表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

君が歌うまで泣くのをやめない

 昨日は彼女の地雷を思い切り踏み抜いてしまったらしい。恐ろしくもあったが、彼女の新たな一面を知る事ができ、ますます好きになった。やはり彼女を諦める事なんて絶対に出来ない。

 この溢れる想いをどうやって彼女に伝えようか。言葉だけではどうしても伝えきれないだろう。

 そうだ、想いをメロディに乗せよう。そうすれば、ただの言葉よりも何倍も想いが載るだろう。


「今日は御崎への想いを歌にしてみた」

「……今までの行動も大概ですけど、それ、普通の人にやったら引かれますからね?」

「それはつまり、他の人には告白するなと言う遠回しな告白か!」

「いえ、これ以上被害者が増えないようにと言う他の人への配慮です」


 いつもの素っ気ない受け答えにも大分慣れてきた。むしろ、ある種の照れ隠しなのではないかと思うようにさえなって来た。そんなこちらの考えなどお構い無しに、御崎は言葉を続けた。


「でも先輩って、作曲とかできたんですね。初めて知りました」

「いや、今回初めて作った」

「え?」

「何ならギターだって昨日買ったばかりで弾いたこともなかった」 


 そうなのだ。歌に想いを乗せようと思い立った後、すぐにギターを買いに行き、ネットを参考にしつつ曲を一曲書き上げたのだ。


「うわあ……。というか、そんな状態でよく作曲なんてできましたね」

「『御崎にどうしてもこの思いを伝えたい』と思っていたら、案外なんとかなったぞ。」

「……そうですか」

 

 彼女に顔を背けられてしまった。いかん、少々調子に乗りすぎただろうか。それとも、俺の作って来た曲に不安を感じているのだろうか。


「ただ、ここで弾き語りをしようとギターを持ってきてたんだが、受付に『中で歌われると他の方の迷惑になるので』、と言われて取り上げられてしまった」

「受付の人、超ファインプレーですね」


 御崎は、心の底から助かった、というような顔をしてこちらへ振り向いた。それ程までに俺の作った歌が酷い物だと思っているのだろうか。かなり自信があったつもりなのだが。まあ良い、聴いてもらえば分かるだろう。


「そんなこともあろうかと一応CDにも焼いて来たんだが」

「結構です。要りません。持って帰ってください」

 

 その日、商店街のアーケードで泣きながら弾き語りをする男がいると話題になった。彼の歌は見る者の心を揺さぶり、僅かに用意されていたCDは全て完売したらしい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ