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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
獣人の奴隷と『可愛い』。
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プロローグ

新章はじまります。


前章からの繰り返しになる部分もありますが、なるべく章単体で楽しめるための構成ですので、ご了承ください。

 ――オレの名前は河井かわい 伊織いおり

 ごく普通のブラック企業で働くサラリーマンだったが、ある時、地球ではない見知らぬ草原に放り出されていた。

 そこは、可愛いければ可愛いほど強くなるプリティアと呼ばれる異世界。

 オレはモンスターに襲われているところを、可愛くて綺麗なお姉さん……に見えるが実際は子持ちのおっさんであるゼフィーさんに助けられ、失恋の苦味とともにプリティアの過酷さを学んだ。

 ゼフィーさんのお世話になりながら、オレは自分の身を守るため不本意ながら可愛いものを身に着け美少女となり、ブラックとは無縁の第二の人生をこの世界で実現させようと決意をする。

 途中、不幸な事故によって魔王が復活し、街が壊滅の危機に瀕したりもしたが、大きな犠牲を払いつつ、魔王を討伐し、ようやく悠々自適のまったり生活を手に入れ――


「おーい、イオリー何しとるんじゃー。朝飯の時間じゃぞー、早く支度をするのじゃー」


 次の一文を書きかけたところで、背中から幼女の愛らしい声が部屋に響いた。

 視線を向けると、のじゃロリエルフが自らの存在を主張するようにぴょんぴょんと飛び跳ねている。真っ白な白い肌に、抜けるような青い空を思わせる髪と澄んだ瞳。

 一見すれば天使のような幼女だが、見た目に騙されてはいけない。本性はただの食い意地の張ったイケメンエルフジジィである。

 仕方なく、オレはペンを置いて変態のじゃロリエルフジジィもとい、トレットの方を向き、アイアンクローをかます。


「ええい、今書き終わるからちょっとぐらい待てないのかよ、って言うか、いい加減自分で飯ぐらい作れるようになれっ!!!」

「なにを言うんじゃ。ワシは可愛くて偉いエンシェントエルフじゃぞ? なぜそのような事をせねばならんの……痛゛っ! 痛だだだっ!! わかった!!! おとなしく待つから手を離すのじゃっ! 頭が割れてふたつになってしまうのじゃぁっ!!!」


 トレットを物理的に説得していると、部屋の外から大声が聞こえてきた。

 声からするとゼフィーさんのようだが、一体何だというんだ? 誰も彼も、朝っぱらから騒がしすぎる。


「イオリ! イオリはいるかっ!!」

「父上、どうしたんです?」


 部屋を出て居間へ行くと、慌てた様子のゼフィーさんと、娘のサリィがいた。

 ゼフィーさんはおっさんではなく、騎士の鎧を身に着けた可愛くて綺麗なお姉さん姿だ。サリィはこの家にいる人間で唯一、本物の可愛い女の子。今日もリボンの髪飾りがよく似合っている。

 たしか、ゼフィーさん今日は早番で夜明け前に出ていたはずだが、何かあったのだろうか。

 

「サリィ、すまんが急ぎの用件だ。イオリはどこにいる?」

「どうしたんです、ゼフィーさん?」


 オレが声をかけると、ゼフィーさんはカツカツと大股で歩み寄ってきて、ガッと肩を掴んでくる。いくら本当はおっさんであるとは言え、綺麗なお姉さんの姿で近寄られるのは未だに慣れず、ちょっとドキドキしてしまうのは仕方のないことだろう。


「そこに居たか! よく聞け、先程王都から便りが届いてな」

「はあ、」

「先日、魔王討伐について領主であるブラン様から王都へ報告を上げたのは知っているな」

「ええ、まあ」


 どうも、嫌な予感のする話し方だ。こういう時の予感はなぜかよく当たるのだろうか。


「それで…………魔王を打倒した勇者たちをひと目見たいと王が申されているらしい」

「ふんふん……え? それって……マズくないですか?」

「私の立場でこのような事を言うのもなんだが、かなりまずい」

「きゅぴー」

 

 オレたちの会話に、チョコレート色の可愛いミニサイズドラゴンが割って入ってきた。今はこんな姿だが、このドラゴンが今話題の真っ直中にある魔王である。

 もし王都なんかに行って、万が一にでもコレの存在が知られると、絶対にめんどくさいことになるだろう。


「辞退するのは……」

「王命だぞ。下手に断れば反意ありとみなされてトレリスの街が危ない」

「うわー……でもこいつ、オレから離れないんですよね」

「わかっている。だからこうして正式な通達が来る前に戻ってきてやったのだ」

「きゅぴー!」


 頭を突き合わせて悩んでいると、傍で見ていたトレットが事も無げに言い放つ。


「何を悩んどるんじゃ。そんなの簡単ではないか。ほとぼりが冷めるまで人の手が出せんところへ隠れておれば良い」

「隠れるって、そんな簡単に隠れられるなら苦労しないだろ。そもそも、どこにだよ?」


 確かにそんな場所があれば良いが、そうそうあるわけない。

 だが、トレットは不敵に笑い、そんな都合のいい場所を告げた。


「ふふふっ、それはな、エルフの里じゃよ!!」

「うむ、エルフの里であれば、うかつに手出しはできないでしょうな。ですが、エルフの里は里の長が認めたごく僅かな人間しか出入りが許されてな……あー……」


 ゼフィーさんが悩ましげに考え込んでいたが、途中で何かに気づいたように視線を泳がせた。普段のトレットを知っていると、そんな反応になるのも無理はない。


「ワシを誰だと思っとるんじゃ。ただのエルフの長なんぞが口出しできる相手ではないわ」

「トレット、良いのか?」


 一応、オレは確認をしてみる。


「お主の作る飯が食べられなくなるとワシが困るからの。代わりにエルフの里でパフェを作るのじゃ!! あそこは街では取れぬ果実もたくさんあるから、きっと美味しいパフェができるのじゃ!!!」


 そういう事になった。

次回


突然エルフの里へ向かうこととなった主人公。

果たして主人公一行は無事エルフの里へ着けるのか。


伊織を待ち受ける者とは――

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