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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
人魔争乱と『かわいい』。
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第17話 王城での謁見


 ブラン様の屋敷は思っていたよりもずっと立派だった。

 トレリスの街の館に比べ規模こそ小さいものの、作りはこちらのほうが格段に豪華でしっかりしている。

 なんとなくトレリスの館のようなしょぼ……素朴な建物を想像していただけにちょっと驚いた。

 ブラン様は屋敷を見上げるオレを見て笑う。


「本当はこんな屋敷に金を使うぐらいなら、トレリスの開発に資金を回したいところなんですけれど、領主が王都で宿ぐらしと言うわけにもいきませんからね」


 貴族のメンツというやつだろうか。領主というのもなかなか面倒なようだ。

 見栄のために金を使うのが大好きって人間なら問題ないだろうが、そうすると貧乏なトレリスがさらに貧乏になりそうなので、ブラン様が領主で居てくれてよかった。

 トレリスの住人は裕福ではないが飢えても居ないのはブラン様の努力のおかげなのだろう。


「住み込みの使用人はいませんが、掃除だけは頼んであるので部屋はきれいなはずです。どの部屋でも自由に使ってもらって構いません」


 お言葉に甘え、屋敷の一室を借りてオレたちは腰を落ち着けた。

 部屋はたくさんあるのだから一所に集まる必要はないのだけれど、なんとなくいつもの癖で自然とそうなってしまった。

 さすがにブラン様だけは自室で過ごしているけれど。

 

「王都と言う割に活気のない場所じゃったの」

「そうですね、流通は整っているし、街並みもきれいなのに」


 王都のおかしな空気にはトレットとタトラさんも思うところがあったのだろう。

 くつろぎながら出てくる話題はそれだった。


「うーん、原因はすぐにわかんニャいし、まずは王様に謁見してみるしかないかニャ」


 ブラン様に聞いてもわからなかったことが、初めて王都に来たオレたちにわかるはずもない。


「そうじゃな、……ならば腹ごしらえなのじゃ! もうお腹ペコペコなのじゃー」

「お前、ぴーちゃんに乗ってる間ずっとに食べてただろ」

「そんなものとっくに消化したのじゃ。だからはやく作るのじゃー!!」

「わかった、わかったから落ち着け! ブラン様も呼ばないといけないから」

 

 トレットにねだられ、オレは料理を作るための準備を慌ただしく進る事となった。


◆◆◆


 翌日、オレたちは使者に案内され王城へとやってきた。

 ブラン様によると、これでもありえないほど早い対応だと言う。

 まあ急ぎとは言え、事前通達無しでやってきたらそうなるよな。

 毎回取次をお願いしてすぐ会ってくれるブラン様が特別なのだ。

 ちなみに、移動にはいつもの通りタトラさんの荷馬車を使っている。

 王城に向かうのに普通の荷馬車で良いのだろうかと思ったのだけれど、ブラン様は自信満々に「こちらの馬車で向かいます」とか言っちゃうし、使者の人も「これは素晴らしい可愛さ……さすが東部辺境伯」とか嫌味でなく真顔で言っちゃうし、辞退できる雰囲気ではなかった。

 オレの心配をよそに、荷馬車での入城はあっけないほど簡単にすんでしまい、しかもお城の兵士たちまで荷馬車を見ては憧れの視線を送ってくるので、恥ずかしいことではないらしい。

 なんだろう。可愛く改造した荷馬車って、高級オープンカーみたいな扱いなのか?

 王城へと入ったオレたちは、そのまま謁見の間へと通される。

 ブラン様の謁見の間に置かれた椅子とは比べ物にならないほど豪華な玉座には、当たり前というか当然というか、金髪碧眼の王冠を頂いた幼女がちょこと座っている。

 ブラン様が幼女なのだから、王様も幼女であって当然だろう。この世界では偉い人は大体皆幼女になるのだ。

 玉座の隣には少しだけ装飾が控えめで大きさも一回り小さい椅子が並び、十代後半に見える可愛らしい女性が座っている。

 並びからすると、王妃様なのかな? 王様と同じ金髪碧眼で、出会う場所が違えば姉妹と間違ったかもしれない。

 白いドレスに宝石をふんだんに散りばめたティアラを身に着けていながら、服装に埋没せず自身の魅力をより高めている辺り、高貴な身分の人という感じがする。

 ブラン様は玉座の前まで来ると、跪き礼をとった。

 お付きのオレたちもそれに倣い、一歩引いたところで同じく礼をとる。

 なぜか毎回こういった場面になるとトレットだけ頑なに抵抗するのだが、余計なトラブルを避けるため、無理やり頭を押さえつけておく。

 オレたちが頭を下げ待っていると、王様の脇に控える大臣っぽい幼女が口を開いた。


「ブラン辺境伯、前日現れた謎の影について至急陛下に申し伝えることがあるとのことだが……」

「はっ、恐れながら申し上げます……」


 ブラン様はオレが伝えた情報を簡潔にまとめ、報告する。

 魔王の復活と封印、それに魔王が封印されたことを知らずに侵攻してくるであろう魔族の脅威についてだ。

 ブラン様が話終えると、幼女大臣はゆっくりと口を開いた。


「ふむ、するとどのような方法でかはわからぬが、魔王復活の気配を察知した魔族が侵攻してくると……。しかし魔王はすでに封印されており、当面の脅威は魔族の侵攻にあると言うことだな。だが、その話、本当なのか? 辺境伯は以前魔王討伐の報告をよこしたが、あれとて復活した魔王が本物の魔王であったという証拠などどこにもないだろう」


 疑わしげな口調で、大臣幼女はブラン様に問いただす。

 そこでようやくオレは王都のなんとも言えない空気の正体に気付いた。

 ああ、そうか。実際に魔王の姿と退治の様子を知っているトレリスの街の住人と違って、王都の人間はブラン様の報告を嘘……とまでは言わないまでも、まともに取り合っていなかったのか。

 王都の住民の反応も、怪しい影の言った魔王復活を信じていて、いつ魔王が復活するのか、もしかしたらもう復活しているのではと怯えていたのだ。

 魔王の封印された土地はトレリスにある。なら、真っ先に魔王復活の犠牲になるのは、自分たちガーデニア王国の人間だ。と、そんな感じだろうか。

 ……実際にもう魔王は復活していて、さらに再び封印されているのだから魔王に関しては恐れる心配は無いのだけれど、ブラン様の言葉を信じていないというのならどうしようもない。

次回

国王との謁見を果たした主人公たち。

しかし、彼らは主人公たちの言葉を信じず、疑いの目を向けるばかりであった。


悩む伊織たちの前に、姿を現した人物とは――

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