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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
はじめての『可愛い』。
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第20話 決戦2

 変身の呪文を唱えると、頭のリボンからいくつもの光の帯が伸びて全身を包み込む。

 そして、足にブーツ、手にグローブ、腰にスカート……と、光の帯は次々と白とピンクでフリフリの可愛い衣装に変化して、最後に髪を包んでいた帯がイヤリングとハート飾りのついたリボンに変化した。


「魔法少女、シャイニーキュアー見参!! 皆をいじめる悪い子はー、シャイニーキュアーがゆるさない!!!」


 決めポーズを取ると、光の粒子が弾け、虹色に光りながら淡く瞬いて消えていく。

 鏡がないので自分の姿は見えないが、それでもはっきりと確信できる。今、オレはニチアサで大人気だった伝説のアニメ、魔法少女シャイニーキュアーに変身していた。


「へー、こうなるんだ。質感は想像してた通りのものだけど、何で出来てるんだろ? っていうか、わかってたけどコスプレ感半端ない……」

「な、なんじゃそれはぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」


 想像以上の衣装の出来に、変身後の身体をくるくると眺めていると、何故かトレットが絶叫した。


「何なんじゃその可愛いポーズは!!! いやっ、それよりも人間が道具も使わずに変身じゃと!? お主、一体何をしたんじゃっ!!!!!」

「何って、お前が教えたんじゃないか。可愛くなるのに可愛いものを身に着ける必要ないって。心身ともに可愛くなればどんな可愛い姿にもなれるんだろ?」


 そう、トレットから幼女化の秘密を聞いた時、オレの中では魔法少女に変身、という単語がチラついていた。道具も何も使わず、最強に可愛い存在になることができる画期的な一手。

 しかし、オレはその考えをすぐに捨てていた。さすがにこの歳で魔法少女とかマジキツイ!!!! シャイニーキュアーは大好きだし、当時は変身ポーズから必殺技まで何度も練習し、今でもそらで再現できるほどだ。

 それでも、他に誰もシャイニーキュアーの存在を知らない世界であっても、心はいい年したおっさんが美少女の格好で魔法少女の真似をするなんて恥ずかしすぎるっ!!!!

 一度は捨てたシャイニーキュアーへの変身を、まさかこんな形でする事になるとは、人生何があるかわからないものだ。

 冷静になってしまうと羞恥心で意味もなく転げ回ることになるので、今は自分がおっさんである事実から目を反らし、シャイニーキュアーになれたことを素直に喜ぶよう、全力を注いでいる。


「それにしても限度というものがあるわ!!! どんだけ可愛くなっとるんじゃ!!!!!」

「いや、まだ終わってないんだけ……」


 なおも食って掛かるトレットをなだめていると、頭上から高笑いが聞こえて来る。


「ふふふっ、ふはははははっっっ!!!!!! まさか脆弱な人間がエンシェントエルフを超える可愛さを持つとは。面白い!!!! ならば、我も真の姿で相手をしてやろうっ!!!!」


 魔王の巨大な影が手を天に掲げると、闇の粒子が集まり、影が収束していく。影はどんどんと小さくなり、その色が深くなるとともに新たな人の形を成していく。手足は身近く、寸胴でややモチッとした身体。

 闇が晴れ、中から現れたのは――悪魔の尻尾と羽、それにあたまに角の生えた褐色小悪魔幼女だった。


「ふふふっ!!! わが可愛さに恐れおののくがいい!!!」

「そんな、声まで可愛くなるなんて!!」


 変身、というか真の姿になった魔王は巨大な影であった時の威圧感はなくなり、声も舌っ足らずな幼女の愛らしいものとなり、背丈もトレットとほぼ同じ程度になっている。

 成長の兆しもないぺったんこの前で腕を組んでふんぞり返っている姿は、威厳のかけらもなかった。

 かなり一大決心をしてシャイニーキュアーとなったのだが、コレを相手に戦うと思うと、やる気と言うか、使命感と言うか、オレの中の原動力がどんどん削られていくのがわかる。


「くっ、さすが魔王じゃ。なんという可愛さ。これではイオリがいくら可愛くなったと言っても、どれだけ時間稼ぎができるかわからん」

「トレット殿、しかしイオリがこれだけ可愛くなったのであれば、望みはまだあります。いくら魔王が可愛いと言っても、トレット殿とイオリが協力すれば、援軍の到着を望むことも出来ましょう。私も死力を尽くします」

「うむ、仕方あるまい。イオリ、ゼフィー、絶対に魔王を止めてみせるぞ!!!」


 幼女を前に、幼女とおねーさんが真剣に時間稼ぎの相談をしていのを眺めていると、深刻なのはわかっているのだが、やはりどうにも気が抜けてしまう。影の状態の魔王相手なら、まだ大分危機感を持てたんだが。


「愚か者共めがっ! これでも喰らえ!!!!」

「っ!! 危ない!!! ぐぅっっ!!!!」


 魔王が地面に転がっていた小石を拾い、投げつけてくる。モーションは可愛らしいのに、石の投擲スピードは尋常じゃない。

 とっさに前に出たゼフィーさんが盾となり小石を受け止めたが、衝撃を抑えきれずに吹き飛んでしまう。


「ゼフィー!!! 大丈夫か!!!!」

「なんのっ、これしき……」


 ゼフィーさんはよろけながら立ち上がるが、小石をぶつけられた鎧がへこみ、本人もかなりのダメージを負ってしまったようで、口から血が滲んでいた。

 ただ小石を投げつけただけでこれって、どんな力だよ!!! 見た目は可愛い褐色幼女だが、トレットが言うようにこいつはとんでもない敵かもしれない。

 オレは慌ててゼフィーさんに駆け寄り、患部に手のひらを当てる。


「ゼフィーさん、ちょっと我慢しててくださいね」

「イオリ、何をするつもりだ?」

「痛いの痛いのー飛んでいけー!!!」

「!? これは……身体が軽く?」


 患部をさすり、ぱっと手を払うと、ゼフィーさんの身体の震えが止まり、苦痛に歪んでいた表情も和らいだ。


「ほぅ、」

「まさか、上級回復魔法じゃと!?」


 オレの呪文を見て、魔王とトレットが驚いている。


「痛み止めのおまじないって回復魔法になるのか……」

「何言っておるんじゃ! 上級回復魔法なら痛み止めどころか骨折すら直ぐに治せるわ!!!」


 可愛くやれば気休め程度に痛みが軽減するかと思ったけれど、この世界ではそんなレベルではすまないらしい。


「回復魔法の使い手とは、貴様、何者だ? 勇者、いや聖者か? しかし、人間の聖者だとしてもそれほどの力を持つ者などおるまい」

「さあね、オレは普通の人間だよ。聖者でも、勇者でもなんでもない。ただの人間だ」

「そうか。……イオリとか言ったな。貴様、我が部下とならぬか? 我が部下となるのであれば、お前とお前の大切な者の命は助けてやろう」

「なっ、魔王貴様何を言っておるのじゃ!!!!」

「ああ、そういうの間に合ってるんで」


 トレットが激高するが、逆にオレはあっさり断った。トレットの反応を見ていれば、魔王がどんなやつかは大体想像がつく。

 こういった奴とした約束が守れらることなんて一度だって無い。そんなの、あっちの世界で嫌というほど味わってきた。


「愚かな奴め、ならば貴様たち全員、腸を引きずり出してスライムの餌にしてくれる!!!」


 魔王は翼を広げ、両手に石を握りしめると、振りかぶった。しかし、オレの奥の手はまだ終わっていない!! 

次回


ついにその本性を表した褐色ロリ悪魔。

魔法少女シャイニーキュアーとなった主人公のさらなる奥の手とは一体何なのか。


伊織の心が可愛さで染まる――

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