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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
獣人の奴隷と『可愛い』。
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第36話 美少年少女

 ペスさんの手伝いもあり、屋台の準備は滞りなく進んだ。商品はオレが作り慣れていることと、ナールくんでも作れるものである方が良いだろうと言うことで、クレープに決定している。

 屋台の貸し出しとスペースの確保、それに食材の買い出しはタトラさんとペスさんに任せてしまった。

 その間にオレとトレット、ナールの3人とマオ1匹で市場の下見をする。

  市場の人の中にはタトラさんとフォクさんの対決を見物していた人も多く、オレたちがクレープ屋を開くと言うと、興味を示してくれたので宣伝効果も期待できそう。

 驚いたのは、下見に行った市場で利に聡い商人がすでに何人か可愛い小物を身に着け、クレープ屋を始めていた事だ。

 クレープ自体、そう難しい技術を必要とするものじゃなく、材料も獣人の街ならだいたいどこででも安定的に供給されているものばかりを使っている。

 真似することは簡単だが、オレたちがフォクさんの依頼で屋敷にこもっていた間に開店したと考えると、そんなに時間があったわけじゃないだろうに。この世界の商人も中々やるじゃないか。

 目を輝かせたトレットが「敵情視察なのじゃ」とか言いながらクレープ屋だけでなく食べ物の屋台を片っ端からはしごしているが、燃料代の前払いと思って無視しよう。羽目を外しすぎて屋台に迷惑を掛けるようならその時、止めれば良いだろうし。

 トレットを追いかけるように市場をまわりながら、オレはナールに渡すものがあった事を思い出した。


「そうだ、ナールこれ」

「これは?」


 オレは懐から取り出した青いリボンの髪飾りを見せる。ナールくんがいつか外に出たいと言い出した時のため、屋敷にあった端切れなんかを少々拝借してちまちまと作っていたのだが、こんな形で使うことになるとは予想していなかった。


「ナールは十分可愛いし必要ないと思うけど、外は危険だから一応お守り代わりにな」

「これ、イオリのいつもしてる……」

「ああ、つけてやるから頭をこっちに向けて」

「うん……」


 リボンを興味深そうに手に取って眺めるナールくんに声をかけ、頭のサイドにリボンをつけてやる。


「これでよし、っと。……ナールでもやっぱり女に……女になってるよな?」


 リボンを付けると、ナールくんの身体が一瞬光った。……のはいいのだが、全く別人レベルで見た目が変わったオレと異なり、ナールくんは外見的な変化は殆ど無い。元々中性的な顔立ちで線の細い、華奢な体つきは女になっても変わっていないようだ。よく見ると少しだけ胸が膨らんでいるような気はするが、あまりの変化の無さについ確認してしまった。

 傍から見ただけではわからないが、ナールにとってはかなり変化があったようで不思議そうに身体のあちこちを確認している。……胸はやっぱり揉むよな。その気持はオレもよく分かるぞ。


「これ、ボク……?」

「気になるかもしれないけど、身を守るためだ。我慢してくれ」

「ううん、嬉しいよ。これ、イオリとお揃いだね! ふふふ……」


 ナールくんは無邪気に微笑む。ただでさえ破壊力のある笑顔が、リボンを装備したためか威力が倍増している。こんな笑顔でお願いされたらフォクさんでなくても言うことを聞いてしまうかもしれない。

 いっそのこと、タトラさん用に作ったメイド服をもう一着用意して、ナールくんに着せるのもアリか。ケモミミとの併用は周囲の理性を失わせそうで危険だが、人のまま可愛くなるだけならおそらくそれほど危なく無いだろう。……多分。

 女性が自分のことでもないのに可愛い服を選んで騒いでいる様子を見て、「なんでそんな面倒なことが楽しいのか」と思っていたが、こうして実際に可愛い子に可愛い衣装を着せる妄想をしていると少しだけ気分がわかる。

 可愛い衣装での接客による集客効果を考えれば、多少初期投資で金がかかったとしても後でガッツリ巻き返せるだろう。

 そんな悪魔の囁きに揺り動かされていると、木箱を担いだタトラさんとペスさんがやってきた。


「イオリさーん、探しましたよー!! って、えぇっ、ナールくんその格好っ!?」

「坊っちゃんが女の子になってるのかいっ!? 驚いたねぇ」


 ナールくんを見た女性陣が驚きの声を上げる。良かった、誰から見ても女になってるとわかるのか。

 オレたちの視線を集め、ナールくんは恥ずかしそうにしているが、嫌がっている素振りはないし、今日のところはこのまま進めても大丈夫そうだ。


「よし、材料も揃ったことだし、仕込みにはいろうか。ナール、始めは難しいかもしれないが、自分で商売をしていくなら自分で出来るようにならないといけない事だ」

「うん、わかってる。ボク頑張るよ」

「それじゃあ、オレとナールで生地作り、タトラさんとペスさんでフルーツのカットをお願いします」

「了解です」

「はいよ!」


 皆に指示を出し、オレたちは開店準備を始める。

 アズマの街では開店すぐにフォクさんがやってきてまともな商売が出来なかった。今日は実質アズマの街でのクレープ屋初日と言える。ナールくんのためにも頑張らねば。


次回


少年は主人公からの贈り物で少女へと変身する。

はたして、その愛らしさは獣人たちに通用するのか。


イオリが少年に授ける秘策とは――

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