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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
東方巫女と『可愛い』。
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第28話 朝食ミーティング


「起きるのじゃ!! もうお腹ぺこぺこなのじゃー!!!」


 身体を揺すられ、ぼんやりとした意識にキャンキャンと子犬のような声が響く。

 あまりのうるささに一瞬目が覚めるが、しかし、すぐにふかふかの布団が睡魔を誘い、再び意識は夢の中へ戻ろうとする。


「ん、あと5分……むにゃ……」

「なにを分けのわからないことを言っておるのじゃ!! このままではお腹が空きすぎて倒れてしまうのじゃー、起きるのじゃー!!」


 体の上で何かがぴょんぴょん飛び跳ねていたと思ったら、勢いよく布団をしっぺがして来た。

 急激に体感温度が下がり、オレは思わず身を震わせてあたりを見回した。

 そこには仁王立ちでオレを見下ろすのじゃロリの姿。

 空腹で不機嫌そうだが、安眠を妨害されて怒りたいのはこっちの方だ。


「うるさいな、人が気持ちよく眠ってたってのにふぁ……」


 一度覚醒してしまうと先程まで尽きることがないと思われた眠気もどこかへ行ってしまい、仕方なくオレは起き上がり大きく伸びをした。

 安全のためリボンを付けたままとは言え、久しぶりの布団はとても気持ちが良かった。

 せっかくなので、布団も一式購入して持ち帰ろうか。

 ノロノロと立ち上がり、ふとオレはここが社である事を思い出す。


「なあ、飯ぐらいここの人たちが用意してくれてるだろ、なんでわざわざ起こしたんだよ」

「うむ、じゃから先に断っておいたのじゃ」


 オレの疑問に、トレットはふんぞり返ってさも当然といった様子で答えた。

 あれ、寝起きでオレの思考がボケてるのか? なんでこいつわざわざ朝食の用意を断ってんの?


「は、なんで?」

「ワシはお主の料理が食べたいのじゃ」


 なんだその愛の告白じみた要求は。オレは何があってもお前とどうこうなるつもりはないぞ。


「おまっ、そんなわがままでオレを起こしたのかよ!?」

「何を言っておるのじゃ、お主が都に着いたら自分が料理すると言ったんじゃろ!!」


 ……そう言えば、めんどくさがるトレットを釣るために「都の食材があればもっと旨い料理が作れるのになー」などと言ったような記憶があるような。

 


「くっ、しょうがないな」

「わかれば良いのじゃ、早く作るのじゃぞ」


 オレの表情から己の勝ちを悟ったトレットに見送られ、オレは部屋を出た。

 ちなみに、タトラさんはこんなやかましいやり取りの間もぐっすり眠っている。

 巫女さんたち、男女一緒の部屋を普通に用意したのかよと言うツッコミをしたいところだが、トレットもオレも美少女の姿のままだし、今までずっとなにも起こっていないのだから今更か。

 部屋の外には昨日部屋まで案内してくれた巫女のお姉さんが立っていた。

 いつから待機していたんだと面食らっていると、お姉さんはお辞儀をしてくる。


「イオリ様、おはようございます。」

「ああ、えっと……おはようございますメノさん」


 巫女のお姉さんの名前をぎりぎり思い出し、お辞儀を返すオレ。


「トレット様から朝食はいらないと言われましたので準備をしていないのですが、よろしかったでしょうか?」

「はい、食材だけ頂いてもいいですか? あと、アイツの言うことはこれからだいたい無視していいです」

「はあ、そうですか」


 メノさんは困惑気味に頬に手を当て頼りない返事を返した。


◆◆◆


 用意してもらった食材で適当に食事を作り、朝食がまだだというメノさんも少し強引に誘って情報収集がてら一緒にご飯を食べる。


「うむ、この白い米はなかなか美味しいのじゃ」

「そうですね、前のお米よりずっと食べやすくて美味しい」


 社で用意されていた白米を炊いた所、トレットやタトラさんにも好評だった。

 やはり米の魅力は精米しないと伝わりづらいのか。見方を変えれば精米すれば獣人やエルフでも美味しく食べられると言うことなので、種籾を持ち帰ったら誰か栽培してくれないかな。

 献立は白米のご飯に焼き魚、野菜の塩もみとごくごくシンプルなものなのだが、なぜか食べ慣れているはずのメノさんが一番が驚いていた。 

 

「これは、本当に社で用意した米ですか? まさかこんなに美味しくなるなんて……」


 一口米を運んでは高級料理でも味わうようにじっくりと咀嚼するメノさん。


「あの、そんな大層な料理じゃないんで普通に食べてほしいですけど」

「そんな、とんでもありません。これほどの料理、社どころか王宮でも給せられるか……イオリ様は可愛いだけでなく料理の腕までお持ちなのですね」


 オレとしてはぱぱっと飯を食べて色々リサーチ、と計画していたのになぜこうなった。

 トレットとタトラさんの反応から見ても、それほど可愛い料理に仕上がっていないはずだから大丈夫だと思ったのに。


「いや、ホント素人料理なんで。あと、様付けは勘弁してもらえないですか、オレそんなに偉い人間じゃないんで」

「ですが、我らはイオリ様に可愛さを教えて頂く身、そういう訳には……」


 頑ななメノさんをなんとかなだめすかして、両方ともさん付けで呼び合う事で落ち着いた。

 食事も一段落ついた所で、オレは今日の予定を決めるためメノさんにハリさんの様子を聞いてみたのだが……

 

「ハリさんと昨日の続きを話したいんですけど、今どちらにいますか?」

「それが……ハリ様は昨日遅くまでルリと話し合いをしていまして、まだお休みになられています」


 メノさんはオレに頭を下げる。

 親子喧嘩、あれからも長引いてたのか!!

 前途多難な状況に、オレは天を仰いだ。


次回

宮司からの依頼を引き受けたものの、一向に話し合いが進まない主人公。

仕方なく彼らは社を巡り巫女の生活を見る。


伊織の存在に巫女たちは何を思うのか――

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