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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
獣人の奴隷と『可愛い』。
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第16話 キツネのお姉さんへの挑戦状

「勝負だっ!!!」


 口をついて出た言葉は、自分でも予想外の言葉だった。少年漫画でもあるまいし、そんな簡単に相手が乗ってくることなんてあるはずがない。


「勝負か、いいだろう。しかし何のだい? まさか料理、とは言わないだろう。私は君たちの料理の腕を見込んで今回の提案をした。他の事ならいざしらず、さすがにこの料理相手に勝負を受けるほどバカではないよ」


 以外にもキツネのお姉さんはオレの挑戦を素直に受けた。しかし、怒りの微笑のままにも関わらず、冷静な判断力も失っていない。

 怒りで我を失うどころか、より冷静になるタイプとか、キツネ獣人のイメージそのままだが、ものすごく厄介なので勘弁願いたい。

 これちょっとでも受け答え間違えたら、その場で護衛のイヌ獣人のお姉さんたちが襲いかかって来るやつだろ。

 一瞬も気が抜けない緊張感の中、オレは冷や汗をかきながら少しでも勝率のある勝負を考える。と言っても、オレにできる事なんて決まっているのだから答えはすぐに出た。


「……そんな事は言わないさ、あんたはタトラさんの可愛さを見抜けなかった、なら勝負はあんたとの可愛さ対決にきまってるじゃないか」

「ふふ、ふははっ!!! たしかに、君の言うとおりだ。可愛さ対決、受けようじゃないか。勝負方法はどうする? 君たちも可愛いようだが人としては、だ。まさか、人の身で獣人の可愛さに対抗できると思っているのか?」


 キツネのお姉さんは見た目通り自分の可愛さに絶対の自信を持っているらしい、たしかにキツネは可愛い。しかし、それ以上に可愛い存在をオレは知っているっ!!!


「何を言ってるんだ。あんたはタトラさんを可愛くないと言ったんだぜ、一週間だっ! 一週間でタトラさんをあんたの可愛さを超える、いや、見たこともないほど可愛い姿にしてみせるっ!!! もしあんたがタトラさんの可愛さを認めたら素直に非礼を謝って、オレたちの買い取りの話は無しにしてもらうっ!!!!」


 オレが叫びとともに勢いよく指差すと、キツネのお姉さんは気炎上げ高らかに笑った。オレの言葉がよほどツボにハマったのか、殺気も霧散させ笑い続けているんだけれど、それが逆に怖い。これはやってしまったか?


「くふっ、くははははっっっっっ! その可愛さの欠片もない小娘をっ!!! 面白い、面白いな君はっ!!!! わかった。勝負はそれで構わない。だが、タダというわけにはいかないぞ。君たちが負けたら私の奴隷になってもらおう。小娘にも相応の対価を支払ってもらう」

「好きにすればいいさ、オレたちが勝つんだからな」

「いいだろう。一週間後、楽しみにしているよ。ははははっ!!!!!」


 キツネのお姉さんは踵を返し、それに合わせ来た時と同じように人混みが割れて姿がゆっくりと消えていく。


◆◆◆


 キツネのお姉さんと護衛が去った後。さらにいくらかの時を要して、ようやく硬直から抜け出したタトラさんが不安そうにオレの肩を掴んだ。まだ先程の恐怖が残っているのか、肩に当たる肉球には熱がなく、じっとりと汗が滲んでいて震えも止まっていない。


「あの、イオリさん、さっきの話大丈夫なんですか?」

「…………どうしよう?」


 ギギギっと首だけタトラさんの方を向いてオレは質問に質問を返す。

 つい頭に血がのぼってとんでもない啖呵を切ってしまった。


「えぇぇぇっっっっっっ!!!!! じゃ、じゃあさっきの話、何も考えてなかったんですか!? どうするんですか!!! このままじゃイオリさんたちが本当に奴隷に……あたしも負けたらどうなっちゃうんですか!? ……うえぇぇぇっっっっっ!!!!!」


 タトラさんがその場にへたり込んで大泣きしてしまう。あぁぁっっっ!!! どうする、どうしたら良いんだ!?


「大変そうじゃのー」


 緊迫するオレたちをよそに、トレットは緊張感のかけらもなく、作り置きしていたクレープ生地に勝手にフルーツを山盛りに乗せて頬張っていた。こいつ、全然話に入ってこないと思ったら何してるんだ。


「いや、お前も考えろよ!!! このままだとオレたちあのキツネのお姉さんの奴隷になるんだぞっ!!! タトラさんだって……」

「そうじゃな……まー、死ぬわけではなしなんとかなるじゃろ。かっかっかっ!!!」


 トレットは能天気に笑った。どうしよう。喧嘩を売ったオレが悪いんだけど、無性にこののじゃロリの頭ピコりたい。

 腰のピコハンに手が伸びる衝動を抑えながら、オレはタトラさんに頭を下げる。

 こうなったら腹をくくって勝負をするしか無い。勝算だってまったく無しに挑んだわけじゃない。

 タトラさんが本気で可愛くなって、オレたちがサポートすればキツネのお姉さん、いや魔王にだって勝てるぐらい可愛くなれる、オレはそう思っている。

 あとは、タトラさんが自分の可愛さを受け入れて、一緒に戦ってくれるだけで勝利はオレたちのものとなる、はずだ。


「タトラさん、勝手に勝負を吹っかけてすみません。でも、タトラさんの可愛さを馬鹿にされるのはオレには耐えられなかった。身勝手なお願いなのは百も承知ですが、どうかオレに全てを預けてくれませんか?」


次回、


キツネ獣人との可愛さ対決。

無謀とも思える戦いを挑んだ主人公は勝利することができるのか。


伊織たちの戦いが始まる――

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