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かわせか! ~『可愛いが強い』世界転生~  作者: 代々木良口
獣人帝国と『可愛い』。
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第14話 幼女将軍の脅威

「なに、そう驚くこともあるまい。それだけの可愛さなのだ、腕に自信はあるのだろう?」

「いやいやいやいや、おかしい!! なんでそうなるんだよ!!! なんで戦うことが褒美になんのっ!?」


 いくら将軍とは言え、論理を跳躍した言動にオレは口調を取り繕う事も忘れてツッコミを入れる。

 しかし、幼女将軍はオレの言葉を聞いてもイマイチ意味が理解できないらしく、小首をかしげた。 


「人は皆可愛さを求め戦うものだ。ならば、可愛い者同士の闘争こそ己を高める事こそ至高の行いだろう?」

「なにその生きる修羅みたいな考え方! オレは戦いなんてこれっぽっちも望んでないし、可愛さだって別にほどほどあれば良いんだよ! あんたと一緒にしないでくれ!!!」


 完全に対決姿勢になっているオレと将軍の間に割って入り、なだめてくる。

 だが一度火がついたオレの心は止まること無く逆にヒートアップしてしまった。


「おい、イオリ、将軍に向かってその言動はマズい、少し落ち着くんだ」

「落ち着いてって……いくらなんでもおかしいでしょう、将軍だかなんだか知らないですけど、こういうのは一発ガツンと言わないとわからないんですよ!!!」

「まて!! それは本気でマズいから待つんだっ!!!!」


 エンシェントエルフであるトレットに躊躇なくピコハンを繰り出した時の事を思い出したのか、ゼフィーさんが慌ててオレを羽交い締めにして必死で押さえつけてくる。

 幼女将軍は何が面白いのか、オレたちのやり取りを見て笑い始めた。


「わはははっっ!! よい、ゼフィー離してやれ。……なんだかんだと言っていたが、やる気は十分のようだな。結構結構」


 将軍の命令でゼフィーさんはオレを開放するが、いつでも止めることができるよう臨戦態勢で身構えている。

 そんなに警戒しなくても、まだ実力行使に出るつもりはない。それはちゃんと言葉での話し合いが通じなかった時の最終手段なのだ。

 たとえピコハンの柄に手がかかって居ても、それはいつでもピコれるよう予備動作として行っているに過ぎない。

 幼女将軍はピコハンに手をかけるオレに動じること無く正面から見据え、不敵に笑った。


「それで、どうするのだ? お前は武器も持たない俺を襲って己の正当性を主張するの言うのか? 可愛さを笠に着て人を縛ろうとするお前と俺、何が違うというのだ」

「うっ、……」


 将軍に内心を見透かされたようで思わずうめき声を上げてしまう。

 幼女将軍は畳み掛けるようにオレを煽った。


「俺とお前が違うと言うのなら、力をもって証明してみろ! お前が勝ったのなら可愛さだけが全てではないと認めてやろう!!!」

「上等だ、やってやろうじゃないかっ!!!」


 売り言葉に買い言葉、いつの間にかオレは幼女将軍と対決することになってしまった。


 ◆◆◆


 天幕での一件の後、またたく間に幼女将軍とオレの対決の知らせは兵士たちの間に広まり、程なく陣地の開けた場所に会場が作られた。

 木箱などで急造された簡易な円形の決闘場には、オレたちの対決をひと目見ようと物好きな兵士たちが押し寄せ、ゼフィーさんの部下である警備兵の人たちがくまさんバーガーを兵士たちに売り歩いている。

 くそう、人の気も知らないで。絶対後で文句言ってやるからな。


「どうしてこうなった」


 オレのつぶやきに、セコンドに付いたゼフィーさんとタトラさんから冷静なダブルツッコミが入る。


「どうしてもこうしても……」

「今回はイオリさんの自業自得だと思います……」


 頭を冷やしてみればまったくもってそのとおりなのだが、あの場では何故か将軍に勝てばすべて解決すると思ってしまったのだ。

 ここまでお膳立てされた以上、やっぱやめた! とも言えない。


「はぁー、なんで見世物剣闘士みたいなことしてんだろオレ……」


 肩を落とすオレの前に、小さな影が近づいてきた。


「準備は良いようだな」


 顔を上げると、上機嫌の幼女将軍と、その脇に疲れた顔の可愛い騎士風の少女たちが数人。

 立ち位置からすると少女たちは将軍の護衛か何かだろうか。


「ああ、嫌だって言ってもやるんだろ」

「もちろんだ!! イオリ、お前ほどの相手と戦えるとは、運命のめぐり合わせに感謝しなければな」


 将軍は少女のひとりから手渡された白銀に輝く巨大ハンマーを振りかぶり、ニッと歯を見せる。

 褒美ってのは口実で、実はこのおっさん幼女将軍が戦いたかっただけだろ絶対。


「ああくそっ、どうなっても知らないからな!!!」


 オレはマントを脱ぎ捨て、腰のピコピコハンマーを抜いた。


「ほぉ、ハンマーか。奇遇だな」


 将軍は自分の身長と変わらない長さの巨大ハンマーを軽々と振り回し、地面を打つ。轟音とともに土煙が上がり、地面がハンマー型にえぐれた。

 幼女の姿でも振り回せるのだから見た目が豪華なだけでそれほど重くないのだと思っていたら、コレ普通に見た目通りの総金属製ハンマーだ。

 そのあまりの威力に思わずオレは構えを解いて抗議する。


「ちょっ、それで戦うのかよ!? 当たったら死ぬだろ!?」

「なに、心配はいらん。ちゃんと手加減はしてやるさ」


 手加減って、どう頑張ってもハンマーに当たったらただじゃすまないよね!?

 オレが武器に文句をつけようとする暇すら無く、将軍は名乗りを上げオレに襲いかかってきた。


「さて……ガーデニア王国王国軍将軍、テラス公爵家、当主ブルニア=トーリ=テラス、参る!!!」

「ちょっと待てぇぇっっっ!!!!」


 オレの叫び声は、兵士たちの熱狂的な雄叫びに飲み込まれて将軍に届くことはなかった……。

次回

幼女将軍と激突する主人公。

幼女将軍の振るう戦鎚に対し、主人公のピコハンは敵うのか。


伊織の頬を恐怖がかすめる――

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