表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
獣人の奴隷と『可愛い』。
39/246

第14話 獣人の国の色々

 タトラさんによると、次に行く街の名前はアズマと言うらしい。

 最初に訪れたエトラの街とよく似た規模の、首都から離れたごくありふれた特徴のない獣人の街だという。

 今いるパーズー王国は、獣人たちの国の中では中堅で、版図ではサファラ王国が大陸で一番大きく、海を隔てたアクリム王国はサファラと同等の規模の王国ではあるが、海洋国家で国土の多くが島で出来ているらしい。

 陸のサファラ、海のアクリムが2大王国で、中小の国があると。情勢が不安定ということはなく、獣人は様々な種族がいるため、それぞれに住みやすい気候、風土があり自然と棲み分けがされているとのこと。

 パーズー王国は比較的種族がごちゃまぜになった国で、タトラさんのようなネコ系の獣人から、イヌ、キツネ、クマ、ウサギ、鳥……港町に行けばイルカ、セイウチ、トドなどの海獣の獣人もいるらしい。鳥系の獣人は想定していたが、まさか海獣の獣人までいるとは、獣人の世界は奥が深い。

 ちなみに、トレリスの街があったガーデニア王国は、獣人の王国と比べると、小国に分類されるらしい。やはり人間は可愛さが足りないのがネックなのだろうか。

 そんな事をオレたちは大空の下、夕食を食べながら話していた。

 食事当番は自然とオレになっていた。皆、美味しいほうが良いからしょうがない。オレだって飯は旨いほうが良い。

 移動にそれほど時間がかからないため、今日は新鮮な野菜や肉をたっぷり使ったスープ。水と火は魔法で用意できるので時間も手間もかからず、具材を簡単な飾り切りにして可愛さをアップする事もできてしまう。

 仕上げに新しく憶えた美味しくなる呪文も併用しているので、美味しさは以前のスープと比べて1.5、いや2倍になっているだろう。


「おいしー、イオリさんは本当に料理上手ですねー」 


 タトラさんが器に残ったスープを最後の一滴まで飲み干してほぅ、とため息をつく。あ、おかわりですか。はいはい。


「うむ、イオリの料理は最高なのじゃ!」


 トレットもいい笑顔で器を差し出してくる。こうなる事は想定済みなので、スープは多めに作ってある。オレに抜かりはない。


「きゅぴー」


 マオもね。スプーンを持てないはずなのにどうやって食べているのか気になっていたが、前足を使って器を傾け、器用に食べている。

 オレもスープのおかわりを……と思ったら、後ろから誰かに甘噛された。


「ブルルッ!!」


 ファべもか!! まさか干し草も美味しくなる呪文が効くとは思わなかったが、呪文を唱えると食いつきが格段に良いので効いてるんだろうな。

 おかわりなので若干少なめの干し草を用意して、呪文をかけてやる。毎回唱えている内にだんだん恥が無くなってきた。顔は笑顔だが、心は無だ。本職のメイドカフェの人たちもこんな気分なんだろうか。

 明日には次の街に付く予定だし、皆しっかり食べて英気を養わないとな。


◆◆◆


「人間とエルフの奴隷? ふん、街で厄介事など起こすなよ!」


 アズマの街の門番は、オレたちを一瞥してそう毒づいた。あ、なんかデジャブ。


「……あの、もしかして人間って獣人に嫌われてます?」

「気づいちゃいましたか?」

「ええ、まあ。あんなにあからさまだと気づかないほうが難しいですね」

「ごめんなさい。……獣人全員がそうじゃないんですけど、自分たち獣人が一番可愛いって思っている人たちは多くて」


 タトラさんは言葉を濁すが、獣人の共通認識として自分たちが一番可愛い種族、って考えは一般的って事なんだろう。

 それをおかしな事として謝っているタトラさんはそうとうな変わり者に分類されるんだろうな。

 エトラの街の市場ではそれほど差別的な扱いを受けなかったから、門番の兵士みたいなのはさすがにどこにでも居るってわけじゃないだろうけれど、珍しくもない程度か?


「タトラさんが謝ることじゃないですよ。別に気にしてるわけじゃないんで」

「でも……」

「こやつの言うとおりなのじゃ。気にするでない。可愛さとは己の中にあるもの、曇った眼で可愛さを正しく見れなくなった者の言葉なぞ、なにも心に響かぬものじゃ」


 トレットが美味しいところをさらっていった。――正確に言うのなら、オレは別にトレットほど高尚な考えがあるわけでなく、ただ単純に種族どころか人種や地域、地位の違いで虐げられてきた世界に居たので、そういった扱いに慣れているだけなのだが。底辺社畜だった時を思えばどうということはない。


「ふたりとも、強いんですね……」


 そう言ってタトラさんは肩を落としてしまう。気落ちする原因はオレたちではなく、タトラさん自身の問題に関してなのだろう。

 ちょっと強引ではあったが、リボンを付けて少しは可愛さを受け入れてもらえたと思っていたが、うーん、一朝一夕で解決する問題でもないか。


「タトラさん、早く宿を見つけないともう日が暮れちゃいますよ!」

「そうですね。」


 落ち込むタトラさんを急かしてみたものの、足取りは重くなんとも頼りない。タトラさんの事は気になるが仕方ない、気持ちを切り替えて明日に備えるとしよう。また、屋台で延々とクレープ作りに励むことになるんだろうから。


次回、


新たな街に着いた主人公。

意気揚々と商売をしようとした彼らの前にトラブルが舞い込んでくる。


伊織はどう立ち向かうのか――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ