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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
東方巫女と『可愛い』。
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第21話 出会って5秒で失恋

「それじゃあ船長、船の事よろしく頼みます。それと、大丈夫だとは思いますが、くれぐれも村の人とは争いの無いように……」

「わかってまさぁ! 他の奴らにも十分言い聞かせてやすから、旦那は大船に乗ったつもりで行ってきてください」


 船長が厚い胸板を叩き自信満々に胸を張った。

 まあ、村人との関係も昨夜の宴会でずいぶん打ち解けた様子だし、オルカス船長もいかつい見た目とは裏腹に協調性が高いので、オレたちがいなくても問題ないと思う。しかし、念の為なるべく波風を立てず、できれば村人が困っている時には助けてくれるようお願いをしておく。

 美少女風の巫女少年、ルリと共に都へと向かうことになったオレたち。その日は夜も遅いということで、翌日村を出発するという事で話がまとまった。

 都へ向かう人選はオレ、トレット、タトラさんにマオ。それに移動の足としてファべも行くことが決まっている。

 船長たちも一緒に行けたら良かったのだが、都は陸地で海に一番近いのがこの村らしい。申し訳ないが、船の見張りを兼ねて村に留まってもらうことになった。

 船長たちは「港で足止めなんざよくある事ですから気にしないでくだせぇ」とあっけらかんとしたものだったが、都に行ったら何かお土産でも買ってこよう。

 久しぶりの陸地での移動に一番喜んだのはファべだった。まだ出発前だというのに、先程から軽い準備運動だとでも言うように村の周囲を駆け回っている。

 船内ではおとなしく昼寝ばかりしていたファべだが、やはり馬には船内の生活は息苦しかったんだろうな。

 帰りの航海ではもう少し居住性を改善してやりたいものだ。

 あ、ウォーキングマシンでも作ってやるというのはどうだろうか。ファべ、と言うかこの世界の馬は小柄だし、ローラーに板や布で作った履帯を被せれば、いい感じのマシンができるかもしれない。

 動力になるものはないけれど、少し傾斜をつけて上に乗ったものの自重で履帯が動くよう調整すれば行けるんじゃないだろうか。


「皆さん、準備はできましたか?」


 オレが船長と細かな確認をしていると、白馬に乗ったルリがやってきた。

 袴で馬にまたがって良く乗りづらくないな。よく見たら鐙もないし、華奢に見えて実は運動神経が良いタイプなのかもしれない。

 跨っている馬もなかなか凛々しい。巫女のルリが乗っているということは、神馬とかだったりするのかな。

 白馬から降りたルリは、相変わらずやたら上から目線で鼻息荒くオレを見てくる。

 これでもう少し謙虚さがあれば、女装趣味の可愛い少年なんだがなぁ。

 オレが生意気巫女少年との旅路を想像しうんざりしている視界の端で、ルリが降りた白馬がファべに近寄り、何やらアピールを始めた。

 白馬は愛おしそうにファべを見つめてすり寄っているんだが、これはもしや……一目惚れ?

 そう言えばファべってオスなんだろうか、メスなんだろうか。あまりファべの性別を気にしたことがないからわからん。

 オレの作ったリボンをつけて可愛くなってるから、元の性別はどうあれ今はメスになってるのかもしれない。

 あ、白馬が振られた。白馬はファべの趣味ではなかったらしい。

 振られた白馬は悲しみのいななきをひとつして、どこかへ走り去ってしまう。

 ひとり取り残されたルリは突然の出来事に固まってしまった。


「……」

「…………」


 自信満々のポーズで固まってしまったルリ。同じく意味がわからず固まる俺と船長。そして、呑気に準備運動を続けるファべ。

 気まずい沈黙が辺りに流れる。


「ど、どうしてくれるんですか!! ボクどうやって都に帰るんです!?」

「知るかっ、どう考えてもお前の馬が悪いだろ!!」


 やっと口を開いたルリは逆ギレ気味にオレへ食ってかかるが、八つ当たりもいいところだ。

 恨むなら節操のない白馬に乗ってきた自分を恨んでくれ。


「それに、流星号帰ってこなかったらボクが怒られるんですよっ!」


 名前、無駄にかっこいいなおい。

 出発前から前途多難すぎて、このまま獣人の国に帰りたくなってくるが、米が手に入っていない以上そういうわけにもいかない。

 取り敢えず今打てそうな対策を提案してみるが……


「お前が呼んだら戻ってこないのか?」

「流星号はとってもプライドが高いんです。一度ヘソを曲げたら、ボクの言うことなんて聞くわけないじゃないですか」


 予想通りと言うか、まったく頼りにならない答えが帰ってきた。

 トレットと同じ匂いがしたのは伊達ではなかったな。

 早々にポンコツ巫女少年に頼る事を諦め、オレは独自の作戦に切り替える。


「うーん、取り敢えず餌で釣ってみるか」


 オレはファべのおやつ用に用意していた特製の干し草を持って振り回した。

 可愛くちょうちょ結びにした干し草は、香りも普通の干し草とは変わるようで、ファべなど結んでいる最中でも匂いを嗅ぎつけて近寄ってくるのだ。

 流星号にとっても特製干し草はごちそうになるに違いない。


「ほーら、美味しい干し草だぞー、早く戻って来ないとファべに食べさせるぞー」

「何してるんですか、流星号はプライドが高いって言ったでしょ! 餌に釣られて戻ってくるなんて卑しい事するわけ無いです!!」


 オレの渾身の作戦にルリは文句を言うが、それなら自分でどうにかしろと言いたい。

 いっそ、場所だけ聞いてオレたちだけで行ったほうがスムーズに事が運ぶんじゃと考えていると、いつの間にか流星号がオレのそばにやってきて干し草を凝視していた。

 オレは振り回していた干し草を流星号に食べさせてやる。


「……戻って来たな」

「……戻ってきやしたね」

「りゅうぅぅせいごぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」


 流星号は自分と飼い主? のプライドを放り出して、それは美味しそうに干し草を食べるのだった。

次回


都への旅路を往く主人公。

道先で彼らを待ち受けるものとは。


伊織たちは無事都へたどり着けるのか――

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