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キミの心  作者: 小日向ライ
第1章 姫宮有栖
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7話

ゴールデンウィークは特に何事も無く、過ぎ去り、憂鬱な学校生活が始まった。

秋瀬から送られてきた謎のメッセージは秋瀬に直接聞くとして、問題は姫宮の悩みの方だ。あのデート?の後は会っていない。一応、連絡先は交換しておいたけれど、日常会話だけで、悩みについては一切話さない。もう少し時間が必要みたいだ。

そんなことを考えながら通学路を歩いていると、背後から声が掛かった。


「センパイ、おはようございます」


「ああ。姫宮か」


姫宮だった。なんだか、久しぶりに姫宮の制服姿を見た気がする。私服姿のインパクトが俺の中で強かったからだろうか。しかし、こんな事を考えていたら、姫宮にバレてしまう。危ない。危ない。

すると、姫宮は呆れたような表情で俺を見てきた。


「考えてるのバレバレですよ。それに、私が話し掛ける前から、センパイは私のことを考えていたのも知っているんですからね?」


「それ、ズルくないか?」


心の声が聞こえることを便利だと思ってきてないだろうか。確か姫宮は心の声が聞こえるのが嫌で悩んでいたんじゃなかったけ?


「そんなに胸のことばかり考えないでください。厭らしい」


「そんなことは一切考えていない。勝手に人を変態キャラにしようとするな」


でも、姫宮にとってはそういうことを考えてる人がいたら分かってしまうって事なんだよな。

考えることも許されないなんて、酷だな。


「ああ。そういう人がいた時は、極力見ないようにしてます。そうすれば心の声は聞こえてこないですから」


「なるほど。じゃあ、俺と話す時もそれで頼む」


「嫌ですよ。視線を逸している隙に、何をされるか分かりません」


全く信用されていなかった。姫宮の前で、危険な人間と思われる程のことを考えた覚えはないのだが。やはり、可愛いと思ってしまったのがいけなかったのだろうか。


「てか、今日の姫宮。なんか俺に対して、冷たくないか?」


「センパイがゴールデンウィーク中遊んでくれなかったから、拗ねてるんです。あんなにゴールデンウィーク楽しまないとみたいなことを私に言っておきながら、何もないなんて思いませんでしたよ。」


理由がとても可愛かった。しまった。また可愛いと思ってしまった。しかし、今の姫宮はまるで親におもちゃを取り上げられた子供のようだ。頬を膨らませて姫宮はぷいっとそっぽを向く。


「それは俺が悪かったよ。そういうことなら、言ってくれれば良かったのに」


「1回目は私から誘ったので、2回目はセンパイから誘って欲しかったんです」


どちらから誘っても、大して変わらないと思うけれど、姫宮には何かプライドがあるのだろう。つまり、ゴールデンウィークの間姫宮はそのプライドと戦っていたのか。もっと他に大事なことがあるだろ。

視線を逸らしているので、今のこの思考は姫宮には聞こえていないはずだ。


「と、とりあえず、姫宮は問題を解決する方が先なんじゃないか?」


「そうですけれど……どうやったらこの問題を解決出来るのかも分かりませんし……」


問題の解決方法か。姫宮は治ると言っていた。

おそらく、根拠はないのだろうけれど、そういえば、生まれつき心の声が聞こえるという訳でもないともいっていた。もしかしたら、心の声が聞こえるようになったのは精神的に追い込まれた姫宮自身が引き起こしたものなのかもしれない。


「私自身が引き起こしたもの……」


「確証はないけどな。でもなんの理由も無しに、心の声が聞こえるなんて現象が起きるとは思えない。だから、俺は何か理由があると思ってる。それを姫宮に教えて貰えると助かるんだが……」


ゴールデンウィークにも1度頼んだが、あの時は話してはくれなかった。あれから、それほど月日がたっている訳では無い。だけど、いつまでもこの状態が続くのを姫宮も良しとしないはずだ。


「分かりました。放課後になったら、特別棟の使われていない教室まで来て貰えませんか?」


特別棟の使われていない教室。俺も1度だけその教室には行ったことがある。あまり好んで行きたい場所ではないけれど、姫宮がそこに来て欲しいというのなら、仕方がない。


「分かった。学校に着いたな」


歩きながら、話していたので意識していなかったが、いつの間にか、目的地に辿り着いていた。タイミングが良いのか、悪いのか、分からないけれど、とりあえずここで姫宮とはお別れだ。


「そうですね。じゃあまた放課後に会いましょ?」


「なんていうか、その、大丈夫か?」


「何がですか?」


姫宮は首を傾げる。俺が考えていることなんて分かっているはずなのに、言葉にするのを待っているかのように姫宮は口を開かない。


「今から、姫宮は聞きたくもない人の心の声を聞きながら生活するのかなって思ったら……ちょっとな」


「センパイ、そんなの今更ですよ? でも心配してくれて嬉しかったです。ありすです」


姫宮は笑顔を浮かべた後、俺から逃げるように走り去っていってしまった。顔が赤くなっているように見えたのは気のせいだろうか。それにしても、ただの思いつきかと思っていたけれど、ありすという口癖のことを姫宮は結構気に入っているらしい。


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