、田中と姫島がちらちらツッパリの目の前にある少し膨らんだ砂の地面を見ていたからだ。そこは、他の地面と違って若干高さがあった。なので、ツッパリはここに落とし穴があると断定した。そして、2人がグルであることも……
ツッパリはおもむろにポケットから札束を出して目の前にある落とし穴にそっとおいた瞬間、田中は札束にめがけてダイブしてまんまと自分が作った罠にかかり落とし穴の底に頭をぶつけて気を失った。
「あんた、なにやってんのよ」
姫島は困惑した顔を浮かべて焦燥感のある喋り方をした。
「やっぱり、ぐるかよ姫島さん」
ツッパリは悲しい声色で言った。
「違うのよ、辻田くん。田中に脅されて仕方なくやったの。本当はこんなことやりたくなかったの」
姫島は涙ぐみながら話した。
「そうだったのか、可愛い子に涙は似合わねぇぞ」
ツッパリ君は優しく姫島に声をかけた。
「本当に馬鹿な男だわ」
姫島は小声でぼそっと呟く。
ツッパリはリュックから消火器を取り出した。
「え!」
姫島はツッパリの行動に唖然とした。
ツッパリは消火器のホースを外し、ホースの先を姫島に向けてレバーを強く握る。
「姫島の薄汚れた涙と心を鎮火します!」
消火剤がホースから放たれ辺り一面が真っ白になり白銀の世界が生まれる。姫島の叫び声を掻き消すぐらい消火剤のシュッーと大きな音が響く。
「ぎゃあああ」
消火剤が切れてしばらくして真っ白な視界は徐々に消え目の前には真っ白で姫島の原型が跡形もなくなったイエティがいる。
目を覚ました田中角栄がツッパリが置いた札束を偽物だと分かって怒鳴り散らした。
「偽札にきまってんだろ。そんな大金持ってる高校生がどこにいんだよ、バカか。お前は本当に金に目がないな角栄」
ツッパリは消火器を両手で軽々と頭の上まで持ち上げて田中角栄の頭にぶつけ再び角栄は気を失った。
ツッパリは姫島へ近づいて姫島は服の袖で顔についた消火剤を拭き取り目の前の距離にいるツッパリに驚き足を石につまずき後ろに倒れ尻餅をついた。
「本当にごめんなさい。何でもします」
姫島は正座して両手を伸ばして手のひらをツッパリに見せてもう勘弁してくださいと頭を何度も下げた。
「じゃあ、その大事な時計をくれ」
「いや、これは……ブランドの……」
「え、ダメなの?」
ツッパリはとぼけた顔をして言った。
「いや、差し上げます」
「マジでくれんの、ありがと」
ツッパリは嬉々した声を上げで姫島から腕時計を受け取った。
「こんなことしてるとあんた将来ロクな人間にならないよ。変わるならこの機会にしてみたら」
ツッパリは軽快な口調で姫路を諭した。
パトカーのサイレンが近くから聞こえてくるのでツッパリは駆け足で公園から去って行った。
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