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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
人魔争乱と『かわいい』。
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第23話 トレットちゃんの里帰り

「そろそろ里なのじゃ」


 のんびりと巨大シマエナガのぴーちゃんの背に乗り空の旅を満喫していたオレたちは、トレットのそ言葉で降下の準備に取り掛かる。

 とは言っても、タトラさんが手綱を握って、オレが荷馬車移動の衝撃に備えて座り直すぐらいのものだが。

 普段は近隣住民を脅かさないため、集落から少し離れたところに降りるのだけれど、エルフの里はトレットとぴーちゃんのふるさとと言うことで、そのまま降りてしまって大丈夫らしい。

 ぴーちゃんの羽毛で遮られ外の風景は見えないが、両足で地面を捉えた軽い衝撃でエルフの里へ到着したことを理解した。

 召還時間の切れたぴーちゃんはそのまま魔法陣の中へ消えて、すぐとなりに再び現れた。

 召喚獣が帰る場所は、だいたい召喚された時に居た場所の近くになる。トレットが呼び出した時、ぴーちゃんはちょうどここに居たらしい。


「トレット様、イオリ様、おかえりなさい」


 ぴーちゃんから降りたオレたちを、トレットとよく似た背丈のエルフの幼女――里の長であるクーラさんが出迎えてくれる。

 はじめてあった時は、里の始祖でありながらふらっと現れては里の食料を食い尽くすトレットに対して尊敬と警戒の入り混じった複雑な視線を向けていたものだが、今回は表面上とても穏やかだ。


「出迎えご苦労なのじゃ、クーラ」

「クーラさん、お久しぶりです。それにしても良くわかりましたね」

「最近は連日ぴーちゃんが召喚されていましたし、ぴーちゃんから今日里に到着するだろうと教えて貰っていましたから」


 クーラさんの言葉に納得した。突然現れれば混乱するが、事前に到着の時期がわかっていれば対処の方法はいくらでもあるもんな。

 というか、クーラさんぴーちゃんと意思の疎通が出来るのか。てっきりトレットだけの特殊能力か何かだと思っていた。


「えっ、クーラさん、ぴーちゃんの言葉わかるんですか!?」 

「言葉というほどではないですけど、なんとなくなら少しだけですね。ところで、そちらのお方は……」


 クーラさんに視線で促され、タトラさんをまだ紹介していなかったことを思い出す。

 

「こっちはタトラさん、オレたちの旅の仲間です。荷馬車を引いているのが、タトラさんの愛馬のファべ。タトラさん、こっちはエルフの里の長でクーラさん」

「タトラ=パンタと言います」

「里の長、クーラ=ドーツです。タトラ様、ようこそエルフの里へ」


 ふたりはにこやかに挨拶を交わし、ファべも自己紹介をするようにいなないた。

 一通り挨拶が終わったところで、トレットがおもむろにオレの袖を引っ張ってくる。


「イオリ、せっかく里に来たのじゃ。久しぶりに皆にお主の料理を食べさせるのじゃ」

「お前、そんな事言って、どうせ自分が食べたいだけじゃ……」


 そこまで言って、オレは珍しくトレットの目が食欲に支配されておらず、純粋な澄んだ綺麗な瞳であることに気付いた。


「ダメなのじゃ?」


 不安そうに袖を引っ張るトレットは、なんともいえない保護欲をそそる表情でオレにすがってくる。

 普段は傍若無人で高飛車に命令するくせに、こんな時だけしおらしくして、何というあざとさだ。

 うーん、しかし最近はトレットとぴーちゃんには移動で苦労させてるし、たまにはねぎらってやらないといけないから、少しぐらいはワガママも聞いてやるか。


「……わかった。その代わりお前も準備を手伝うんだぞ。それで何を食べさせたいんだ?」

「お子様ランチなのじゃ!!」


 トレットは元気よく予想通りの料理を注文してきた。

 オレとトレットのやり取りを聞いていたクーラさんが、気を使ってオレにこっそりと耳打ちをしてくる。


「イオリ様、よろしいのですか? 旅でお疲れなら無理をしなくても……」

「大丈夫ですよ。移動はほとんどこいつに任せてたんで。ちょっと材料が心もとないので、材料だけ分けてもらえますか?」

「ええ、もちろん!」


 そんなわけで、オレたちはエルフの里に到着してすぐではあるが、お子様ランチづくりに取り掛かることとなった。

 エルフの里の住人すべてとなると米は全然足りないので、主食はパンと麺で対応する。

 肉も無いので里で採れた豆と木の実を潰してハンバーグもどきを作り、卵でオムレツとプリン、麺には少なくなってきたなけなしのトマトソースを合わせてナポリタンを作った。

 トレットも珍しく魔法による火力役だけでなく、パンを捏ねて整形したり、宣言通り積極的に手伝っている。

 クーラさんはそんなトレットの姿に驚愕していたが、様子を見に来た里の子どもたちなんかはトレットのように手伝いをしたいとわらわら寄ってきた。

 自然と子供以外のエルフも料理の手伝いに加わり、エルフの里を挙げてのお祭りのような雰囲気になってしまった。

 おかげで予想よりずっと早くお子様ランチは完成し、皆で食卓を囲むことになる。


「皆のもの、これはお子様ランチと言う、イオリの作った料理じゃ。ワシが今まで食べてきたイオリの料理の中でも一番可愛く、美味しい料理なのじゃ。皆存分にお子様ランチを楽しむのじゃー!!」


 トレットの挨拶に合わせてエルフの里の人たちは思い思いの料理に手を付け、その味に興奮していた。

 エルフは長命だし、殆どのエルフがオレより年上なんだろうけれど、皆幼女の姿になっているので、絵面が託児施設の給食タイムみたいになっている。

 きゃいきゃいと楽しげにお子様ランチを食べるエルフたちを見て、トレットは満足げに微笑みながら自分もものすごい勢いでお子様ランチを口の中に詰め込んでいた。

次回

エルフの里で英気を養うのじゃロリエルフ。

主人公たちはつかの間の休息で心と体を休める


伊織がエルフの里で発見したものとは――

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